Chapter5 -end-
急展開ですが、最終話です。
全てを忘れて、生きていければいいのに。
今度は、穏やかに出会いたい。
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(有也サイド)
事故があってすぐ、オレは優美の運ばれた病院に向かった。
待合室には、連絡を受けて来たらしい久美サンと、彼女を支えるようにして立っている剣治センパイがいた。優美の両親の姿はなかった。二人は、オレの姿を見つけると、顔をしかめた。
「あたしが、あんな事言ったから・・・!だから優美は・・・っ!」
そう言って久美サンは泣き崩れた。優美の手術中のランプは消えない。
「久美のせいじゃない。事故だったんだ。・・・それに俺だって、優美のことを結局は、信じれなかった。あいつに酷いことを言って傷つけた。」
二人は優美に言ったことを後悔しているみたいだった。・・・結局は、三人の絆は簡単には壊せなかったってことか。
「・・・ねぇ有也。」
泣きやみだした久美サンがオレに話しかけた。
「本当は、最初から優美のことが好きだったの?私と付き合う前から。」
「・・・半年くらい前、久美サンたちが屋上で話していたのを見たんだ。オレは、あんたたち三人の絆って奴を壊してみたかった。壊したら、あんたたちに向けられてた優美チャンの笑顔がどんな表情に変わるか見てみたかったんだ。・・・でも、心の奥では違った。優美の笑顔を、オレにも向けて欲しいってずっと思ってたんだ。」
そこまで話したら、自然と涙が出てきた。このまま優美がいなくなったら、本当の事も伝えられない。
「・・・最低だなお前は。でも、お前の策にまんまとはまった俺達も情けねぇ。」
「・・・ゴメン。久美サン。」
「もういいよ。騙されたあたしも馬鹿だったわ。それに、優美に言ったことは、私がずっと心の中で思っていたことだった。・・・優美が目が覚めたら、あの子ともっと話したいな。私や剣治に対する思いも全て。」
その時、手術室のランプが消えて、医者が現れた。
「先生!優美は大丈夫なんですか!?」
「遠野優美さんのご家族の方ですか。・・・大丈夫ですよ。全身を強く打っていて、一時は危ないところでしたが、一命は取り留めました。じきに意識も戻るでしょう。」
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事故から数日。まだ目覚めない様子の優美のお見舞いに行く。医者は、なにか精神的なショックで目覚めないのかもしれないと言った。
(はやく、はやくオレを見て。目を覚ませよ。)
そう思っていると、久美サンたち二人が現れた。二人は、いまだ付かず離れずの関係のようだった。
「有也くん・・・。来てたんだね。」
「お前がいるから、目覚めないんじゃないのか?」
否定できないのが悲しかった。
その時、
「・・・ここどこ?」
振り向くと、まだぼんやりとした優美が、こちらを見ていた。
「「「優美!!」」」
「お姉ちゃん・・・?それに・・・剣治?」
「もう!本当に心配したんだからっ!」
そう言って、久美サンは優美に抱きついた。
「私・・・一体・・・。」
「お前、事故に遭ったんだよ。覚えてないのか?」
「・・・事故?」
オレは、意を決して口を開いた。
「ホントにびっくりしたよ。優美チャン。」
そう言ったオレのことを、優美はきょとりと見つめた。
「あなたは、誰ですか・・・?」
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どうやら、医者の話によると、優美は、この数週間の記憶が無くなっているらしい。つまり、オレと出会ってからの思い出全てだ。だから、いまだ剣治センパイと付き合ってると思っている。
当然の報いのような気もした。オレが彼女を追いつめたようなものなのだから。けれど、簡単には諦めきれない。どうしても、彼女がオレの傍にいてほしいんだ。
だから、今日も病室へ行く。あの時、間違えたオレの行いを正すように。
「調子はどう?優美チャン。」
「あぁ、有也くんか・・・。」
名前で呼ばれるようになったのも、記憶が失われてからだった。
「どうかした?」
「さっきね、姉さんと剣治が来てて、三人で色々話してたの。・・・本当に、色々ね。剣治が中学の時から姉さんが好きだったとか、姉さんが私との関係に不安を抱えてたとか。私が、姉さんに実は嫉妬してたし、コンプレックス抱えてたこととかね。なんだか、赤裸々に話合ったら、スッキリしちゃった。・・・剣治から別れてほしいことも、言われたけど、素直に受け止められてね。」
「・・・そう。それはよかったね。」
「だけどね、二人がおかしな事言うの。こんな風に話合えたのは、ある意味アイツのおかげだって。アイツが誰か聞いても、はぐらかされちゃって。・・・一体誰なんだろうね?有也くんに言ってもしょうがないか。」
「そうだね。オレには分かんないなぁ。」
