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6日目「頼れるたけし」

 波は押しては返す。南風が優しく吹き抜ける。その暖かな空気がぼくの肌を包み込んだ。

 そして、目の前には完全に全裸のたけし先輩がいた。

 この訳のわからない状況にどこから突っ込んで良いのかわからず、唖然としていた。極寒のO市から、いっぺんにハワイのようなところに来たからだろう。寒暖差で一筋の鼻水が垂れてきた。とりあえず鼻水は拭こうという冷静な自分が、ポケットに手を突っ込もうとした。しかし、その手はむなしく宙をかすめる。

「あれっ、服が」

「そう、ここでは加工されたものが身につけられないんだ。」

 たけし先輩は当然のことのように言って、ヤシの木のほうを指差した。

「だから、そこのヤピの木から適当な葉を編んで服を作る。俺らはそうやって、虫刺されや怪我から身体を守ってきた。まあ、ここは冷えることがないから防寒とかは必要ないぜ」

 ヤシ……いや、ヤピの木? 語感が似ているのがなんだか腹立たしい。

「あの……状況が全く掴めません。つまりぼくは、“たけし先輩の世界“に来てしまって、その入り口があのカラマツの林に偶然あったということですか」

「いんやー、参ったさぁ。偶然ズズメが見えたんだもんな。そしたら急に空中に消えるんだぜ。ここが世界の端だって気づいて思わず飛び込んじゃったんだよ」 

 急に沖縄訛りのようになるたけし先輩。ズズメもきっとスズメのことだろう。

「で、これからどうするんですか」

「まずは帰還届を出さないとだよナア。お前については、それから考えよう」

 そう言って、堂々と歩き始めた全裸のたけし先輩。毛むくじゃらの、その左右に揺れる汚い尻を見て、初めて思った。

ーー頼もしい、と。


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