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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第1章: 『無能』の烙印と『天秤』の覚醒

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第4話:決別と逆恨みの序章


「……戻ってこいよ、『蒼き流星』に」


カイトの言葉に、ギルドの酒場が一瞬、水を打ったように静まり返った。

好奇の視線、嘲笑うような視線、同情するような視線が、私たちとカイトに突き刺さる。


「……本気で言ってるのか?」


レオが、呆れたように低い声を出した。


「俺たちを『無能』だ『代わりはいくらでもいる』と罵って追い出したのは、どこの誰だ?」

「そ、それは……」


カイトが狼狽える。


「ルナに唆されたというか……とにかく、間違いだった! だから戻ってこい。お前たちは、俺のパーティーにいるべきなんだ」


カイトの隣で、彼女であるはずのルナが、不満そうに頬を膨らませた。


「ちょっと、カイト! なんでアンタがそいつらに頭下げてんのよ! 魔法使いなら、この私がいれば十分でしょ!」

「うるさい、黙ってろ!」

「なっ……!」


ルナのプライドも、カイトの焦りの前では無意味だった。彼は、本気で私たちを「道具」として買い戻しに来たのだ。私たちがいないと、彼が「勇者」ではいられないことに、ようやく気づいたから。


私は、一歩前に出た。

私の隣で、ガレンさんが「ん?」と私を見下ろし、エララさんが私の肩にそっと手を置いた。二人のその仕草が、私に勇気をくれた。


「カイトさん」

「……なんだ、アリア。お前も戻りたいんだろ? 昔みたいに、俺のそばに――」

「お断りします」


私は、震えそうになる声を必死で抑え、カイトの目をまっすぐに見据えた。


「……は?」

「私は、もう『蒼き流星』のメンバーではありません。私たちは、ガレンさん、エララさんと組んだ、新しいパーティー『アルテミス』です」


内気だった私が、はっきりと反論したことに、カイトは目を見開いて固まった。


「あなたにとって、私やレオは、手柄を差し出すためだけの便利な道具だったのかもしれません。でも、この人たちは違います。ガレンさんは私の支援を『本物だ』と言ってくれた。エララさんは『足手まといではなかった』と、認めてくれた。レオは、ずっと私を信じてくれた」


私は、新しい仲間たちを見回す。ガレンさんは重々しく頷き、エララさんは「フン」と鼻を鳴らしたが、その目は優しかった。


「私たちは、対等な仲間です。あなたの手柄のために戦う駒じゃありません。もう二度と、私たちを誘いに来ないでください」


これが、私の精一杯の決別だった。


「…………きさま」


カイトの顔が、驚愕から屈辱へ、そして憎悪へと変わっていく。


「……アリア。俺に恥をかかせたな?」

「恥?」

「そうだ! 俺は! この街の勇者、カイトだぞ! その俺が、わざわざ頭を下げてやったのに……! それを無下にしやがって!」


カイトが剣の柄に手をかけた。

その瞬間、彼と私の間に、鋼鉄の壁が割り込んだ。


「それ以上はやめておけ、小僧」


ガレンさんが、巨大な塔盾を背負ったまま、カイトの前に立ちはだかった。


「アリアは、俺たちのパーティーの魔法使いだ。……勇者様だか何だか知らんが、俺たちの仲間に手を出すなら、この『鉄壁のガレン』が相手になろう」

「っ……!」


ガレンさんの威圧感に、カイトはたじろぐ。


「勇者であるこの俺に逆らう気か!」

「逆らうも何も、筋が通っていないのはお前の方だろう」


エララさんも冷たく言い放つ。


「自分の都合で追い出しておいて、自分の都合で戻ってこい? おまけに、断られたら逆ギレか。……見苦しいわね」

「ぐ……! お、覚えてろよ!」


ガレンさんとエララさんという、高名なBランク冒険者二人に睨まれ、カイトは捨て台詞を吐いてギルドから逃げ出すしかなかった。

ルナが慌てて彼を追いかけ、サラとミナが、気まずそうに私たちに一度頭を下げてから、後を追っていった。


「……ありがとうございました、ガレンさん、エララさん」

「気にするな。仲間を守るのは当然だ」

「それにしても」


とエララさんが腕を組む。


「あれが『蒼き流星』のリーダーね。噂以上に……子供だったわ」


私たちは、改めてBランクの掲示板に向き直った。


「さて、気を取り直そう。次の依頼だが……これだ。『ミノタウロスの迷宮調査』。B+ランク。奥で未確認の魔力反応があるらしい」

「B+……やりごたえがありそうだな」


とレオが笑う。


「はい! 私、頑張ります!」


私たちが新しい、より困難な依頼に目を輝かせている頃。

ギルドから飛び出したカイトは、路地裏の壁を殴りつけていた。


「クソッ! クソッ! クソッ! あの女、アリアのくせに! 俺に逆らいやがって!」

「そうよ! なによあいつ! ガレンとかエララとか、ベテランに媚び売っちゃって!」


ルナが甲高い声で怒りを煽る。

カイトの頭の中では、アリアにきっぱりと拒絶されたこと、ギルド中の冒険者に笑われたこと、そして何より、自分(勇者)よりアリア(無能)の方が強いパーティーにいるという事実が、ぐちゃぐちゃに混ざり合っていた。


(全部あいつらのせいだ)

(あいつらが俺を裏切ったからだ)

(俺が笑いものになったのは、アリアが俺に恥をかかせたからだ)

理不尽な怒り――「逆恨み」が、カイトの心を支配した。


「許さない……絶対に、許さないぞ、アリア……レオ……!」

「ねえ、カイト」


ルナが、悪魔のように囁いた。


「あいつら、さっきギルドでB+の依頼、受けてなかった? 『ミノタウロスの迷宮』の」

「……!」

「あんな難易度の高い迷宮、あいつらだって万全じゃないはずよ。……もし、迷宮の奥で、私たちが『偶然』あいつらに出会って……『事故』が起きたら?」

「……事故、だと?」

「例えば、あいつらがミノタウロスに襲われてる時に、私たちが『間違って』退路を塞ぐような岩雪崩の魔法を撃っちゃうとか」


ルナは、残酷な笑みを浮かべた。

カイトの目にも、暗い光が宿る。


「……そうか。そうだな。迷宮ダンジョンでの事故は、日常茶飯事だ」


彼らはもはや、「勇者パーティー」ではなかった。

自分たちの凋落を仲間のせいにし、かつての仲間に復讐を企む、ただの犯罪者集団に成り下がろうとしていた。


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