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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第2章: 王都の『試練』と『Sランク』への道

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第39話:瘴気の森と「癒し」の証明


「――『交渉』の、テーブルに着いてやろう」


聖域『エルフの森』の入り口。

私たち四人と外交官レジナルド卿に向けられていた、エルフの守り人たちの、殺意に満ちた魔力の弓が、ゆっくりと下ろされた。


リーダー格のエルフ――その名を「フィン」と呼ぶらしい――は、木の枝の上から、アリアを、冷たい、しかし、もはや敵意ではない、「鑑定」するような目で見下ろしていた。


私が、とっさに杖を捨て、丸腰で「交渉」を願い出たこと。

そして、私たちが『世界樹の魔核』を求める理由が、「パワー」の暴走を「制御コントロール」するためだと、正直に告白したこと。


その二つが、彼らの「動かない」間合いの中で、唯一の「正解」だったようだった。


「……アリア嬢」


私の隣で、外交官のレジナルDナルド卿が、そっと汗を拭った。彼は、王国最高の交渉役でありながら、今、このSランク任務の主導権が、完全に私に移ったことを、理解していた。


「……シルヴィア様は、正しかった。エルフ族との交渉は、『力』の駆け引きではない。『心』の、ありようを問われるものだ」

小娘アリア


エルフのリーダー、フィンが、枝から音もなく私たちの前に降り立った。彼は、私たちが『大森林』で見た『エメラルド・ジャガー』よりも速く、静かだった。


「汝の『言葉』は、受け取った。だが、『交渉』のテーブルに着く条件は、汝が、我らの『問題』を、解決できるかどうかだ」


フィンは、森の、さらに奥深く……王都とは反対側、北の『大障壁』の方角を指さした。


「来い。汝の『力』が、シルヴィア(Sランク)が信じるに足るものか。その目で、見極めてやる」


私たちは、フィンを先頭に、レジナルド卿を中央に、そしてガレンさん、エララさん、レオが、武器に手をかけながらも、決して抜かないという、異様な緊張感の陣形で、聖域の奥深くへと足を踏み入れた。


森は、入り口付近とは、まるで違っていた。

空気は、神聖なほどに澄み渡り、木々の間からは、黄金色の光が差し込んでいる。


「……すごい」


レオが、小声で呟いた。


「王都の魔術師団本部より、魔力が、濃い……」

「これが、聖域……」


だが、一時間ほど歩いた頃。

その神聖な空気は、一変した。


「……!」

「アリア?」


私は、思わず足を止め、口元を押さえた。

空気が、淀んでいる。

『古代ドワーフ鉱山跡』の、あの鉄臭さとも違う。

『アンデッドロード』が放っていた、あの「死」の匂いとも違う。

もっと、根源的な……「拒絶」の匂い。


「……ここから先が、『汚染おせん領域』だ」


フィンが、足を止めた。

目の前の光景に、私たちは、息を呑んだ。

黄金色に輝いていた森が、まるで「病気」のように、黒く、変色していた。


木々は、枯れこそしないものの、その幹は、黒い「あざ」のようなものに覆われ、地面に生い茂る下草は、毒々しい紫色に変色している。

森が、泣いている。


「……これが、『魔王の瘴気しょうき』……」


ガレンさんが、苦々しく呟いた。


「そうだ」


フィンが、黒い痣に覆われた木に触れた。


「『大障壁』の亀裂から、漏れ出している、呪いの力。……シルヴィア(Sランク)が、今、あちら側で、命がけで、その亀裂を塞ごうとしている」

「……」

「だが、漏れ出した『毒』が、我らの森を、こうして、むしばんでいる」


フィンは、私たちに向き直った。


「我らエルフの魔術は、『浄化』の力だ。だが、この『瘴気』は、我らの『浄化』を、嘲笑う」


フィンが、杖を構え、聖なる光を放つ。


浄化ピュリファイ』!


瘴気に覆われた下草に光が当たる。だが、瘴気は、霧散むさんするだけで、消えない。そして、数秒後には、再び、元の毒々しい紫色に戻ってしまう。


「……我らの『浄化』は、『死』を『無』に還す力。だが、この瘴気は、『死』ですらない。『せい』を『ゆがめる』力だ。……我らには、これを『癒す』すべがない」


フィンは、アリアを見た。

その目は、私たちを試す「監査官」の目ではなく、助けを求める「依頼人」の目、だった。


「アリア。シルヴィアは、言った」

「『あのアリアの力は、Sランクの私とも違う、全く異質なものだ』と」

「『あのアリアは、力を『奪い』、『変換』する』と」


フィンは、私に、道を開けた。


「見せろ、人の子。汝の『変換』の力が、この『魔王の呪い』に、通用するのかを」

「……」


私は、ゴクリと唾を飲んだ。

Sランク魔術師シルヴィアさんが『大障壁』で戦っている、国家級の危機。


その「欠片かけら」が、今、私の目の前にあった。

ボルカン師の『試練』より、Sランクの『監査』より、重い。

もし、私が、ここで失敗すれば……。


「……アリア」


レオが、私の肩を叩いた。


「お前なら、できる。あの『アンデッドロード』の『闇』を、『聖なる光』に変えたみたいに」

「……うん」


私は、一歩、前に出た。

瘴気が、まるで生き物のように、私を「拒絶」して、揺らめいた。


(怖い……)

(あの『アンデッドロード』の魔力より、ずっと、冷たい……)

私は、杖を構えた。


(『力の天秤アストラル・バランス』は、使えない。使わない)

(これは、私が『制御』する、『進化魔法』の試練……!)

