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男飯食堂、神代亭へようこそ!  作者: 一之瀬 葵翔


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12/20

今日のおやつは変わり種

#あおとめし

#神代亭へようこそ第○○話

とXで検索すると作中に登場した料理を実際に作ったものの写真が見れますので、よかったら是非。

ほんまクッ〇ング〇パみたいなことしてますね笑

「悟志さん、何作ってるんですか?」


 いつもの営業を終え、普段なら厨房の片付けをしているはずの悟志がまだ何をしようとしている。

 それに気付いた乃亜はコンロの前に立つ悟志に声をかけた。


「ああ、この前さ。日ノ元ハムの会長さんに井戸水沸かして持ってったじゃん? うちの商品ならなんでも一年無料にするから好きな時に電話してくれ、すぐ届ける。って言ってくれたから、たっけぇハムとウィンナーを頼んだのよ。そしたら思ってた倍届いてさ。使いきれないからちょっと今日は変わり種を、と思って」


「変わり種?」


 乃亜はちょうど片付けの終わった客席から厨房の中に入り、悟志の手元を見る。

 調理台の上にはボウルと、一口サイズに切られてつまようじが刺さったウィンナー。

 一体何を作るんだろう?

 そう思っていると悟志が笑いながらこう言った。


「ホットケーキミックスもちょっと残ってたし、自分で作るのは初めてだけどやってみようと思ってさ。アメリカンドッグ」


 アメリカンドッグ。コンビニで見かけるあれ。

 まさか作れるなんて! と驚く乃亜。

 コンロをよく見ると、揚げ物用の鍋。

 最近、会えていない友人に差し入れとして持っていくにはいいかも!

 なんて思った乃亜は悟志にお願いをする。


「悟志さん、これの作り方教わってもいいですか?」


「もぉちろんいいよぉ。じゃあ、手を洗っておいで。一緒に作ろう」


「はい!」


 いそいそと手を洗って悟志の横に立つ乃亜。

 準備ができたのを見ると、早速悟志は説明を始めた。


「ゆーて作り方って簡単なんだ。ホットケーキミックスを水が牛乳で溶いて、よく混ぜて生地を作るでしょ? で、切ったウィンナーにつまようじ刺して、生地をつけて、低めの油で揚げていくと」


 そう言いながらひとつ鍋に入れて見せる悟志。

 私も私も、と乃亜も挑戦してみるが……。


「えっ、生地が垂れちゃう! どうしよ!」


 やってみるとこれが意外と難しい。

 量が少ないと不格好で、多くても垂れたり形が崩れたり。

 初めての揚げ物、ハヤシライスとは違って難易度が高い。

 悟志も悟志で綺麗に生地を付けられているわけではないが、それでも今の乃亜よりはうまくやっている。


「生地に軽く沈めるくらいにしてさ、すぐに持ち上げて。そんでコマみたいにくるって回してみな?」


「こう、ですか?」


 悟志の言う通りにやってみると、なんとなくうまくいく。

 じゅう~っと揚がる音が厨房に響くと、なんだか楽しくなってくる乃亜。

 菜箸でころころと転がして、満遍なく火が通るようにしているとできあがるアメリカンドッグ。


「うわ、ほんとにできた……!」


「ほれ、熱いうちに食べてみ」


 揚げたてのそれを食べるように促され、目についたものを一つ手に取って口に入れる乃亜。


「いただきまーす……あつっ!」


「はっはっは、揚げたてのものがぬるいわけないじゃないか」


 パリッといい音で弾けるウィンナー。

 そこからあふれた肉汁の熱さに思わず声が出てしまう。

 

