16日目「クリエイターたけし」
王は白いひげを摘んで悲しげに語り始めた。
「我々、“クリエイターの世界”に生きる者は、創作物を生み出し続けていた。しかし、お前が“やつ”を持ち込んだことで、我々の世界は創作者の世界から、創作物になってしまったのだ。その影響で、この世界は世界の上位にいる“観測者にとって理解しやすい物語の形”へと変化した。
本来ならば、ワシは自分が“王”であることをわざわざ説明する必要はない。しかし、今こうして“王として語ること”を強いられている。
つまり、ワシの発言も、お前たちの行動も、"観測者"が理解しやすいように“整理された物語”として流れていくのじゃ」
「おいおい、全然わかんねえよ。クリエイター? 観測者? どういうことだ?」
「たけし、忘れてしまったのか。その隣にいる者のことを書いていたのは、お前だろう?」
「は?」
「お前は物語を作ることに没頭するあまり、その物語に精神も肉体も飛び込んでしまった。そして戻ってきたのだ。そういうことじゃ」
「……いやいや、さっぱりわからねえ」
たけし先輩が“クリエイター”?
ぼくがたけし先輩の物語の登場人物?
そしてなぜ王がその事情を知っているのか——
ぼくは聞きたいことが山ほどあった。