お腹いっぱい食べてやるんだからー!
早めに更新したかったけど、ネタが飛びまして笑
日付変わる前に間に合った!
「もー! ゆるせなーい!」
「なんじゃなんじゃどうした!!」
「ゆるせないゆるせないゆーるーせーなーいー!」
プラム様のいる世界では悟志たちが住む世界よりも一ヶ月ほど時間が遅い。
だから二度目の年末年始を迎えるために、乃亜は元居た神界に帰っていた。
プラム様の居城、そこに響くノアール、乃亜の叫び。
ただ事じゃないと、こちらでいう新年の挨拶である寿ぎの挨拶を止め、乃亜の元へ向かったのだが。
目の前で繰り広げられていたのは乃亜と誰かの言い争いだった。
「へっ、プラム様のお気に入りだからって理由でいきなり上級神になったお前が偉そうにするんじゃねぇよ!」
「私は言われても仕方ない部分あるけど、それでサクラやあっちの世界の人の悪口を言うのは違うでしょ!!」
だいたいの神の名は覚えているプラム様だが、乃亜と言い争いをしている男の神の名が出てこない。
あれ? 誰じゃったかの? とんと思い出せんが、愛し子である悟志を馬鹿にしたのなら灸を据えねば。
乃亜もそろそろ落ち着かせねばなるまいて。
傍に控えていた特級神が止めに入ろうとするのを手で制し、プラム様が自ら止めに入る。
「新年早々なにやっとるんじゃ、お主らは。皆迷惑しておろうが」
少々圧をかけて言葉を発すると、ぴたりと止まる乃亜と男神。
二人が声のした方向を見ると、そこには仁王立ちのプラム様が。
「まったく、何があったんじゃ。ノアール、話せ」
「は、はい! 実は……」
「お待ちください、プラム様! それは私が!」
乃亜に説明を促すと、そこに割り込む男神。
心底めんどくさそうにプラム様が男神に説明をさせると、端的に言えばただの嫉妬だった。
この小娘よりも自分の方がうまくやるから取り立てろ、そういった野心が目に見える。
聞く気が失せたプラム様。
お前に乃亜の何がわかる、と言わんばかりに冷たい目と低い声で男神の説明(笑)を遮る。
「そこまでじゃ。要はただの嫉妬じゃろ? 聞くだけ無駄じゃ。あとたかが人間の男とお主が馬鹿にしたのはわっちの愛し子じゃぞ? 子を馬鹿にされて、気を良くする親はおるまいて。……もうよい、お主は帰れ。ここには二度と来なくてよいぞ。わっちはわっちの子を守るこやつと宴をするでな」
「プ、プラム様?! お待ちください!」
「いくぞ、ノアール」
「はい!」
そう言って乃亜を連れ立って去っていくプラム様。
残された男神は同じく悟志を馬鹿にされたことに腹を立てた特級神によって乱暴に追い出された。
こんな荒々しいやり取りがあった頃、そのプラム様の愛し子はというと……
「ふぅ~! 今日もばっちり!」
いつものように料理をしていた。
漂う醤油の匂いにつられた瑠実と桃叶が厨房にやってくると、テンションの上がった悟志に声をかける。
「悟志くん、何作ってるの?」
「これってもしかしてこの前言ってた炊飯器のチャーシューですか?」
「お、桃叶ちゃんせいかーい! 久しぶりにチャーシュー仕込んだんだ。常連さんかつ予約限定のメニューでも作ろうかと思ってね」
炊飯器をぱかっと開けるとそこから溢れる湯気と醤油の匂い。
その匂いを桃叶は胸いっぱい吸い込むと、ぱたぱたと厨房の棚に向かい、大きめの茶碗と箸を持ってくる。
「神代さん、チャーシュー丼ですよね! ごはんどれくらい盛りますか? マヨネーズと味玉ありますか?」
にこにこ笑顔でそういう桃叶に対して、悟志が返したのは否定の言葉。
「いや、チャー丼は作らんけど。……あ~、試食がてら晩ごはんにしようか。桃叶ちゃん、茶碗片付けて。箸も店のじゃなくて自分の持ってきなさい。瑠実ちゃんも」
「はーい! あ、るーさん。ついでにるーさんのお箸も持ってきますね」
「いいの? じゃあお願いねー」
桃叶に任せた瑠実は悟志の横に立ち、炊飯器を開ける。
見ると、しっかり味の染み込んだ豚肉。
炊飯器での調理は実は昔からやっている。
食べやすいように脂身が固くなるバラ肉ではなく、肩ロース肉を使ったチャーシュー。
手間のかからない調理法として、重宝していた。
作り方はいたって簡単。
豚肩ロースのブロック、その脂身に包丁で切り込みを入れる。
その後赤身にフォークをザクザク刺して味が染み込むための穴をあける。
それを炊飯器に入れて、醤油、酒、みりん、にんにく、しょうが、鶏がらスープの素で作ったタレで炊く。
通常炊飯でしっかりと火を通し、炊きあがりの合図とともに肉をひっくり返して三十分ほど保温。
保温を切って、一時間ほど冷ませば切りやすくなるためカットしたら完成だ。
