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男飯食堂、神代亭へようこそ!  作者: 一之瀬 葵翔


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19/20

今年初めての料理

あけましておめでとうございます。

本年も本作をよろしくお願いいたします。


去年最後の更新が年越しそば回だったので、今年の最初は年明けうどんを。

っていうことは今日書かないとダメだよね~と。

「新年あけましておめでとうございます」


「おめでとうございます、今年もよろしくお願いいたします」


 年が明けたからといって、悟志と桃叶の起床時間は変わらない。

 いつもの時間に起きた二人は、日課を済ませて向き合い新年の挨拶をする。

 その横には行儀よく座っているゴン太。


「でもよかったよね、今年は家の手伝いしなくていいって」


「はい、そうなのです。神代さんを守るのが今のお役目なんだから、こっちは大丈夫って。でも、るーさんたちと一緒に挨拶だけはしてこようと思って」


「それはいいことだ。行っといで」


「るーさん、のあさんも早く起きてくれるといいんですけどね」


「十時くらいには起きてくるんじゃないかな?」


 悟志が用意していたおせちを食べながら会話する二人。

 といっても昔ながらのおせちではなく、どちらかというと肉などを詰め込んだオードブルに近いものだが。

 テレビはいつの間にかお笑い芸人が漫才を次々と披露しており、毎年なんとなく見ていた特に面白くもないものが、今年はなんだか楽しく感じた。

 そんな桃叶に悟志からの贈り物。


「あ、そうだ。桃叶ちゃんにこれ」


 前日の年越しそばで余ったたっけぇ肉。

 それを白菜と一緒に煮て作った雑煮。

 俺はもちいいや、と吸い物として楽しむ悟志に、おもち二個ください! と食欲旺盛な桃叶。

 のんびり食べている最中に悟志がポチ袋を桃叶に手渡す。


「えっ! いいんですか? ありがとうございます!!」


「まあほんの少しだけどね」


「それでもでもでも、嬉しいです!」


 もらえるとは思ってなかったお年玉。

 あとで中を見るとして、いつも何かと面倒を見てくれる瑠実や乃亜に今日は何か奢ってあげたいな。

 なんて思いながら新年最初の食事を済ませる。

 まだ朝の八時、二人が起きてくるまでゆっくりしてよう。

 こたつで横になってみようか、横で眠るゴン太を見ながらぼんやりとしていた時だった。


「悟志~、きたぞ~」


「あけましておめでとう、今年もよろしく」


 裏口の扉が開く音が聞こえると、聞こえる神の声。

 悟志の守り神その一、異世界の管理神プラム・ウィータ。

 悟志の守り神その二、この日ノ元を作ったとされ、桃叶に悪しきものを祓う力を与えてくれる神アマツキオオカミ。通称はオオガミ。

 なお、オオガミと呼んでいいものはごく限られており、神の仲間と人間では悟志と桃叶の二人だけ。

 その二柱が慣れた様子で桃叶のいる座敷へ向かってくる音が聞こえる。

 

「あ、プラム様にオオガミ様。あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします」


 洗い物をしていた悟志が出迎えると、プラム様が悟志に布に包まれた何かを渡す。


「こちらこそじゃ。あのな、これわっちへの供え物にあったやつでな。こっちの世界で鍛冶や工作を得意とする種族ドワーフ。そのドワーフの名匠、ドワルコが打った包丁じゃ。ミスリルとオリハルコンにアダマンタイトを使った切れ味抜群、耐久性抜群の逸品じゃぞ。そこにわっちの加護をつけておいた。お主以外がそいつに触れることは神以外できんし、お主は何があってもそいつで傷つくことない。まな板とかは知らんがな」


「えっ、そんなすごいものをいただいていいんですか?」


 慌てる悟志にプラム様はにこにこ笑顔でこう答えた。


「ええんじゃええんじゃ、オオガミくんもおんなじことを考えておったみたいでな?」


「僕からも贈り物だよ。神代家には護り刀がないからね。悪しきものに対しての結界が薄い。だから僭越ながら僕が用意したってわけ。こっちもヒヒイロノカネを使った玉鋼で、アマノヒトツカミが手ずから打ったものに僕の加護を付けた。模造刀っていうんだっけ? 普段は何も斬れないようになってるけど、君の気持ちに応えて、君が斬りたいものを斬ってくれる。もちろんこの刀が君を、君の守りたいものを傷つけることはない。銘は君の名字をもらって、神代。打刀と脇差、大小用意したよ。受け取ってくれ」


