表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/18

2日目「走るたけし」

 カラマツの林道を抜ける風が肌を刺し、ぼくは歩を緩めた。

「先輩、そろそろ着てくださいよ」

「ほてった身体を冷ますにはこれが一番手っ取り早いんだよ」

「だからってちゃんちゃんこ一丁にキャップ、水泳パンツは怪しすぎますよ」

 いくら田舎道で誰も来ないからといって、たまに軽トラくらいは通り過ぎるし、その視線が厳しい。

 昨日、おでんで暖をとりそのまま寝落ちした『たけし先輩』は、起き上がるとすぐちゃんちゃんこを手に取り

「いくぞ!」

 と、寝ぼけて何が何だかわからないぼくは、寝巻きのまま外に連れ出された。外はまだ暗く、向かいの公園の時計塔は5時を刺していた。

「そんなに薄着で寒くないんですか」

「ちゃんちゃんこ着てるだろ」

「暖かい服を着れば暖かいって理屈はちゃんとフル装備してから言ってくださいよ。この寒空で下がビキニ一つでどこが暖かいんですか」

「見ろ。カラマツだって冬に葉を纏っていない。なのに俺ときたらちゃんちゃんこがあるんだ、贅沢だろ」

「先輩はいつから樹木になったんですか……あっ、ちょっと待ってくださいよ」

 ぼくは呆れながらも遠ざかる先輩を見失わないように走り出した。カラマツの葉が木枯らしで落ちる。

 そのとき、ほんの少しだけ、彼を包んでいるように舞ってみえた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