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Chapter2

屋上での狂気。





主人公の過去の描写にて、一部残酷な表現があります。ご了承下さい。

屋上で見た君の顔は、妖しく歪んでいた。


******

 三國有也と会った次の日、早くも事態は動いた。昼休みに剣治に呼び出された私は、思いつめたような表情の彼にまず驚いた。

「話ってなに?」


「あのさ・・・別れてほしいんだ。昨日の久美とアイツのやりとりで思い知った。・・・俺は、本当は今でも久美が好きなんだって。」


「今でも??どういうこと・・・」


「中学の時に、一度久美に告白して、振られてんだよ、俺。幼馴染としてしか見れないって。それから、もっと優美のことも気にかけて欲しいってさ。アイツ、あの頃からお前の気持ちが分かってたんだ。」


私は、剣治の話に驚いた。私たち三人は、中学の頃だって、今と同じく、学年が違っても仲良く三人で居ることが多かった。・・・なのに姉さんと剣治との間にそんな事があったなんて。しかも、剣治の言い方からしたら、


「私には、お情けで告白したってこと?」


「・・・そういうんじゃないよ。お前のことを前より気にかけるようになって、好きになれるんじゃないかって思えたから告白したんだ。実際、アイツと久美が付き合うって聞くまでは、お前と上手くやっていけるって思えてたんだ。でも・・・ごめん。」


 そう言って、剣治は一方的に屋上から去っていってしまった。

 私は、静かに泣いた。剣治に振られたことも悲しかったけど、それ以上に、姉さんと剣治の間に私への隠し事があったことがショックだった。三人の間には、壁なんてないものだと思っていたのに。

それもこれも、あの三國有也と会ったからだ。アイツが姉さんと付き合わなければ、今でも私は剣治と付き合ってたかもしれないのに・・・。


その時、屋上の扉が開いた。入ってきたのは、


「あれぇ、優美チャンじゃん。やっぱり剣治センパイに振られちゃった?」


元凶である三國有也だった。


「アンタ、これを予想してたの?」


「・・・だって、まるわかりだったデショ。王子様が本当はお姫様をすきなことぐらい。気付けてないのは鈍い従者の優美チャンだけ。周りだって、まさかキミと剣治のセンパイが付き合ってるなんて思ってなかったみたいだしね?」


「・・・確かに、私は学校のみんなからは、剣治の彼女だって認められてなかった。二人の仲の邪魔するなって何回も呼び出されて言われたわ。けど、姉さんは私たちを祝福してくれてたし、剣治だって・・・。全部アンタのせいよ!!」


「口が悪いなぁ、優美チャン。俺はただのキッカケにすぎないよ。いずれキミとセンパイは別れてたさ。」


そう言って、三國有也は、口を歪めて笑った。


「ホント、久美サンと付き合ったのは正解だったな。いつもいじめられても大人しく耐えて反論もしない優美チャンの怒ったとこも見られたし。」


「・・・あなたは、なにがしたいの?その口ぶりじゃあ、姉さんのことが好きなわけでもなさそうだし。」


「俺はねぇ、人が歪むとこを見るのが大好きなんだ。嫉妬に狂ったり、追いつめられて心が歪んだりする瞬間がね。」


「最低。その本性を姉さんに言ってやる・・・!」


そう私が言うと、有也は私に嘲笑いながら囁いた。


「キミだって、秘密持ってるじゃないか。・・・実は、久美サンとは異父姉妹だって。キミの父親は、久美サンの母親を襲ったレイプ魔だもんね?」


「なんで・・・それを・・・」


「言ったでしょ、人が歪んで堕ちるのを見るのが好きだって。・・・キミのことなら、なんでも知ってるんだよ?」


私は、そう言って歪んだ笑みをみせる目の前の男が怖くなった。

そこには、昨日、初めて会った時のような陽気な雰囲気は存在していなかった。


******

 

正直いって、私はあの二人に依存しているところがある。私の両親は、昔から姉さんばかりにかまっていて、私のことは気にかけなかった。姉さんに比べて鈍くさくて地味で暗い子だと、非難されるばかりだった。その理由は長い間分からなかったけれど、中学にあがってすぐ、たまたま両親が二人で話している会話の内容が聞こえてきたのだ。いわく、


“優美は、レイプ魔との間にできた望まれぬ子供”


であったのだと。

 その事実を聞いてからは、私は両親に好かれようと努力することをやめた。両親が嫌うのはしょうがないことだと思えたからだ。その代わりに、事実を知らない姉や剣治と、より一緒にいることが多くなった。私は、まだ私を好いてくれる人が身近にいることを実感したかったんだ。




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