 オオガミの気遣いに恐れ多くも嬉しさを隠せない悟志。

 だってしょうがないじゃない、男は刀が大好きなんだもん。

 布に包まれて差し出された大小を神妙な面持ちで受け取る。

 悟志のテンションが上がってくるが、ゴン太のわん、という鳴き声に我に返る。


『悟志、桃叶殿がかわいそうだぞ。はやくなんとかしてくれよ』


 何がどうしたと桃叶の方を見ると、体育座りで耳をふさぐ桃叶の姿が。


「ど、どうしたの桃叶ちゃん」


 悟志がおっかなびっくり声をかけると


「みてなーい、きこえてなーい。神代さんが神器を二つも持ってるなんて私知らなーい」


 と子供みたいなことを言う桃叶。

 その様子に思わず笑みがこぼれる悟志と二柱の神。


「あっ、今子ども扱いしようとしたでしょ。失礼な! ももはセクシーな大人のレディなんですからね!」


 何か察したのか、悟志たちの方を振り向いて抗議する桃叶の様子にいよいよ耐えられなくなった悟志たちはついに声を上げて笑い出す。


「もーおー! なんでそこで笑うんですか! 普通はごめんって謝るところでしょ~? これだから大人は!」


 座敷に桃叶の叫びが響いたのであった。


「さ、朝汲みたての井戸水でも出しますから上がってください。つまめるもんもありますし。食ってってくださいよ。桃叶ちゃん、箸とお皿用意して」


「はいなのです!」


 悟志のお願いにすぐ応えて、ぱたぱたと動き出す桃叶。

 その様子を満足そうに見つめるオオガミと、目を輝かせるプラム様。


「おお、さすがは悟志! 労い方をよう知っとるのう! それじゃ遠慮なく馳走になろうかの」


「すまないね、このあとはずっとこの国の社を見て回るから食べる時間はなさそうなんだ。ここでしっかり食べられるのは助かるよ」


 そう言って靴やわらじを脱いで座敷に上がる二柱。

 ゴン太が尻尾を振って、こたつに案内すると二柱は足を突っ込みその温かさにうっとりとした表情を浮かべる。

 そこから瑠実や乃亜が起きてくるまで、悟志の守り神たちと悟志、桃叶は穏やかな時間を過ごしたのであった。





「……ほんっっっっとにびっくりしたんだけど! 下に降りたらプラム様がいるんだもん」


「ほんまに~。そういえば乃亜ってあっちの世界に帰らなくていいの? テレビだと年末年始の帰省がどうとかって言ってたけど」


「うん、大丈夫。こっちと時間の流れが違うから、あっちは一ヶ月くらい遅いの。だから今月末に何日か帰るんだ~。悟志さんにも言ってある」


 桃叶の挨拶に同行した瑠実と乃亜。

 無事に挨拶を終えて、今は帰宅途中。

 ふらりと寄ったショッピングモール、ちょっと待っててと桃叶に言われた二人はエスカレーター横の休憩用の椅子に座って桃叶を待っていた。


「お待たせしました、これ。いつもお世話になってるので今日くらいは」


 戻ってきた桃叶に差し出されたのはラテ。

 それぞれ飲んでみたいね~、って言っていたものだった。


「えっ、ももが出してくれたの?!」


「ちょっとー、大丈夫?」


「はい、出る際にお年玉をいただけたのでお金は大丈夫です」


「もー! 別に私たちがやりたくてやってるんだからいいのに! お姉ちゃんなんだし! ……ありがと!」


「ありがとね」


 差し出されたラテを受け取って礼を言う乃亜たち。

 自分の分のラテもちゃんと持っていたことに安心した乃亜。

 隣に座った桃叶の肩に腕を回して抱き寄せ、頭をこつんと当てて小声で一言。


「一瞬ね、自分の分我慢して無理して買ってきたと思っちゃったから安心した。ももはさ、一番年下だし、お金もお小遣いだけだからぴぃぴぃ言ってるの見てきたし。無理しなくていいんだからね? 大人になるまでは私たちがちゃんと助けてあげるから」