「あ、でもおいしい。なんだろ、生地が甘いんだけどウィンナーの塩気がちょうどよくてハマりそう」


「これヤバいよね~、あっという間になくなっちゃう」


 乃亜に代わって次々と揚げていく悟志。

 肉汁によってできた口の中の火傷を井戸水で癒すと、つい二つ目に手が伸びる。

 ふうふうと息を吹きかけ、冷ましてぱくり。

 小難しい工程があるのかと思えば、手軽にできる。

 これなら私にもできそうだ。またみんなにこの世界の美味しいものをふるまえる。

 そう思うと笑顔がこぼれる。


「すっごくいい匂いするけど、今日のおやつってこれ?」


 乃亜がおやつをつまんでいるとゴン太の散歩から帰ってくる来栖。

 ゴン太の散歩は一日に二回、もしくは三回。

 朝、悟志が起きて桃叶と自分の朝食を作った後に行くのと、営業後、夕食までのどこかの時間に行く二回。

 あとはたまに誰かが夜コンビニなどへ向かう時に一緒に連れていく三回目があるのだが、それは週に一度あるかどうか。

 夜はゴン太の気分次第。

 悟志が行くぞと言えばよほど疲れていなければ喜んでついていくが、三人娘の誘いには気分が乗らなければ断る。

 そんな神代亭の日課、それを済ませた来栖に悟志はねぎらいの言葉と共に皿を差し出す。


「来栖ちゃん、おかえり。散歩ありがとね。そうそう、アメリカンドッグを一口サイズにして作ってみたんだ」


「へー、悟志くん意外とこういうのもできるんだ~」


「昔ばあちゃんが作ってくれてさ。自分で作るのは初めてだったけど、うまくできてよかった。あ、乃亜ちゃんもあとはやっとくからこれ座敷に持ってっておやつにしなよ」


「ありがとうございまぁす!」


 二人は皿を持って座敷へと上がる。

 座敷の机、つい先日導入されたこたつに足を入れると顔がほころぶ。


「あったかぁ~」


「ねー! こんなあったかいのなんて封印されてたら知らないまんまだった」


「私もたぶん神界で働いてたらわかんなかったと思う! 異世界だし」


「それじゃあ手を合わせてください、いただきます」


「いただきます」


 今日は来栖が挨拶当番。いただきます、とちゃんと言ってから二人そろって一口。


「ん! これおいしい! さくっとしたところ好き!」


「ね! さっき味見で食べた時私も思った! でもさ、私たちここに来てから毎日おいしいごはん食べてない?」


「そう! そうなの! 昔に比べて色々なものがあるし、悟志くんのごはんってあったかいから食べすぎちゃう」


「ゴン太様の散歩ってけっこういい運動になるから、太らないためにも積極的にやってかないとね」


 ここに来れてよかったね~。

 なんて話しながらおやつを食べる二人。

 食べ終わったころに帰ってきた桃叶に


「二人ともずるいです! 神代さん、ももにもアメリカンドッグ作ってください! 今すぐ!」


 とせがまれると悟志は仕方ないなぁと再び厨房へ。

 犬のようにその後ろにひっついて、悟志が作る光景を見ている桃叶。

 じゅうじゅうと揚がる音がまた響く。


「ほら、できたよ。晩ごはん前だし、ちょっとだけね」


「ありがとうございます! いただきまーす! ……あっつ!」


 さっき自分もやったなぁ、なんて思いながら厨房へと向かう乃亜。

 冷蔵庫の扉を開けて、ペットボトルに移された井戸水をコップに注ぐと桃叶へ渡す。


「ほら、もも。お水飲んで」


「ありがとです、のあさん」


 ぐっとコップの水を飲み干すと、身体に起きた変化に気付く桃叶。


「のあさん、これ井戸のお水ですよね?! なんてもったいない!」


「えー、だって口の中ひりひりするじゃん。たまにはいいって。ねぇ、悟志さん」


 悟志に同意を求める乃亜。それに対して悟志は真面目な顔でこう答えた。


「……俺は二日酔いの時によく飲む。井戸の水を沸かして温かくしたのはいいぞ」


「井戸のお水ってすっごいんですよ?! なんでそんな理由で飲んじゃうんですかぁ~!」


「いや、ほら自分とこの水だから無料だし。あの頭痛と吐き気はホント地獄だからさ。一回沸かしてそれで紅茶飲むとすぐに楽になるんだよ」


「ちょっとー! もしかして今日の朝も二日酔いだったんですか? これだから大人ってやつは!」


 悟志の衝撃の告白。

 確かにそうだ、どれだけすごい効果のあるもので、対外的には計り知れないほどの価値があるものだとしても。

 自分の所有物なら好きに使っても問題ない。

 少し呆れる乃亜とツッコまずにはいられない桃叶。

 それを見ていた来栖はというと


「……この前お風呂長く入りすぎてちょっとのぼせた時に飲んじゃったんだよね~。ももは怒るかもだけど、悟志くんも似たようなことやってるならいっか」


 とぽそっと呟く。

 今日も平和な神代家なのであった。





 あれからぷりぷり怒る桃叶をなだめて夕食を済ませ、来栖は風呂へ。

 桃叶は自室で宿題を。悟志は明日のごはんセットや定食に付ける汁物の下ごしらえ。

 ゴン太は座敷に入って悟志と寝るのを待つ。

 本日の夕食はチャーハン。


「これって……、とんこつラーメンに入れたりするやつですよね?」


「そうそう、高菜ね。美味そうだったから作ってみたんだ、高菜チャーハン」


 なんて乃亜と悟志のやり取りの傍ら


「砂肝おいしい!」


「こりこりです!」


 と付け合わせの砂肝を焼いて、塩コショウで味付けしたものに喜ぶ来栖と桃叶。

 桃叶がめざとく


「あっ、神代さんだけ高菜が別添えになってますし、砂肝も一緒のお皿に盛ってます! ずるい!」


 と悟志の分だけ自分たちと違うことに気付いて指摘すると


「間違えてチャーハン作る時に塩コショウ振ったから高菜入れたくなかったの! ある意味では失敗したやつなの!」


 と悟志が返す。

 やはり賑やかな、しかしどこかで桃叶が憧れていた光景。

 幾度繰り返したかわからないありふれた日常。

 このあとはみんな風呂に入って、思い思いの時間を過ごして寝るだけなのだが。

 乃亜は早速自分でアメリカンドッグを作って、友人の元へ向かおうとしていた。


「じゃあ、私ちょっと行ってきますね!」


「お~、いってらっさい。気を付けるんだよ? 今日はあっちに泊まってく?」


「これ置いて、ちょっと話したら戻ってくるんでこっちで寝ます!」


 そう言って、裏口の扉を開けて外に出ていく。

 流石にこの時間なら家にいるはずだ。

 いきなり会いに行ったら彼女はどんな顔をするのだろうか。

 わくわくしながらいつものように元居た世界へ渡る乃亜だった。

次回更新はできたら23日にします。

そして来週29日、30日の更新はお休みです。


すいません、なろうで更新している別作品

「親戚の再婚で増えた身内が推してるアイドルだった件2~片翼のfallen angel~」

の朗読会を西川口GALAXYで29日に開催する兼ね合いでちょっと難しいです。


こちらの朗読会、詳細は一之瀬工房のXにあるので興味ある方はぜひお越しください。

プロの声優さんを間近に見れて、お話しできるチャンスです!

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