私は、まず、『アンデッドロード』を浄化した、あの魔法を試した。


「『浄化ピュリファイ』!」

だが、ダメだ。エルフのフィンがやったのと同じ。瘴気は、一瞬だけ、霧散するが、すぐに元に戻ってしまう。


(……レオくんの言う通りだ。あの時、私は、アンデッドロードの『闇』の魔力を、『吸収』して、『聖』の力に『変換』した)

(『瘴気』は、魔力じゃない。『呪い』そのもの)

(でも……『吸収』できる……?)

私は、あの『タンク・ブレイカー』との戦いを思い出した。

ゴーレムの『構造』を解析し、『弱体化』させた、『脆弱化・アナライズ』。

ガレンさんの『生命力』を吸い取った、『黒曜の心臓』。


(『瘴気』の『構造』を、解析して……)

(その『呪い』の『コア』を、私の『力』で……)


「……やってみます」


私は、覚悟を決めた。

私は、右手を、黒く変色した『あざ』のある、巨木に、そっと、触れた。


「「「アリア!?」」」


ガレンさんや、エルフたちまでもが、驚きの声を上げた。

瘴気に、素手で触れるなど、自殺行為だ。


「ぐ……!」


触れた瞬間、指先から、凄まじい『冷気』と『倦怠感』が、私の魔力回路を逆流してきた。


(これが、『魔王の瘴気』……!)

(私の『魔力』を、喰らおうとしてる……!)

(いいえ!)

(喰われる(・・)んじゃなく、喰らう(・・・)の!)


「『脆弱化・ヴァルネラ・エクストリーム』――『吸収ドレイン』!!」


私が、全魔力を込めて『進化魔法』を発動させると、巨木を覆っていた、あの禍々しい黒い『あざ』が、まるで、私の右腕に吸い込まれるかのように、私に向かって、流れ込んできた。


「アリアアアアア!」


レオが、私を助けようと、駆け寄る。


「動くな、小僧!」


エルフのフィンが、レオの前に立ちはだかった。


「……見ろ! あの光を!」

「ぐ……あああああああああっ!!」


私の全身が、瘴気を吸い込んだことで、黒いオーラに包まれる。


(痛い……! 寒い……! 『呪い』が、私を、内側から……!)

(でも、私は、知っている!)

(この『闇』を、『光』に『変換』する、すべを!)

私は、左手を、地面に叩きつけた。


「『変換コンバート』――『聖域転換ホーリー・フィールド』!!!!」


私の右腕から吸い込んだ、莫大な『魔王の瘴気(呪い)』が、私のフィルターを通り抜け、左手から、『聖なる生命力ちから』へと『変換』され、地面に、解き放たれた。


パアアアアアアアアアアアッ!!!!

私を中心として、黄金色の光の波紋が、一気に広がった。

光が通り過ぎた場所から、毒々しい紫色だった下草が、瞬く間に、元の、鮮やかな緑色へと『再生』していく。


黒い『あざ』に覆われていた木々の幹が、その呪いを『浄化』され、生命力を取り戻していく。

森が、『癒されて』いく。


「……」


私は、魔力のほとんどを使い果たし、その場に、倒れ込んだ。


「……はぁ……はぁ……」

「……アリア!」


ガレンさんたちが、私に駆け寄る。

だが、それよりも早く、エルフのリーダー、フィンが、私の前に、ひざまずいていた。

彼は、瘴気が消え、新芽さえも生え始めた、その地面を、震える手で、すくい上げた。


「……消えた」

「瘴気が……『無』に還った、どころではない……」

「……『癒された』……?」


フィンは、ゆっくりと、顔を上げた。

彼を、数百年も悩ませてきた「呪い」を、目の前で「祝福」に変えた、小さな人間の魔法使い(わたし)を。


その、冷たかったエルフの瞳には、もはや「鑑定」も「驚愕」もなく。

ただ、静かな「畏敬」と「感謝」が、浮かんでいた。


「……人の子、アリア。……いや、『森の癒しフォレスト・ヒーラー』よ」


フィンは、私に、エルフ族の、最大級の敬意を表す、深い礼をした。


「……『交渉』の、テーブルに着こう。……我らが『友』よ」


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