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男飯食堂、神代亭へようこそ!  作者: 一之瀬 葵翔


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29/30

もものハジメテ

いつもよりちょっと早く書きあがった。

やった。

タイトルにもあるようについに桃叶が!

って感じのお話です。

「それじゃ始めよっか~」


「は、はい!」


 気の抜けた声の悟志と、それとは逆に緊張しきった桃叶。

 二人は今、キッチンに立っていた。

 事の発端は、前日の夜。

 なんと瑠実がキッチン用品の懸賞、その特賞に当選した。

 ランダムで贈られる調理器具、それが神代家に届く。

 早速開けてみるとそこには卓上IHコンロ。

 鍋を新しく買って、これを使えばカセットコンロはもう使わなくていいな~。

 ボンベ代もなかなか馬鹿にならないからな~。

 私、じーにあすでしょ! これ悟志くんにあげるね!

 どや顔でそう言った瑠実をすごい! えらい!

 とみんなで褒めたたえたあと、キッチンの棚にしまおうとする悟志を追いかけて桃叶が言った。


「神代さん、ももに料理を教えてほしいのです!」


「いいけど、また急にどうしたの」


 ここで桃叶が悟志にも火が怖いことを打ち明ける。

 ずっと自分もやってみたかったけど、どうしても火が怖かった。

 でもこれなら自分でも料理ができるかもしれない。

 それを聞いた悟志はにっこり笑うと頷く。


「そっか、ほんなら明日一緒にごはん作ってみる?」


「うん!」


「じゃあ明日はちゃんと早起きすること。前までの時間とまではいわないけど、お姉ちゃんたちよりは早く起きて、買い物行くよ」


「うっ、……はい」


 高校を卒業する桃叶。卒業式前日まで登校することもなく、また絶対朝早くにしなくてはいけないと思ってた水垢離も実は起きてすぐにやったらいいと聞かされ、すっかり生活リズムが乱れていた。

 それでも神代亭の手伝いまでにはしっかり起きて準備もするため何も言わないが、また学校が始まったらリズムを戻すのが大変だと思った悟志はここで釘を刺す。

 夜が明けて、悟志が朝食を食べ終えた頃、ちゃんと起きてきた桃叶。

 二人で一緒にスーパーに買い物へ。


「さて、桃叶ちゃん。何を作りたい?」


 カートの下段にマイバスケット、上段に買い物かごを置いた悟志が桃叶に問いかける。


「えっと……」


 少し迷いながら桃叶が口にした料理の名前は……。


「じゃあ、グラタン作っていくけども。今回は料理が初めてってことだから、ホワイトソースじゃなくてミートソースのグラタンにしようか。ちょっとこだわった方のレシピを教えるけど、簡単な方はめっちゃ簡単だからさ。これ覚えて、口で言ったらすぐできると思うよ」


 グラタンだった。

 流石にホワイトソースは難易度が高い。

 でも、ミートソースを使ったミートグラタンであれば、なんとかなる。

 いや、まぁレシピ簡略化して手軽にできるようにすればいいけども。

 IHコンロは一口、フライパンひとつ、いわゆるワンパン調理での楽さはミートソースの方が上。

 そう思った悟志は材料を説明しながら買い物を進める。

 それをスマホにメモしながらついていく様はまるでアヒルの雛のよう。

 ぴょこぴょこ歩きの桃叶はとても愛らしく、思わず笑みがこぼれる悟志。

 そんな買い物を経て、悟志たちが買ってきたのは


・合い挽き肉

・みじん切り玉ねぎ

・ミートソースの素

・マッシュポテトの素

・シュレッドチーズ


 の五つ。


「ソースの素に書いてある分量よりもちょっと多いくらいなら大丈夫だからね? 肉なんかは特にグラム数がしっかりしてないから書かれてる量に1番近いもの買えばいいし。少ない量のパックが売ってなかったら、二皿分じゃなくて一箱使い切りの四皿分に合わせて買って作って、冷凍しておけばすぐ食べれるから」


