表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男飯食堂、神代亭へようこそ!  作者: 一之瀬 葵翔


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/20

聖なる日だからそんなことがあってもいいじゃない

あ、前回コピペミスって途切れてた部分加筆してます。

マジですいませんでした。


打ち合わせ中

俺「〜〜(12月17日公開のエッセイ参照)で病んでる」

???「でも病んでる時の方がいいものできたりしない?」

俺「ほんまそれ(白目」

???「でも一之瀬さん、こういう時無理して潰れがちだからひとまず休んで……」


ということで先週の土日更新はお休みいただきました。

すいません。でもマジで何も浮かばなくなるくらいにはやばかった笑

ふっと頭の中に浮かんでどうしようもなく書きたくなった悟志回。

メリークルシミマスでシングルヘル!!

「やっと一息つけるね」


「ほんとー。でも、こういう日ってもうお客さん来なかったりするから今日はあとのんびり休憩じゃない?」


「もう今日はいいよ。あとはゆっくりさせてくれ……」


 ぼんやりと話す乃亜、来栖、悟志の三人。

 営業時間だというのに、珍しく座敷に全員で座り込んでいる。

 本日の神代亭は開店からラストオーダー十分前の現在に至るまで、なんとなく忙しい感じだった。

 満員でドタバタ、というより常に客席の八割が埋まってる状態と言えばいいのか。

 途中、水分補給で厨房に入った以外。

 常に客席で何かしらの業務にあたっていた来栖と乃亜。

 悟志はひたすらに厨房で調理をして、その顔には少し疲れが見える。

 このままラストオーダーまで誰も来なければ……。

 そんな淡い期待を持っていた三人だったが


「こーんにーちわ」


 扉の開く音と共に聞こえた女性の声に打ち砕かれる。

 諦めと共に、今日最後であってくれと願う客を出迎えようと店に出ると、そこには見知った顔があった。


「ああ、いらっしゃい」


「ほんまに店やってるんやな。神代君久しぶりー。おばあちゃんのお葬式以来やんな。元気してた?」


「俺はメンタル以外余裕よ。夏目さんは?」


「出た出た、メンタル以外。私も元気やで。最近めっちゃ忙しいけど」


「そっかー。あ、カウンター席座ってよ」


「うん!」


 悟志と親しげに話してカウンター席に座る女性。

 この店ができてから、ここで働き出してから一度も見たことがなく。

 なのに、すごく悟志と親しげな女性に少し戸惑いを感じる来栖と乃亜。

 それを察したのか、悟志が互いを紹介する。


「来栖ちゃん、乃亜ちゃん。この人は夏目瑞穂(なつめみずほ)って言って、俺の高校の時の同級生なんだ。夏目さん、この二人は今うちで働いてる来栖瑠実ちゃんと澤城乃亜ちゃん」


「来栖です、よろしくお願いします」


「澤城です、はじめまして」


 悟志の紹介に合わせて、それぞれ自分からも挨拶をする来栖と乃亜。

 それを見た夏目も立ち上がって二人に挨拶をする。


「あ、どーも。私、神代君の高校の同級生で夏目瑞穂って言います。よろしく」


 少し話しているとラストオーダーまであと五分ほど。

 客もおらず貸し切り状態、もういいだろう。

 そう思った悟志は来栖たちに指示を出す。


「来栖ちゃん、のれん下げてきて。乃亜ちゃんは夏目さんに水出して」


「はーい」


「はい!」


 悟志の指示にてきぱきと行動する二人。

 そんな二人の働きぶりに感心する夏目。


「ほんますごいな。めっちゃ店長って感じするし、めっちゃ真面目やん」


「ずっと働いてくれてるからねぇ。さて、ご注文は? まぁ、今日は店閉めたし奢りでいいよ」


「え、ええん? ありがとう! ちょっと待ってね……」


 悟志の言葉にいそいそとメニューを見始める夏目。

 そんな夏目を温かい目で見ている悟志。

 その目は来栖や乃亜、桃叶を見ているときと同じようで、どこか違う。

 それがなんなのか、のれんを下して店に戻ってきた来栖にはわからなかった。


「……お、これおもしろそうやな。神代君、このおまかせ和風パスタってやつお願い!」


「はいよ!」


 メニューを眺めて、一分ほど経っただろうか。

 夏目が悟志に注文をする。

 おまかせ和風パスタ、ということでその日によって具材が変わる和風のパスタ。

 いつものようにパスタをゆで始めると、冷蔵庫の中を覗く。

 すると、目の前には最近ハマってた高菜。

 最後の一回分くらい残ったそれを手に取る。

 続いて、手に取ったのは細かく刻んでおいたベーコンブロック。

 ついでに一片のにんにく。

 慣れた手つきでにんにくを刻む。

 自分が食べるのであれば三片くらいはいっちゃうんだけど、女性だからなぁと小さいものをひとつだけ。

 フライパンを熱し始め、そこにサラダ油。

 オリーブオイルだと和風にならないから。

 中火より少し弱いかな? と悟志が勝手に思っている火加減にしてにんにくに火を通す。

 そこにベーコンも入れて、ゆっくりじっくり火を通しているとパスタが茹で上がる。

 湯切りをして、フライパンに。その時にコンロの火は少し強めておく。

 顆粒だしをふりかけたら高菜を投入。混ぜ合わせるように軽く炒めていく。

 最後、醤油を少し垂らしたら皿に盛りつけて完成だ。

 