「さてと……始めていきますか」
興味深そうにこちらを覗く瑠実と桃叶。
寒いからと座敷に行くよう促して、自身は調理を開始する。
本日作るのは……まぜそば。
用意するのはニラ、水菜、ひき肉、温泉たまご、味玉、にんにく。
先ほど作ったチャーシューに刻みネギ。
ショッピングモール併設のスーパー。
普段は別のスーパーに行くことが多い悟志だが、たまたま特売で欲しいものがあった時に見かけたそれ。
ずっと探していたそれ。見つけてしまったからには買うしかない。
G系極太麺。
かつてよく食べていた野菜と肉の暴力であるこってりとしたラーメン。
それに使われている麺に似た麺。
これを使ってラーメンでも、と思ったが。
チャーシューのタレをうまく使えないものかと、色々なレシピを探していたところ。
まぜそばに行き着いた。
タレのレシピを見てみると、チャーシューのタレにオイスターソースを足すだけという手軽さ。
試してみる価値はある。
『悟志~、俺のごはんの時には井戸の水で手を洗ってからにしてくれな』
「あ、そうか。犬はにんにくダメだもんな。ゴン太、今日は先にメシ出すわ」
『いいのか? やった~!』
「神代さん、ゴン太さまのごはん私がやりますね」
「お、じゃあ頼むよ」
「ももにおまかせなのです!」
ゴン太の食事を桃叶に任せ、まずは肉味噌から作り始めることにする。
フライパンを熱すると、ごま油。
油が温まったころにひき肉を入れて、木のしゃもじを使って炒め始める。
チャーハンを作る時もそうなのだが、切るようにして炒めると作りやすいのだ。
塩コショウと鶏がらスープの素を加えてさらに炒めると、甜麺醤と豆板醤を入れ、ひき肉全体に混ざるようにしゃもじを動かす。
辛いのが苦手な人には豆板醤を少なくすればいいし、入れなくたっていい。
最後に出てきた油をキッチンペーパーである程度吸い取ったら完成だ。
器に移そうとしたところ、こちらをじっと見つめる桃叶。
お手伝いしましたよ、ご褒美ください!
そんな期待に満ちた目を見てふっと笑う悟志。
桃叶を手招きすると、スプーンで一口分できたばかりの肉味噌をすくって、渡す。
悟志の代わりの味見だ。
それを口に含むと、ぱっと笑ってうんうん頷く桃叶。
嬉しそうに戻っていく背中を見送ると、いい感じに冷めたチャーシューをカットしていく。
「あ、瑠実ちゃん、桃叶ちゃん。ニラと水菜どっちがいい? あとにんにく入れますか? 海苔は刻みと板どっちがいい?」
座敷にいる二人に声をかけると、少し時間が空いて返事が返ってくる。
「私水菜がいいな~? にんにくはちょっとだけ、海苔はどっちも!」
「じゃあ、ももはニラにしますね。にんにくはいらないです。海苔は両方、板は別皿でお願いします」
「はいよ~」
二人からのオーダーを聞いて、器にお湯を入れて温め始める。
ニラと水菜を刻んでさらによけておくと、鍋でお湯を沸かして、麺を投入。
茹で時間は七分。袋に書いてあった時間通り。
お湯の対流で麺は動いているが、時折自分でもかき混ぜておく。
器のお湯を捨てると、チャーシューのタレを大さじ二杯半。
そこにオイスターソースを加えて混ぜておく。
味玉と温泉たまごを冷蔵庫から取り出し、味玉を切る。
フライパンでチャーシューの表面をカリカリに焼いていくと、タイマーが鳴る。
麺の湯切りをすると器に入れて盛りつけ開始だ。
匂いの強いニラを選んでくれた桃叶にちょっとしたご褒美。
インスタントラーメンを食べる時に乗せたメンマの残りも乗せることにしよう。
まず真ん中に肉味噌を。手前に魚粉、メンマ。
魚粉の隣に刻んだニラを、メンマの横に刻みネギを乗せる。
少し迷ってネギの横にチャーシュー、味玉と並べて肉味噌の上、器の真ん中に温泉玉子を落として完成だ。
「あ、海苔」
うっかりミス。刻み海苔を散らしていなかった。
慌てて散らして、板海苔はおにぎり用のものを一枚取り出して、半分にちぎって小皿の上に。
今度こそ完成。神代亭まぜそば。
「桃叶ちゃん、できたよ~。あったかいうちに混ぜてほしいから先に食べ始めなさい」
「わーい! それじゃ、お先にいただきます!」
ぱたぱたと歩いて器を受け取ると、すれ違うように瑠実もやってきた。
お腹を空かせているに違いない。急がねば。
メンマがない分水菜を多めにしようか……。
にんにくは少しだけって言ってたから、魚粉の下にして……。
なんて考えながら盛りつけていると悟志を見つめる瑠実。
「なに?」
「もーお! ももにはメンマあるのになんでないの! 私にも特別、して!」
拗ねたようにそういう瑠実。
それが何だか妙に嬉しくて、自分用に焼いておいた細かく刻んで焼き目を付けたチャーシューをそっと乗せる。