「えっ、そんな大雑把でいいんですか?」


「男飯に繊細さなんていると思う?」


「それはそうですけど」


「じゃ、俺は口出すけど手はよっぽどじゃないと出さない。ここからは桃叶ちゃんが全部やってね」


 そういうと一歩下がって、手で作業するように促す悟志。

 桃叶の初挑戦が今始まった。

 一方で、瑠実たちは何をしているのかというと……。





「今頃ももは悟志さんと料理してるんだろうね~」


『そうだな~』


「何作るんだろうね?」


 恥ずかしいから見ないで! と桃叶に言われて、瑠実と乃亜の姉二人は長女こと瑠実の部屋で動画鑑賞。


「これとか作ってたりね~。簡単そうだし」


 ジュジュの不思議な探検。

 アニメやマンガなど、この国のサブカルチャーに触れてハマった瑠実が一番好きな作品。

 謎の遺跡から発掘された仮面の力で化け物になった弟を倒すため。

 化け物を浄化する不思議な力、ヴァイタル・ウェーブを得る修業をしながら、化け物を弱体化させるアイテムを集める探検へ向かうジュリアーノ・ジューンブライドの物語。

 その第四部。ジュリアーノのひ孫にあたる伊集院淳が、学校七不思議と町内の不思議な出来事の真相を追い求めるための探検をするというのが簡単なあらすじなのだが。

 カドル、という名の抱きしめるといった意味を持つ、自分の心の底からの欲求が具現化した思念生命体。

 だいたいそれのせいで起きている。

 時には対話で、時にはバトルで解決しているのだが、今瑠実たちが見ている話。

 自分の料理をたくさんの人に食べてもらいたい、という欲求から店の食材や、料理、カトラリーに治癒効果を。

 そして具現化させた本人の調理能力を向上させるカドル、クッカーが登場する話だった。


「トマトとチーズとオリーブオイルと黒コショウだもんね~。とっても簡単!」


「でも、これってさ。悟志さんに似てない? ってかうちに」


 料理を食べて、風邪気味だった客の体調が戻る。

 花粉症が少し楽になる。

 乃亜の言う通り、神代亭に似ている。

 働いている店員も、女性三人。


「確かにそうだけど、悟志くんの料理ならあんな変なことにならないし、もっとしっかり治るよね~」


 事実は小説より奇なり。

 神代亭を知らない人間が見れば、確かに憧れる力だ。

 完全予約制、一日一組限定のコース料理で健康になれる。

 ただ、料理を食べた人間の不調の部分が大きく膨れて、それが弾けるとそれがよくなった証。

 マンガとしての演出の部分が瑠実には少し微妙だった。

 うちならそんなことにはならないのに! とフィクションに張り合う瑠実。


「そっか、そうだね」


 少し呆れながらも話を合わせる乃亜。

 ちらりと時計を見ると、そろそろお昼。

 桃叶たちはうまくやっているのだろうか。





「まずは玉ねぎとひき肉炒めていこうか。フライパンをコンロの上に乗せて、電源入れて、中火くらいにして温めて」


「はい」


 悟志の指示通りに動く桃叶。

 真新しいフライパン。

 たまたまIH対応だったからあげる、と渡されたもの。

 自分専用の調理器具、それをすぐダメにしないよう慎重に桃叶は作業を進める。


「次は油ちょろっと入れて……うん、それくらい。玉ねぎ入れてみようか。今日行ったスーパーは生で置いてあるけど、だいたい冷凍食品コーナーにあるから注意ね」


 悟志も悟志で慎重に作業する桃叶の集中を妨げないように気を付けながら声をかけていく。

 次にひき肉をフライパンに入れると、悟志が桃叶にとあるものを見せる。


「これは……しゃもじ?」


「そう、これは竹しゃもじ。こいつで細かく切るように混ぜながら炒めて。これはちょっとお手本見せるね」


 そう言ってフライパンの前に移動すると、チャーハンを作る時みたいにしゃもじを立ててトントンと切るようにひき肉を細かく分けていく途中で玉ねぎと混ざるようにかき混ぜる。

