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2話:一等賞の代償が、ちょっと過酷すぎません…?

「一週間も眠っていて心配したのよ。元気そうで安心したわ」


 胸を撫で下ろすような仕草をして、バークティ妃は笑みを深めた。


「色々お話をしましょう。こちらへ来て」


 優雅に差し出されたバークティ妃の手を見て、カエは警戒した。しかしこの状況の答えが知りたくて、カエはゆっくりとその手を取った。




「さて、どこから話しましょうか」

「1から100まで全部お願いします!」


 一息に言って、しかしカエは「ハッ」となる。


「やっぱ、先に結論から教えて!」


 もし説明が長くなったら、答えが早々に気になってしまうと思い直した。


「おほほほ、面白い子ね。じゃあ、先に結論から言うわね」


 両手をパチンと合わせて、美しく微笑む。


「わたくしの――この王国に対する“復讐”の鍵となっていただくわ、シャンティとして」


 一瞬場が静まり返る。


「…ふく、しゅー?」


 カエはゆっくりまばたきした。

 頭の中に意味が入ってこない。


(何言ってんのこの人? 鍵とかって、私人間だよ――は?)


 あまりにも突飛過ぎて、カエの脳内は一瞬でカオスを極めた。

 さすがに答えを急ぎ過ぎた。

 そんなカエの表情(かお)を見て、バークティ妃は苦笑する。


「アドラシオン大陸に君臨するイリスアスール王国は、超巨大な王国なの。他国に攻め入り隷属させ、王族の王女たちを自らの(きさき)とした。わたくしはその一人で、ミラージェス王国の王女だったの」


 貼り付けたような笑顔が引っ込み、バークティ妃の美しい面には、冷たい色が浮かんだ。


「隷属された国はね、奴隷のように扱われて酷いものよ。尊厳も何も踏みにじられ、搾取され続ける」


 宝石に彩られた手が一瞬震え、ギュッと握られる。


「イリスアスール王国に対抗できる戦力を持たないわたくしの国が、再び独立するためには、わたくしが産んだ子供が玉座に就くこと」


 美しくも鋭いバークティ妃の目が、カエを突き刺すように見つめる。


(子供が王様になったら、祖国が独立できるんだ…)


「そうなれば、わたくしの国は独立し、友好国扱いになる。――恥辱に耐える日々から抜け出せる。そして祖国は、イリスアスール王国という後ろ盾を得られるわ」

「ちょ、ちょっと待って。あなたが産んだ子供が王様にならないといけないんでしょ? なんで私が」

「わたくしの娘、シャンティ王女は数ヵ月前に事故死してしまったのよ」


 カエは大きく目を見開いた。そして、恐る恐る自分の顔に手を這わす。

 一週間前味わった激痛、そして変わっている容姿。

 青ざめていくカエの顔を見て、バークティ妃はニヤリと笑む。


「そう、あなたをシャンティ王女の姿に整え、彼女の力も植え付けたのよ」

「か、改造したってこと!? 一体、どんな力を…」


 カエの暮らしていた世界では、アリエナイ髪の色。祖母に似ていると言われた面影は、片鱗もない程変わっている。

 そして、謎の力。

 ふと目の端に、たたまれた制服のポケットからのぞく紙切れが見えた。

 福引で引き当てた、一等賞の景品。

 クシャクシャになったハワイ行航空チケットが、この非現実を現実たらしめているようだった。


「ヴァルヨ・ハリータは、イリスアスール王国の王家、カルマ王家が代々継いでいる特殊な力の名称」

「カマル王家…」

「後継の座に就くためには、人格や賢明な点よりも、力の有無が全てなの」

「ふむ…」


 神妙に頷きつつ、つい、


(ヴァルヨ・ハリータ…ってなんか、人の名前みたい。ヴァルヨさんトコのハリータさん、みたいな)


 自分でツッコミを入れて、吹き出しそうになるのを堪えた。


「そんな力が、王様に就くための条件になるの…?」

「なるのよ。その力があれば、ソティラスという、優れた戦闘奴隷を作り出せるの」

「…戦闘奴隷…」


 奴隷という言葉で、心に不快感が過った。


「そう。ソティラスについての説明は後でするわ」

「――亡きシャンティ王女は、ヴァルヨ・ハリータの力を受け継いでいたの。後継者第3位だった。それなのに、まさか事故で亡くなるなんて…」


 バークティ妃は悔しそうに、口を引き結んだ。


(いや、事故ってサラッと言ったけど、なんで悔しそうなの…?)


「わたくしはどんなことをしてでも、シャンティ王女を後継ぎにしなければならなかった」


 ゾッとするほど、バークティ妃の顔が怒りに歪んだ。


「――全てが、順調だったのよ。シャンティは力を継いでいた。折角ラタに少しずつ毒を盛って弱らせてきたのに…」


 バークティ妃は語尾を低くして、下唇を強く噛んだ。


「あとは少しの時間を待つだけだった!」

「へ?」


 毒、という言葉に、カエの顔が引き攣った。

 バークティ妃は冷たく微笑(わら)う。


正后(せいしつ)の娘、ラタ王女には……すでに長きにわたって、静かに“弱って”いただいているの」

「ファアアアっ! どっ、毒!?」


 カエは思わず絶叫した。

 背中に冷たいものが走り、目の前の笑顔に恐怖する。


(さらっと笑いながら言ったよ、盛ってるって言った!)

(怖いってば!)


「着々と進めていた準備も、肝心のシャンティ王女の死で、水の泡となったわ…」


 愁いを帯びた顔でため息をつき、そしてまた微笑みが浮かぶ。


「でもわたくし、何が何でも祖国を解放したいの」

「だからね、秘術を駆使して、異世界からあなたを呼び寄せた。そして、シャンティ王女の姿に改造して、ヴァルヨ・ハリータの力も継承させたのよ」


 ガツンと殴られたような衝撃が、カエの全身を貫いた。


(ガチでこの人コワイっ!)


 七転び八起きを体現したような人だと理解する。そして、ふと疑問が湧いた。


「私が選ばれたのは、なんで?」

「あなたを特定してのことではないの」


 バークティ妃は片手を頬に添える。


「秘術をかけるためには、この世界の人間じゃダメなのよ。理由は知らないけれど。改造に適合する人間を無作為に選んで、召喚するシステムになっているわ。あなたはそれに引っかかったのね」


 カエは俯いて膝頭を強く握った。


(どこが幸運日だってゆー…)


 一等賞を引き当てたことで、今度は不幸を引き当てたのか。ある意味物凄い引き。


(こんなエンドレス課金しても出ない理不尽SSRガチャ、リスクデカすぎてイラねーよ!)

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