「のあさん……」


 しんみりした雰囲気、乃亜の隣の瑠実はわざと聞こえないふり。

 スマホを操作していると、ぱっと喜びの表情を浮かべて二人にこう言った。


「ねぇ、悟志くんがうどん作ってくれるって! 昨日言ってた年明けうどん!」


「るーみん、ほんと!? やったー、私もおそばよりはうどんなんだよね~。ももは?」


「ももはどちらも美味しくいただけるので特にこだわりは……。量考えずに頼んで食べきれないうどん好きのせいでうどんばっかり食べてますけど」


「……うっ、いたいとこつかれた」


「でも、悟志さんはちゃんと食べきれる量作ってくれるもんね! じゃあいこ!」


 ラテを持ち、立ち上がってショッピングモールを出る三人娘。

 ちょうどやってきた最寄りのバス停まで向かうバスに乗ると、あったかいが少し混雑した車内をそわそわして過ごしていた。

 その頃悟志はというと……。


「やっべぇ~……。ゴン太、刀だぜ。俺の専用の刀」


『それ知ってるぞ、おにわばんせんたい、しのびまんだ!』


 自室で御神刀・神代をうっとり眺める。

 しかしまだ抜いてはいない。

 三人娘がいない間に酒を飲み、その状態で抜くのは危ないと一度昼寝をした。

 そうして、酔いもさめた夕方。

 いよいよ刀を抜く時が来た。


「よーし、いくぞ」


 悟志が静かに刀を抜く。

 その瞬間、リィィィィンと鈴の音のような音が聞こえたと思えば、空気が変わる。

 霊感が薄い悟志でもはっきりわかるほどに、なにやらよどみのようなものが一気に消え去った。

 

『悟志……、すごいな』


 ゴン太のぽつりと呟いた一言に悟志も



「お、おう……」


 と返すのが精いっぱいだった。

 そんな一幕もあったが、そろそろ帰ってくる三人娘のために夕食を用意しないと。

 そう思って、キッチンへと向かう。

 ボウルに水と共に入れた干ししいたけがいい出汁を出しているのと確認すると、取り出して刻む。

 前日に買っておいた白菜もついでに刻む。

 冷蔵庫に入れておいたかき揚げも、常温保存できるパックのうどんも取り出して調理台の上に並べておく。


「まぁゆーて、しいたけの強みは残したいからそこまでみりんと醤油くらいかなぁ……」


 戻し汁を鍋に移して火にかける。

 みりんと醤油で軽く味を調えると刻んだしいたけと白菜も入れて煮込み始めた。

 あ、そうだ。鍋にお湯を沸かして、うどん温める準備をしとかないと……。

 別の鍋を取り出したと同時に聞こえてくる声。

 玄関の扉が開く音も聞こえるとすぐに


「ただいま~!」


「戻りました~、お留守番ありがとうございます」


「悟志さん、年明けうどん楽しみにしてますね!」


 と三人娘の声。


「おかえり! ちょうど作り始めたところだから手洗いうがいして、座敷で待ってな!」


 玄関あたりにいるであろう三人娘に声をかけると、少し急がないとな、なんてペースを上げる。

 オーブントースターにかき揚げを入れて、温め始め、緊急事態だと鍋に湯沸かしポットのお湯を全て入れて火にかける。

 九四度のお湯が鍋に移されると、すぐに沸き立つ。

 うどんを人数分一気に入れて茹でる。

 つゆは……、大丈夫そうだ。

 うどんの湯切りが終わったタイミングでちょうどかき揚げも温め終わる。

 手早くうどんを器に移して、つゆを均等にかける。

 鍋に残った白菜としいたけも同じく均等に分けて盛りつけると、かき揚げをどん。

 こうして悟志なりの年明けうどんができた。





「それじゃあ改めてあけましておめでとうございます。今年も一年よろしくお願いします。いただきます」


「「「いただきます」」」


 悟志の掛け声で、食事を始める四人。

 幸せそうに自分の作った料理を食べる姿を見て、去年を思い出す。

 まさか新年早々料理、しかも初めての年越しうどんなんて考えられなかった。

 でも、不思議と嫌じゃない。ふっと笑みを浮かべてうどんをすする悟志だった。


今回書いてて、乃亜がすっごくお姉ちゃんだった……。

次回更新は遅くても10日~12日には!

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