 だいたい半分くらいやった頃、悟志は桃叶にしゃもじを差し出す。


「ほれ、やってみ」


「あ、はい!」


 しゃもじを受け取るとおっかなびっくり動かしていく桃叶。

 手つきはつたないが、しっかりとできている。


「じゃ、ここで塩コショウかけて、水とミートソースの素をぶち込んで混ぜてくよ~」


「えっと……、お水は……」


 パッケージを見て入れる水の量を確認すると、計量カップでしっかり計ってフライパンに入れる桃叶。

 料理初心者にありがちな思い込みによるミス。

 それを極力排除しようとする姿勢に悟志もにっこり。


「とろみがついたら完成。で、素がなかったらケチャップとソース、あとコンソメにトマトの缶詰使って作る本格的なやり方もあるし、そもそも缶詰とかレトルトのパックでミートソース売ってるからそれ使えばいいよ」


「ありがとうございます。……レトルトのやつにお肉足すのがいいのかも」


「ま、そこは人それぞれだから。桃叶ちゃんの好きにすればいいよ。実際レトルトの方が安いし」


「ねーえー! じゃあ最初からそれでやってくださいよー!」


「それだとコンロ使わないんだもん。はい、次ポテト作っていくよ。これは簡単。決まった分量のお湯の中に、これまた決まった量の中身を入れてすぐに混ぜるだけ」


 桃叶の文句をさらっと流し、次の工程へ向かわせる悟志。

 もーおー! と少し拗ねた様子でそれに従う桃叶。

 これも計量カップで水をしっかり計って鍋に入れて沸騰させると、一袋全て入れて混ぜ込む。


「軽くこれにも塩コショウ振ってね~」


 悟志の指示もなんなくこなすと、これで下準備が完成。


「最後、耐熱皿に今作ったポテトを敷いて、その上にミートソース。シュレッドチーズを散らしてトースターで十分から十五分!」


 いつの間にか悟志が持ってきていた耐熱皿にマッシュポテトとミートソース、チーズを乗せてトースターへ。


「まぁレンジでもいいけど、その場合時間はもっと短いし、焦げ目はつかないからね?」


「はーい」


 そんなこんなで話しているとあっという間に時間が過ぎる。

 チン、と音が鳴ると待ちきれない様子で桃叶が扉を開ける。


「うわ~! すごい! 私にもできましたよ!!」


「おめでとう、これで一品覚えたね」


 きゃいきゃいと喜んでいると、階段から足音。

 瑠実と乃亜がゴン太を連れてやってきた。


「ももー、できた~?」


「えっ?! るーみん、グラタンだよ!! ももが作ったの?」


「うん、俺はほとんど手を出してなくて、桃叶ちゃんがちゃ~んと作ったよ」


 悟志が保証すると、乃亜が桃叶に駆け寄り抱きしめる。


「すごい、すごいねもも! やったじゃん!」


「はい、ももやったのです!」


 そのまま昼食に桃叶の作ったグラタンを食べる神代家。

 美味しい、美味しいと喜ぶみんなを見て、悟志の気持ちが少しわかった桃叶だった。

 その日の晩、こっそりと余ったミートソースでパスタを食べた後、桃叶は不思議な夢を見た。


「悟志くん、チャーハン二つ!」


「もも、月見そばお願い!」


 神代亭の厨房に立つのは悟志と桃叶。


「はいよ~!」


「ももにおまかせなのです!」


 いつの間にか火への恐怖心を克服できた自分が悟志と肩を並べて料理するそんな夢。

 夢だとわかっていても、そんな未来がありえることが嬉しかった。

喉痛いな~って思ったら咳が出始めましたw

先月の異常な残業時間のせいで風邪ひいてますね。

月末のメンケア代、チェキ代だと思って我慢しましたが果たして今月はどうなるんでしょうかw


週末に更新がなかったらすいません、体調不良で寝込んでます。


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