Chapter3
有也の話。
印象的だったあの眼差しをオレにも向けて欲しかったんだ。
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(有也SIDE)
遠野優美という名前は、オレたちの高校では、ある意味有名だった。学校一の美少女で有名な、遠野久美の似てない妹で、学校の王子なんて呼ばれてる東堂剣治の幼なじみとしてだ。しかも、二人に釣り合わないなんて、両方のファンからイジメを受けているという事実は、学校に居るものであれば、誰もが知っていることだった。
けれど、オレはあまり優美に興味はなかった。というよりも、綺麗でもなんでもない女を気にかける気もなかったんだ。
屋上で、優美が二人に向けている表情|を見るまでは。
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その日、授業をさぼって屋上で寝ていたら、いつのまにか放課後になってしまったようで、オレは寝起きでボーッと夕日を眺めていた。そんな時、屋上の扉が開いたから、オレは咄嗟に貯水タンクの裏に隠れた。
入ってきたのは、学校で有名な三人組・遠野優美たちだった。どうゆうわけか地味な妹の遠野優美と、東堂剣治が付き合うことになったらしく、姉である久美が、
「良かったわね優美。おめでとう!あたしは二人が付き合うことになって嬉しいよ!!」
と言っている声が聞こえた。そして、
「ありがとう姉さん。・・・私、二人といれるだけで本当に幸せよ。」
#その声が、あまりに優しく甘い響きを持っていて、オレはそんな発言をした優美の顔を見たくなり、貯水タンクの陰から顔を出した。
そこには、とても綺麗な笑みを浮かべて、幸せそうにしている優美の顔がみえた。オレが一瞬見とれてしまうような、本当に綺麗な表情だった。
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今、オレの前には、恐怖の色を隠しきれず怯えている優美がいる。
「どうして・・・それを・・・」
実際、オレの広い情報網を駆使すれば、簡単だった。似てない姉妹なんて、噂の種になりやすい話題だ。それに、警察庁の高官である父親の権力を使えば、いくらでも情報は手に入った。
「言ったでしょ、人が歪んで堕ちるのを見るのが好きだって。・・・キミのことなら、なんでも知ってるんだよ?」
それは本当のことだ。オレは、興味を惹かれたものが壊れる瞬間が好きだ。特に綺麗なものが歪み壊れる瞬間が。そんな歪んだ人間なのだ。だからこそ、優美たちに近付いたんだ。あの日見た、綺麗で幸せな三人の関係を崩すために。・・・なにより、あの綺麗に笑っていた優美が歪む所を見るために。
あの日から、オレは優美を観るようになった。というよりも、自然と目で追うようになった。観察して分かったのは、優美には、少ないながらも、二人以外に友人がいること、そしてファンクラブを名乗る奴らからどんなに酷いイジメを受けても、決して泣かないこと、なにより、二人に見せていたような笑顔を見せないことだった。
決して表情を変えなかった優美が、今、顔を歪めて泣きそうになっている。そんな表情が、ずっと見たかったハズなのに、心は満たされなかった。あの日みた、優美の笑顔が見たいと思った。
この時、自分の本当の気持ちに気付けていれば、事態は変わっていたかもしれない。




