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『無能』と追放された魔法使い、実は『力の天秤』を持つSランク級の逸材でした。~スキル禁止されたので『進化魔法』でSランク武具を手に入れます~  作者: さらん
第1章: 『無能』の烙印と『天秤』の覚醒

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第20話:監査官の「敗北」と最後の「呪い」


『霧の谷』に、討伐されたワイバーンの巨体が横たわり、静寂が戻った。


私たちは、息を整えながら、半壊した馬車の中にいる監査官ヴァレリウスに目を向けた。

彼は、窓枠に青ざめた顔でしがみついたまま、目の前で起きたことが信じられない、というようにカタカタと震えていた。


「……監査官殿」


ガレンさんが、馬車の扉を引きちぎるように開けた。


「馬車は行動不能だ。負傷は?」

「ひ……っ。く、来るな!」


ヴァレリウスは、ガレンさんの手を振り払おうとして、無様に転げ落ちた。

彼は、私たち四人を、まるで本物の「魔物」でも見るかのような目で睨みつけた。


「……見たぞ。今のは……! やはり、『力の天秤』を使ったな!」


彼は、震える指で私を指さした。


「敵の力を奪い、味方に与えた! 規約違反だ! ギルド規約違反だぞ、アリア!」

「……いいえ」


私は、静かに首を振った。


「あなたは、見ていなかったのですか?」

「なに……?」

「私は、『力の天秤アストラル・バランス』という『一つのスキル』は使っていません。私は、敵に『弱体魔法デバフ』を、味方に『強化魔法バフ』を、それぞれ別々に使っただけです」

「そ、そんな詭弁が……!」

「詭弁ではありません」


エララさんが、冷たく言い放った。


「『力の天秤』は、敵の力を『直接』味方に変換するスキル。今アリアがやったのは、敵を弱らせる魔法と、味方を強くする魔法の『同時行使』。似て非なる、高等技術ハイ・テクニックよ。……監査官ともあろう方が、その違いも分からないの?」

「ぐ……!」


ヴァレリウスは、言葉に詰まった。

エララさんの言う通り、二つは「現象」としては似ていても、「理屈ルール」が違う。彼が禁止したのは、あくまで『力の天秤アストラル・バランス』という「スキル名」そのものだ。


「……だが」


ヴァレリウスは、それでも食い下がった。


「あの威力は、尋常ではない! 『支援魔法』の範疇を超えている! あれこそが『管理外の危険な力』だ!」

「監査官」


レオが、ワイバーンの首筋に突き刺さったままの、光が消えた自分の双剣を引き抜きながら言った。


「あんたの『こじつけ』は、もう聞き飽きた。……俺たちは、あんたの命令に従い、あんたの護衛をしながら、Bランクの『調査』任務の過程で、やむを得ずAランクモンスターを『無力化』した。……そうだろ?」

「……」

「馬車は壊れた。帰りは、歩いてもらうぞ。……それとも、ガレンさんの盾に乗せてもらうか?」

「……っ!」


ヴァレリウスは、屈辱に顔を歪ませたが、何も言い返せなかった。

彼は、私たちを「詰ませる」ために同行したのに、逆に、自分の「こじつけ」を完膚なきまでに論破される「証拠」を、最前列で見せつけられたのだ。


その日の夕方。

私たち『アルテミス』が、Aランクモンスター『ワイバーン』の素材(主に魔石と翼)を担ぎ、その後ろを、泥だらけの監査官ヴァレリウスがよろよろと歩いてギルドに帰還した時、ギルドホールは三度みたび、爆発的な歓声に包まれた。


「うおおお! またAランク素材だ!」

「今回はワイバーンかよ!」

「監査官様! ご無事で何よりですなぁ!」


野次にも似た声が飛ぶ。


「……バフジン殿」


ヴァレリウスは、ギルドマスターの前に進み出ると、絞り出すような声で言った。


「……今回の『Bランク調査任務』。彼らは、規約違反の『力の天秤』は、使用しなかった」

「「「おおっ!」」」


ギルドがどよめいた。監査官が、ついに「敗北」を認めたのだ。


「だが!」


ヴァレリウスは、憎悪に満ちた目で私を睨みつけた。


「アリアが使用した『進化魔法(仮)』は、『力の天秤』と同等、いや、それ以上に『危険』かつ『規格外』の力だと、私は判断する!」

「まだ言うか、このクソ眼鏡!」


レオが掴みかかろうとするのを、ガレンさんが制した。


「よって、私は王都に戻り、マルクス伯爵およびギルド本部に、『現状の報告』と、あ(・)の(・)の(・)について、再度の『監査』を要請する!」


彼は、もはや私たちを罰する「権限」が、自分にはないことを悟ったのだ。


「『アルテミス』のAランク昇格『保留』措置は、継続とする! そして、アリア! お前が今日使った、あの忌まわしい魔法も、いずれ『力の天秤』と同罪として、使用を禁じてやる!」

「……!」

「覚えておくがいい! お前たちが『王都の権力(マルクス伯爵)』に逆らったことを、必ず、必ず後悔させてやる!」


ヴァレリウスは、これ以上ないほどの捨て台詞――それは、もはや「呪い」だった――を吐き、荷物もまとめず、王都行きの馬車に転がり込んで、街から逃げるように去っていった。


「……行っちまったな」


レオが、忌々しげに吐き捨てる。


「ええ」


エララさんが、静かに言った。


「『負け犬』が、王都に尻尾を巻いて逃げ帰ったわ」

「だが……」


ガレンさんが、重い口調で続けた。


「事態は、悪化したぞ。マルクス伯爵は、我々を『危険』だと断じる、監査官という『証人』を得てしまった。……王都で、本格的に我々を潰すための『何か』が始まる」


Aランクの看板は、戻らなかった。

私たちは、監査官を追い払うことには成功したが、戦いは、このローカルから、王都ナショナルへと、ステージを移すことになったのだ。


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