「さっすが悟志くん! じーにあす!!」
「へいへい。瑠実ちゃんも先に食べなね」
「わかったー! 悟志くんありがと! いただきます! ……あ、ネギ! もも~、刻みネギ食べて~」
そう言って器を受け取って座敷へと戻る瑠実。
さて、最後は自分の分。思いっきり遊んでやろうか。
なんて思っていると、裏口の扉が開いた。
「邪魔するぞ~」
「ああ、プラム様! あれ? 今新年のなんかじゃなかったですっけ?」
「そうなんじゃが……。もうすぐノアールも帰ってくるぞ。そんでな? ちょっとノアールが帰ってくる前に話しておきたいことがあっての」
居間に行くと、ケトルで沸かした井戸水にフレーバーティーの粉末を溶かして、紅茶にして出す悟志。
それをプラム様が一口飲むと、先ほど居城で起きたことを話し始める。
イライラが収まるようなやけ食い飯でも作ってやってくれ、と頼んで戻っていくプラム様。
すまんが、今日の夜はまぜそばなんや、と心の中で謝る悟志。
紅茶のカップを洗って厨房に戻ると、乃亜が帰ってきた。
「乃亜ちゃんおかえり。あっちはどうだった?」
努めていつもと変わらないように聞いた悟志。
その一言でスイッチが入ったように話し始める乃亜。
一度落ち着くまで手を止めて、乃亜の言葉を受け止めようと構えている悟志。
すると座敷からまぜそばの器を持って桃叶が出てきた。
「のあさん、おかえり。帰ってくるの明日じゃなかったですっけ? 今日はまぜそばですよ! ももはこれから締めの追い飯をキメるのです!」
桃叶はキッチンに向かうと炊飯器からごはんを器に入れる。
カトラリーの入った引き出しからレンゲを取り出すと、お酢をごはんにちょろりと垂らして混ぜ合わせる。
そんな桃叶に食欲を刺激された乃亜。
ため息をひとつついて悟志にこう言った。
「悟志さん! 私にもまぜそばください!」
「味玉ないけどそれでいいなら。ああ、野菜は水菜? ニラ? にんにくは? 海苔は刻みと板どっち?」
「……全部入れてください!! もうこうなったらお腹いっぱい食べてやるんだからー!」
どうやら悟志の夕飯はもう少し後になりそうだ。
帰ってくると思わなかったから自分はいっかな~、と二人分しか味玉を用意しなかったことが悔やまれるが、それは仕方ない。
手早く水菜、ニラ、にんにくを刻み、麺を茹でる。
冷めた肉味噌も温め直し、盛り付けると乃亜の元へ。
「はい、まぜそばだよ~」
「ありがとうございます! いただきます!」
まぜそばを受け取るとそう言って勢いよく食べる乃亜。
「お肉カリカリ~」
「美味しいよね。あ、乃亜。私の味玉半分あげる」
「いいの? るーみんありがとー!」
桃叶にならって追い飯をしよう、その時に味玉を崩して混ぜよう。
そう思っていた瑠実が乃亜に自分の味玉を渡す。
それを受け取る乃亜。やけ食い、といったように食べる勢いを増していく。
そこに悟志が自分の分の器を持って座敷にくると、いつもの食事風景。
「あ~、悟志くんだけチャーシュー多い!」
「切る時に崩れちまった分だ、しかたね」
「なんで方言っぽく言うの?」
なんてやり取りをしながら進む食事。
それぞれ追い飯まで食べ終えた頃だった。
「もうちょっと……食べたいかも」
乃亜の一言に驚く三人。
少食の乃亜がけっこう食べたのに、まだ食べれる。
そこに乗っかってきたのは食いしん坊の末っ子。
「のあさん、私もです! 神代さん、まぜそばください」
「私はまぜそばじゃなくていいけど、この麺がいいかも」
期待する眼差し。
これにノーと言いたくないなぁ、と黙って悟志は厨房に。
さてどうするか。
考えた答えは油そば。
具材を楽しむまぜそばに対して、麺とタレを楽しむ油そばならいいだろう。
と器にチャーシューのタレとお酢、ごま油を入れて混ぜる。
麺を茹でると刻みネギ、温泉たまご、最後一人分には満たないくらいに残ったメンマを乗せて完成だ。
「はい、油そば」
「わー、ありがとうございまぁす!」
「さすが神代さん! モノが違いますね!」
混ぜると、先ほどまでまぜそばが入っていた器に分けて食べ始める二人。
「ん! おいしい!!」
「マヨネーズ……、これはこれでいいですね!」
なんてきゃあきゃあ言いながら食べているとさっきまでの怒りはどこかに。
すっかり機嫌を直して、眠りについた乃亜だったが……
「あ~……、やっぱ昨日食べ過ぎだった……。お腹しんどいよぅ」
と翌日胃もたれに苦しむのであった。
読んでいただきありがとうございました!
次回は何作れば……。
そして、再来週は二回目の製菓をするのか……。
お楽しみに!!




