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24話:通信戦線、火蓋を切る

「さすが武闘派の王だな、圧が凄すぎて声も出なかったぜ…」


 シャムは襟元を緩めながら、疲れたように大きく息を吐いた。


「よく震えず謁見できたじゃねえか」

「震えるって言うか、怖くて目を逸らすことも出来なかったっていうか…」


 カエはソファに沈み込む。


「あの目、絶対、毒殺したのがうちらだって、バレてんでしょ」

「だろうな。そしてもう一人、アイシュワリヤー妃のほうでも盛ったようだな」

「あー、やっぱそう? なんかあの人、メチャ反応してたもんね」


 大広間に顔をそろえた一堂は、揃って黙り込む。


「明日からの後継者の座争奪戦は、どちらかというと、公開処刑のようなものかもしれんの」


 そよそよと髭をそよがせ、カルリトスは神妙に言った。


「まさか、十二神将を差し向けてくるとは…」

老師(せんせい)、それって、チョー強いの?」

「チョー強い」

「げぇ…」


 カエとソティラスたちの顔が青ざめた。


「ボーディ・カマルが王となる以前から、選んでソティラスにしていた者たちで、己の能力を最大限まで磨き上げている」

「最古参、って感じなのかあ」

「1万もいるエセキアス・アラリコの中で、もっとも強く優れているソティラスで構成された、それが十二神将じゃ」


 あーあ、という空気が流れる中、アールシュが「ああ」と声を出す。


「十二神将の中に、ムスタ・ソティラスは含まれているのか?」

「いや、ソティラスのみじゃ」

「そうか。なら、我とセスは参加決定だな」

「おう」


 ゴツイ声でセスが応じる。


「残りは誰を選ぶの?」

「バランスを取って、ニシャには外れてもらう」

「えっ!?」


 ニシャはダミニの腕をギュッと掴んで、泣きそうな顔をアールシュに向けた。


「ニシャの攻撃系魔法の扱いは、まだ不十分だ。相手がアルジェン王子の≪トイネン≫ならまだしも、王の十二神将だ。今回は王女の傍に控えているといい」

「……はい…」


 しゅんっと項垂れて、ニシャは下がった。ダミニとカイラが慰める。


「ソティラス自身も戦わされるん?」

「おそらく、狙ってくるじゃろう」

「ぬう…。チーム戦っつーか、バトルロイヤルじゃんね」


(私の可愛いソティラスたちがっ)


 心の中で拳を震わせていた時、伝令の来訪が告げられた。


「なに?」

「アルジェン王子からの伝令でございます。ソーマ宮までお越しくださるようにとのことです」

「えー、ヤダよ、殺されちゃうかもしれないし」


 カエが口を尖らせたとき、バークティ妃が扇でカエを制した。


「ソーマ宮まで足を運ばずとも、テレビ通信があるわ。それを使います。そうお伝えしてきて」

「は、はい」


 召使いは急いで退室した。


「そういうとこ、デジタルだよねえ…」

「デジタル? 聞き慣れない単語ね。通信は魔法技術で行っているのよ」

「ナンデスト!!」


 カエは思わず跳び上がる。


「ラザネイトと言ってね、魔力を溜めてある特別な核を使って、通信したり車を動かしたりできるの。便利でしょう」

「便利…」


(異世界テクノロジーキマシタワー!!)

(謎は全て解けたし!)


「どうせ打ち合わに乗じて、王女を亡きものにし、不戦勝を狙うつもりだったかもしれないわね」


 バークティ妃は腕を組む。


「まさか、あのアイシュワリヤー妃がねえ…」


 妖艶な笑みを浮かべる口元に、ひっそりと皮肉を滲ませた。




 大広間に大型モニターが運び込まれ、カエとバークティ妃がその前に坐す。他の皆は通信カメラに映らない場所に控えた。

 時間になり、アルジェン王子とアイシュワリヤー妃がモニターに映された。


「さっきはどーも」

「おっつー」


 アルジェン王子もカエも、王族マナーも吹っ飛ばして素で挨拶をかわす。スニタが物凄い形相でカエを睨んだ。

 気づいているが、カエはあえて無視をする。


「予想外だったな。まさかチーム組まされて、エセキアス・アラリコと戦わされるとか」

「毒殺の件がバレバレだからでしょ。あんたらも一枚噛んでたとか、そっちのほうが予想外だったけど」

「お互い様だ」


 アルジェン王子は嘲笑した。


「ヴァルヨ・ハリータ持ちが3人もいんだぞ、しかも全員腹違い。玉座狙うならそんくらいするだろうさ」

「一応、血縁者同士だけどね…」


(なんかムカつくなあ、相変わらず。言い方? 神経逆撫でされるっつーか)


 カエは露骨に不機嫌そうに顔を歪めた。


「ハッ! 王族同士で血縁なんざ、関係ねーんだよ。()るか()られるか、構図は単純なんだ」

「あっそ…」

「十二神将なんざ関係ねえ、俺のソティラスが全部倒す! てめーのソティラスも血祭りだ!!」


 カエはバークティ妃を仰ぎ見る。


「血気盛んですことね」


 鉄扇で顔半分を隠し、バークティ妃は侮蔑を露わにした目をアイシュワリヤー妃に向ける。


「……好戦的になっているだけです」

「王子のそのご様子だと、協力体制は無理なようね? 好き勝手に動く、ということでいいのかしら?」

「マジ?」

「マジ」


 目を丸くするカエに、バークティ妃はニコっと笑みを深めた。


「そうしろ大年増!!」


 吠えるアルジェン王子を見るバークティ妃の顔から笑みが消えた。


「明日が本当に楽しみですこと。――そこのガキ、漏らしながら吠え面かくんじゃありませんことよ?」


(しぇええっ!! バークティさんがブチキレてるっ!)


 これにはカエのほか、室内全員が固まった。


「くっ、口を、お慎みなさいませバークティ妃!!」


 やや出遅れ気味だったアイシュワリヤー妃が叫んだ。


「うるせーんだよババア! テメーら覚悟しとけな!!」


 そうしてプッツリ通信は切れた。


「……アレでも王子様なわけ?? なんだか私のいた世界のがくせ…」


 学生みたいじゃん、と言いかけて口を閉じる。


(いや、まさかね…)


 真っ黒に染まったモニターを見つめ、カエは表情を曇らせた。

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