「お待たせしました、おまかせ和風パスタです」


「うわ、めっちゃ高菜やん! とんこつ焼きラーメンか!」


「ちゃんとパスタだよぉ! ……とんこつ焼きラーメンは今度やってみようかな」


 夏目が目の前に置かれたパスタを見た率直な感想。

 高菜多い! しかし、肝心なのは味だ。

 美味しければある程度は許す。


「いただきます」


 夏目が手を合わせてそう言うと、フォークを手に取って皿の上のパスタを少し巻き取り口へ運ぶ。


「ん! 意外と……合う?」


 にんにくの香りが食欲を刺激し、高菜の茎部分のシャキシャキ感が、いいアクセントに。

 さらに醤油。とりあえず醤油入れとけば和風やろ!

 とか思ってそうだなぁ、でもやっぱ醤油なんだよなぁ。

 と納得させられる。

 厨房の片付けを始めた悟志と、その手伝いをする二人が放つ音をBGM代わりに夏目はスマホ片手に黙々と食事を進めていく。


「ごちそうさまでした! 神代君ってちゃんと料理できたんやな。予想より美味しかった」


 食事を終えた夏目が悟志にそう言うと、悟志も苦笑いで答える。


「じゃなきゃ飲食店やれないでしょうよ。ああ、もっとにんにくを効かせたかった、ヤバみを届けたかった……」


「まぁ、家庭科の調理実習の時もほぼ一人で全部作ってたもんな。仕事休みやし、別にたくさん入れてくれてよかったのに。神代君の奢りなんやし」


「マジか。昼休みに寄ってくれたんかと思ってた」


「さすがに職場からは遠いなぁ」


 なんて話していると、来栖と乃亜がやってくる。


「悟志くん、片付け終わったよー」


「お腹空きました、何か食べたいです」


「ああ、お疲れ様。にゅうめんの準備してあるから、用意するね」


 冷蔵庫からペットボトルやら小皿やらを取り出すと、コンロの上に残してあった鍋にペットボトルの中身を注いで温め始める悟志。

 あらかじめ作っておいた、にゅうめん用のつゆだ。

 もうそろそろ沸騰するかな、といったタイミングで火を弱めて、そこに茹でておいたそうめんを入れ、温める。

 一分くらい温めたら器に移して、かまぼこをのせて完成だ。


「はいよ、にゅうめん」


「わーい! 私、これも好き!」


「そんなに多くないから晩ごはんもちゃんと食べれそう!」


「「いただきまーす」」


 器を座敷に持っていき、二人に食べさせる。

 その様子を見ていた夏目が戻ってきた悟志にこう言った。


「なんか今の神代君お父さんみたいやったで。面倒見よかったんやな」


「まだ旦那さんにもなってないけどね?!」


「ええやんええやん、細かいこと気にせんとき」


「細かくないけど?!」

 

