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13日目「ロマンシングたけし」

 案内されたのはこの辺りでは珍しい3階建ての家屋だった。石積みに石灰のようなもので仕上げをしたようなその家屋は地中海の写真集で見たような白亜の民宿だった。

「本当にこんなもので良かったのでしょうか」

「いえ、本当に助かります。ずっとぼくも気になっていたんです。」

 ぼくたちは昨日たけしに声をかけてきた女性の勤める民宿に世話になるついでに何か着るものを頼んでいた。ぼくはサイズの合う服がたまたまあったので、民宿の従業員の制服をいただいた。たけし先輩は、どの服を着てもなぜか袖が通らなかった。加工品が入らないというのはそのことなのだろうか。

「まさか俺にヤピの木以外の服が着れるとは思わなかったぜ」

 たけし先輩が誇らしげにぼくに見せてきたのは薄い白いレースが入った服だった。それはレースカーテンを利用したもので、昨日の女性が急ごしらえで縫ってくれたポンチョだった。民宿の表に出ると、朝の陽ざしが通り一帯の家屋に反射してまぶしい。昨日は気づかなかったが、この辺りの家の壁は全て白く塗られていた。

「車を付けてあります。どうぞご無事で」

 昨日の女性が涙ぐみながら、ぼくたちを見送る。そしてたけし先輩の頭上をまた見ると、少しためらいの表情をしたがすぐに顔を伏せて何かを決心したようだった。

「いつか会えますように」

 彼女はそういうとたけし先輩の耳の後ろのあたりに軽く唇を添えた。

「なんだよ、急に」

「おまじないです」

 それからぼくらを乗せた白塗りの車は音もなく浮上した。動力はどうなっているのだろうか。前2、後ろ3人がけの無人のオープンカーは一気に加速した。

 薄すぎるポンチョは太陽の日の光を浴びて、たけし先輩の身体をわずかに透かしていた。たそがれる彼を見て、昨晩、彼女との間に何があったのかは聞かないままにした。


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