二人が優美にそう話したのは意外な気がした。てっきり、オレのことを悪く言うだけかと思ったのに。
結局、二人はお人よしなんだろう。まぁ、優美に嫌なことを思いだして欲しくないだけかもしれないけど。
「そういえば、記憶は戻りそう?」
「どうかな。なんだかね、うっすら甦る記憶はあるの。屋上で誰かと話してたり、今までにないくらい怒ってたり。全部同じ人に対してなんだけど、姿がおぼろげで。・・・有也くんとは、その記憶がなかった時に知り合いになったんだよね?なにか知らない?」
「さぁ、知らナイなぁ。・・・でもさ、いいじゃん。思い出せないってことは、そんなに重要なことじゃないんだよ。きっと。」
最初は、思い出してほしいと思ってた。けど今は、できれば思い出してほしくなかった。今更ながらにも気付いたんだ。思い出せば、きっと優美はオレのことを避けて嫌うだろうから。それだけは、嫌だったんだ。
「うん・・・。そうなのかな。」
「深く考えすぎないほうがいいよ。」
「そうだね。・・・でも、有也くんとの出会いも覚えてないのは残念だなぁ。こんなイケメンくんと友達になるなんて信じられないから。」
「・・・友達?」
「うん。・・・もしかして、そう思ってたの私だけだった?だって、毎日お見舞いに来てくれて、仲良くなったのに、もう知り合いってだけじゃあないじゃない。・・・違った?」
「・・・本当は友達以上がいいんだけど?」
「もう!からかわないでよ。」
そう言って、優美はくすくす笑う。あの時、どんなにも見たかった、あの笑顔だった。
オレは、優美の信用を得たんだ。友達・・・そうだ最初から、真正面から向き合えばよかったんだ。
「ゴメンネ・・・。傷つけて。・・・好きだよ。」
小さくつぶやいた言葉は、優美には聞こえなかったようだった。
「じゃあ、改めて、友達としてヨロシク?優美チャン。」
「・・・うん!ヨロシクね、有也くん。」
そう言って、また笑う優美を見て、今度は間違わないようにと誓う。そして、もう二度と、彼女を傷つけないと。・・・きっと、好きだって言わせてみせるよ。
「覚悟しといてね、優美チャン。」
そう言って、有也は、爽やかに笑った。あの狂気じみた笑顔ではなく、本当に純粋な笑顔で。
そして、また明日と言って、病室を出ていった。
病室には、優美だけが残される。
「・・・今の笑顔に免じて、全部水に流してあげるよ、有也くん。・・・さて、そろそろ姉さんたちが来るかな。」
そう呟いた優美の顔は、すっきりとしていて、おだやかだった。
「優美ー!お姉ちゃんが来たよー!!」
「病室なんだから、もう少し、静かにしろよ久美。」
「来てくれたんだね、二人とも。」
「どう?具合は。・・・有也くんは、また来てたの?」
「うん。私が友達だって言ったら、すごく驚いてた。・・・すごく嬉しそうにしてたし。まるで別人。」
「まぁ、すごく後悔してたみたいだしな。恋で変わるってやつか?」
「どうだかねぇ。でも性格も、穏やかになったみたいだしね。チャラチャラした感じもしないし。」
「・・・笑った顔がね、私が見せられてたような歪んだ笑顔じゃなくて、本当に純粋な笑顔だったの。」
「それで、許してあげようって?」
「ある意味、私と姉さんたちの関係を見つめなおすキッカケをくれた気もするし。・・・簡単には許したくないけど。でもまぁ、記憶が戻ってない振りをしといて、有也くんに罪悪感を思い存分植え付けてるし、もういいかなって。もうしばらくは、その振りを続けるけど。」
「優美もたいがいお人よしだな。」
「・・・そうかな。事故に遭ったときにね、有也くんが追いかけてきたんだ。一瞬目が合ったんだけど、その時の、切ない表情した有也くんの顔が忘れられなくて。・・・あぁ、嫌われてるわけじゃなかったのかな?って。そう思ったら、なんだか憎めなくなっちゃった。」
「「むしろ、大好きだったみいたいだしね(な)。」」
「もう!二人とも!」
そう言い合って、三人は笑い合った。穏やかな風が病室を吹き抜ける。
これからのことなんて分からない。けれど、今度の奏でる物語では、穏やかな四重奏を。
なんとか完結いたしました。
初めて書いた連載小説で、展開もいきあたりばったりになってしまいましたが、最後まで書けてよかったです。
コンセプトはヤンデレな人を書こう!だったんですが、力不足で、上手に描写できなかったのが、残念です。しかも、Quintet(五重奏)のタイトルなのに、五角ではなく四角関係・・・。ゴロで選んだのがそもそもの間違いでした。タイトル表現も含めて、もっと精進したいと思います。
なにはともあれ、読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。
お気に入り登録をしてくださっている方も、本当にありがとうございます。とても励みになりました!
これからも、色々と書いていきたいと思いますので、気が向いたら、他の作品も読んでくださると嬉しいです。
今更ですが、作中にて誤字脱字などがありましたら、お気軽にご指摘ください。