 ボケとツッコミのようにテンポよく話す二人。

 話し疲れたのか、ふっと静かになる瞬間。

 水を一口飲んでスマホをちらりと見る夏目。

 表示された時間で何か思い出したのか、少し慌てた様子で立ち上がる。


「あかん、ちょっとゆっくりしすぎた。私行くわ。神代君ご馳走様! また来るね!」


「うん、今度はもうちょっと暇だった時に来て~」


「それは約束できん。ほんまありがとうな。神代君……生きろよ」


 軽く手を振って、店から出ていく夏目。

 それを見送った悟志は皿を片付け、洗う。

 次はいつ来るだろう、そんなことを考えながら。





 夏目の初来店が十一月の頭で、そこから二回ほどやってきた。

 会うたびにだんだんと痩せているようで、心配だった。

 そして、帰り際には必ず生きろよ、と声をかけていく。

 そんなに疲れた顔をしているのだろうか。

 三人娘に聞いてもいつも通り、としか言われない。

 不思議に思いながら日々を過ごす。

 いよいよクリスマスを間近に控えたある日。

 営業を終えて、ゴン太の散歩をしていた悟志は、道端にうずくまる人の姿を見つける。

 慌てて駆け寄ると、うずくまった人は夏目だった。


「大丈夫ですか!? ……って夏目さん?」


「……かみ、しろ……くん?」


「と、とにかくうちで休めばいい。歩けそう?」


「ちょっと、きびしいかも」


『術で寝かせて俺が運ぶか?』


 ゴン太が頭に直接語り掛けてくるが、もし誰かに見られたらとんでもないことになる。

 だから悟志は


「ごめんよ、夏目さん」


 と声をかけて夏目の身体を背負って家まで戻るのであった。

 今日に限って、三人娘はおらず悟志一人。

 座敷に寝かせると、井戸から水を汲んで沸かし始める。

 大したことない不調だったとしても、もしかしたら大きな病気なのかもしれないけど。

 かつて自分を救ってくれた人だから。

 見てないようで、ちゃんと見てくれてた。

 普段はほっといてくれるくせに、辛いとき、悲しいときにはふらっと現れて声をかけてくれた。

 彼女がいなかったら終わらせていたと思う、何もかもを。

 だから、普段は絶対口に出さないけど「いい女」の彼女にできることはしたい。

 人間、身体が大事。どんなケガも病気も、なかったことにできるのが自分の強みだから。

 井戸水を沸かしながら、その視線はずっと夏目に向いていた。

 井戸水を沸かすのに使ったやかんが沸騰したことを教える、ピーっという音。

 コンロの火を止めると、その音が目覚まし代わりになったのか、夏目が目を覚ました。


「……あれ、ここは? 知らない、天井や」


「体調悪いのにネタに走らんでも」


「あれ? 神代君? なんで?」


「え、覚えてない? 道でうずくまってたからとりあえずうちで休んでもらおうと思って」


「そっか……、ごめんね」


 そうして夏目が語り出したのは自身の病気のこと。

 神代亭に初めて来たあの日、ずっと続く体調不良で病院に行った時のこと。

 検査結果を受けて、自身の病気を知った。

 薬で多少症状は抑えられたとしても、その副作用も身体を蝕む。

 病気で死ぬか、副作用で死ぬか、その前に奇跡的に治るか。

 医者にそう告げられた。

 ショックだった時にふと目に入った神代亭。

 何故か惹かれて入った。

 なかったはずの食欲が少し戻り、不思議と神代亭のごはんはちゃんと食べられた。

 だから、限界の時は神代亭でご飯を食べた。

 だから、私みたいな病気にならずに生きてほしい、と毎回生きろよって言うことで自分もまたここに来るために生きようと奮い立たせた。

 明日、検査があってその結果が悪ければもう手の施しようがない。

 そんな不安感がたぶん表面に出てきたんだ。


 そこまで聞いたところで、悟志は少し冷めた井戸水を差し出す。

 あったかい、そう呟きながら夏目は一口すする。

 そんな彼女に悟志は穏やかに言う。


「そっか、大変だったね。でも、きっと大丈夫だよ。絶対良くなってる。ちゃんと医者の言いつけ守ってるんでしょ? だったら、例えば今が百として九十五くらいにはなってるって。自分が自分を信じなきゃ。諦めたらダメだよ。もしかしたら完治してるかもしれない、それくらい思ったっていいよ」


「でも、私めっちゃ不安やねん」


「ま、そうだよね。俺がそう言ったところで不安は消えないと思う。でも奇跡ってあるから。俺は夏目さんが治る奇跡に賭ける。それだけ」


 その後、悟志が呼んだタクシーに乗って夏目は帰っていった。





「……え?」


「信じられませんが、あれだけひどかった病巣がまるで何もなかったかのように消えています。血液検査の数値も完全に正常の範囲です。医学的にはあり得ない。あり得ないですけど、実際に起きた。奇跡です」


 眠れない夜を過ごした夏目は、自身の命運を決める検査を受ける。

 皮肉なことに今日はクリスマスイブ。

 いいプレゼントがもらえますように。

 永遠にも似た長い時間を経て、医師から出た結果は想像以上だった。


「な、治った……ってことでいいんですか?」


「……そうなりますね」


 途端に湧き上がる喜び。

 病院の精算を済ませて、急いで向かう場所。

 現在時刻は十三時、急げば間に合う。

 夏目の完治を祝うかのように、電車もバスもタクシーも全ての交通機関がタイミングよく捕まる。

 そして勢いよく扉を開けた。


「神代君!」


「……いらっしゃい。めっちゃ元気じゃん」


 全て知っているかのような悟志の態度。

 ちょっと腹立つ。でも、許す。


「私! 治ったんだって! めっちゃ! 元気! お腹すいた!」


「そっかそっか、じゃあお祝いにたっけぇ肉でもご馳走しますかね」


「なあ、神代君がなんかした?」


 もしかして、と実際そんなことはないとわかっているのに聞いてしまう夏目。

 そんな夏目に悟志はとぼけてこう答える。


「さあね。でも、聖なる日だからこんなことがあってもいいじゃない」

次回は27日か28日。大晦日。

あと2回更新するのを目標にします。

週末飛ばしても大晦日は更新します!

年越しそばネタは絶対にやるんや!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