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ブートブーリン・ブーゲンブルー

からっぽの街 〜ブートブーリン・ブーゲンブルー〜

作者: 一飼 安美

からっぽの街 〜ブートブーリン・ブーゲンブルー〜


「からっぽがいるんだって」


 同級生に聞いたときは何それ?って思っただけだった。人間の姿をしていて、人間と一緒に暮らしていて、でも人間じゃない。からっぽたちは中身がからっぽ。何にも入ってないんだって。そんな怖くもない怪談。なんのことかわかんない。妖怪『からっぽ』。何にもしないし何も起きないし、ただからっぽなだけ。よくいるじゃん、そんな人。中学に入った頃は、それくらいしか思わなかった。


 私はもうすぐ高校に行く。中学校を卒業したら、もっと大人になると思っていたのに全然なってない。いつのまにか何も思わなくなって、たぶんこのまま何も考えなくていいのだろう、なんて思っている。そうやってだんだん考えなくなっている、ってなんとなくわかっているのに、まだやってる。何にもない。まるで頭が……そう思っていつも考えるのをやめる。私は、私。からっぽじゃない。人だもん。そう自分に言い聞かせて、今日も帰り道についた。


 ねえねえ!って話しかけてきた、いつもの友人。いつも楽しそうでいつも笑っていて……たまに腹立たしく思うようになったのは、いつからだろう。友人はそんなこと構ってなくて、遊びに行こうよ!って誘ってくる。寄り道しちゃダメだから、って断ったけど聞いてくれない。私たち、もう子供じゃないよ!何もしないなんてつまんないしもったいない!ちょっとだけ、寄り道しよう!……そういうの危ないから、って断ろうとしたら、友人は言った。


「悩みすぎたら、からっぽになっちゃう!」


 ……友人は、私よりちょっとだけからっぽに詳しかった。からっぽは、たくさん考えた人。考えて考えて、わかんなくなって考えるのをやめちゃった。だから、からっぽ。最初からからっぽだったら、どんどん入るって聞いたことあるよ!……私は友人と、脇道のコンビニでアンパンを一個食べて帰った。アンパンがおいしいなんてことを、いつのまにか忘れていた。きっと大人になったら、いいことがある。明日がちょっと楽しみになった。ブートブーリン・ブーゲンブルー。

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