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5話:戦闘奴隷ソティラス

「ソティラスって、具体的にどう揃えていくの?」

「奴隷の子供たちから、候補を見つけ出すのじゃ」

「奴隷…」


 嫌悪感を滲ませるカエの言い方に、カルリトスは鼻をヒクヒク動かした。


「ヴァルヨ・ハリータの力によって、ソティラスは特殊な力を備えた兵器となる」

「へ…兵器…」

「うむ。ソティラスとなった者は、己の寿命を一つ消費して、影から≪分身(トイネン)≫を生み出す」

「わお…」


(寿命を消費…命がけ過ぎる!)


「≪トイネン≫は本体が備える特性の力をふるって戦う」

「特性ってどんな?」

「大きく分けて5種類ある。剣士(ミエッカ)弓術士(ヨウスィ)銃器士(トゥリアセ)格闘士(ヌルッキ)魔法士(タイカ)じゃ」

「無理、ファンタジー単語で頭パンクしそう…覚えられません!」

「…まあ、後々覚えればよい」

「はーい」


 右から左、と顔に書いてあるカエを見て、カルリトスは小さく肩を落とした。


「ねえ老師(せんせい)、どうして候補は子供じゃないといけないの?」

「寿命を多く蓄えておるからじゃ」

「ああ…」


 寿命を消費して≪トイネン≫を出すからか、とカエは頷いた。


「≪トイネン≫が死ねば、また新たに作ることが出来る。しかし何度も消されれば、それだけ寿命が尽きるのが早くなる。だからソティラスは子供がいいんじゃ」


 カエは軽く胸の辺りを押さえる。


(良心が痛むなあ…)


「アルジェン王子と競うなら、≪トイネン≫同士の戦いとなる。≪トイネン≫が消されても、ソティラス本体は寿命を消費するだけで損傷はない。消されれば何度でも出すだけ、熾烈になればその数も増えようぞ」

「ううん…、なんか、寿命の削り合いみたいじゃん」

「エグさ爆発じゃ」

「気が重い…」


 カエは仰向けに寝転がった。両腕を左右に広げて、大きく息を吐きだした。


(誰かの命を消耗品みたいに使うなんて、──そんなの、絶対に慣れたくないな)


「まあそんなに気にせずともよい。奴隷は生まれた時から選択肢なぞ持たぬ存在じゃ」

「人間をそんな扱いするなんて、間違ってるよ!」


 思わずカエは叫んだ。


「さっきから使い捨てみたいな言い方して、おかしいよ? 奴隷ってなんで」

「ふむ、そなたのおった世界には、奴隷がおらんのかの?」


 カエは一瞬言葉に詰まった。


「この世界には、明確に身分制度が存在する。上から王族、貴族、士族、神官、平民、奴隷、移民・難民。奴隷にも種類があるが、タダ同然で酷使できる存在なのじゃ」

「反吐が出る」


 カエの記憶に、教室の隅で泣いていた、幼馴染の後ろ姿が浮かぶ。

 イジメを受けていた。

 気の小さかった彼女は、同級生から「便利な奴隷」と呼ばれていた。それに気づいたときにはもう、話しかけても笑わない子になっていた――その時の悔しさが、今でも胸に刺さっている。

 それをカルリトスに話すと、


「そうか…」


 一言呟き、カルリトスは髭を揺らした。


「そなたが忌んでも、この世界で奴隷とは、そう扱われる存在なのじゃ」


 幼子をあやすようにカルリトスは言った。


「ソティラスは感情や意志はあるが、従属的じゃな。寿命を削ってまで主人に尽くすのは奴隷の(さが)、認めずともよいが、割り切れ」

「……」


 カエは返事をしなかった。


(身分制度なんて、なければイイんだよ)

(そんなふうに人を見下す呼び方、やめてほしい)


 幼馴染の一件から、カエは差別に激しい嫌悪感を抱いていた。しかしカルリトスが言うように、今は割り切ってソティラスを揃えなくてはいけない。そのことも頭では判っている。

 心だけが、どうしても引っ掛かっていた。


「厳しいことを言うがの、そなたの気持ちはこの際どうでもいいんじゃ。アルジェン王子に勝って、目的を達成する。その為だけにそなたはここにおる」

「ああああっ! わーってる!」


 ヤケクソのように喚き、カエは起き上がってカルリトスを睨んだ。


「そなたが女王になれば、奴隷の問題にも手が届くじゃろ。それだけ強大な権力を手中に収めるということだからの」

「!」


 カエの目が大きく開く。

 超大国の女王になる。そうすれば奴隷をなくすことが、出来るかもしれない立場。


「容易くはない、茨の道じゃがの」


(それでも)


 目指す意味はある。


「バークティさんの道具だけじゃない、私自身の目的もしっかり立ったわ」


 カエはグッと両手の拳を握った。


「そうか。ならば、早速ソティラス選びに出かけるとするかの」

「おしゃっ! やってやんよ!」

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