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23話:王との謁見

 荘厳で、しめやか──そんな言葉がふさわしい葬儀だった。


(……これはキツイ。悼む気持ちはあるけど、眠い……)


 カエは欠伸を噛み殺しつつ、離れたところにいるアルジェン王子を見る。退屈そうで似たような表情(かお)をしていた。

 こうしてラタ王女の葬儀は1週間続き、ついに王からの召喚状が、アンブロシア宮のカエの元に届いた。




 カエのほかに、一緒にウシャス宮殿に来た同行者全員を、連れていくことを許された。


「ふん、余裕ね…」


 バークティ妃は不機嫌そうに呟いた。


「落ち着け、バークティ」


 カルリトスに緩く窘められ、バークティ妃は小さく肩をすくめた。

 カエたちは南にあるスーリヤ宮に通された。

 ここは謁見の為の宮であり、華美な装飾が一段と強化された、眩いばかりの大広間が目の前に広がっていた。


「はは…もう、凄いってレベルじゃないね、これ」


「映画だってここまでやらないでしょ」とカエは薄く笑う。


「シャンティ王女殿下とバークティ妃は、こちらへ。お供の方々は、そちらに控えていてください」


 召使いに導かれ、カエとバークティ妃は玉座の前へと進む。


(先に来てたか、サイコパス野郎)


 すでに跪き、玉座に(こうべ)を垂れているアルジェン王子が居いた。その後ろにアイシュワリヤー妃が控えるように膝をついている。

 アルジェン王子は「チラッ」とカエを見たが、何も言わなかった。

 カエはアルジェン王子の隣に跪き、同じように頭を下げた。


(ムカつくアルジェンの顔見たら、緊張感いっぺんで吹っ飛んだわ)


 頭の中で思いっきり、アルジェン王子に向けて舌を出す。

 やがて、身体の芯にまで轟くような銅鑼が打ち鳴らされた。

 馥郁たる花の香りと、ターメリックの匂いが鼻を掠めていく。そして派手な楽器演奏に合わせ、美しい踊り子たちが、玉座の前を舞い踊った。


「顔を上げよ」


 いつの間にか玉座に座っていた王が、段の下に跪く2人の子供に声をかけた。

 カエは顔を上げて、玉座を仰ぎ見る。


(……なに、あの目……怖すぎる)


 虎視眈々と見下ろすそれは、意志を持って人間を見定める、獣のようだった。

 褐色の肌に一段と映える、エメラルドグリーンの瞳。

 室内の眩い光を弾いて、一層光を強くしている。しかしそれだけではなく、嬲るように見る蛇のように異質な眼光。


(丸呑みされそうな…)


 怯えて目を伏せたいと思うのに、カエの目は王から離すことが出来ない。


「ふふっ、王女も王子もおとなしいと聞いていたが、余の目を逸らさず見返すとは、良い」


(いやいや、逸らしたいけど動かないんだってば! 蛇に睨まれたアレってやつ!)


 カエは胸中で悲鳴を上げた。


「余には、子供が多くいる。だが、余の愛すべき子供は、ラタ王女だけである」


 王はカエから視線を外すと、虚空を見つめるように視線を漂わせた。


「聡明であり、機転が利き、判断力に富んだ。また優しく、民思い。生まれながらに王者の風格を持っていた」


 片手を伸ばし、そしてグッと握る。


「知っているか?」


 王はカエとアルジェンに目を向けた。


「ラタ王女は──毒殺されたのだ」


 カエとアルジェン王子の反応を見るように、王は視線を2人に差し向ける。


(知ってまーす…)


 声には出せない返答を、胸の中で呟く。


「2種類の毒が検出された」


 これにはカエよりも、後ろに控えるバークティ妃、そして、アイシュワリヤー妃が反応した。


(え? 2種類??)

(……さっきのアイシュワリヤー妃の微弱な反応って…もしかして…)


「余の愛する王女を毒殺するとはな。度し難い。許し難い行いぞ!!」


 王は肘掛けを強く叩いた。そして立ち上がる。


「余も王の一人として、後継者は定めておかねばならぬ。――幸い、条件を満たした子供が2人いる」


 玉座の置かれた段を降りてきて、王はカエとアルジェン王子の至近距離に屈んだ。


「明日から、余のエセキアス・アラリコの中でも、最強を誇る十二神将と、お前たちのソティラスは戦ってもらう」

「!?」


 カエとアルジェン王子は顔を見合わせた。


「2人とも6人ずつ選出せよ。合わせて12名のソティラス、そして≪分身(トイネン)≫が戦うチーム戦だ」

「しかしっ」


 アルジェン王子が声を上げた。


「どうした? 降参するのか?」

「アルジェンっ」


 慌ててアイシュワリヤー妃がアルジェン王子を窘めた。


「い…いえ…」


 堪えるように、アルジェン王子は声を振り絞って頭を下げた。


「お前たちの、どちらのソティラスと≪トイネン≫が多く生き残るか――それで、後継者を判断する」


 王は立ち上がり、段を上る。


「下がれ、用は済んだ」


 玉座に座り直し、王は感情の殺げた声で言い放った。

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