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10日目「チョコバナナ戦士たけし」

 城壁の中は城門から真っ直ぐに市場が展開されていた。活気に満ちた街の人々はぼくたちを見て驚いたり、指を指したりして、思い思いの反応を見せている。それもそのはずだ。誰ひとり裸の人はいないのだから。

 しかしその視線をまるで気にしないたけし先輩を見ていると、おかしいのはひょっとして、街の人なのではないかという気さえしてくるから不思議だ。

「おー、チョコナナバじゃん。おれ、これ好きなんだよね」

 チョコは同じなのかと思いながらも、どう見てもチョコバナナを扱う屋台を指さす。一つ違うのは巨大だ。

「いらっしゃいませ、たけし様」

「お前もおれのこと知ってんのか」

「も、もちろんでございます」

「お前はなんて名前言うんだ」

「モ、モッブエーです」

「へえ、変わった名前だな」

「めっそうもございません」

 たけしの頭上あたりをチラチラとみながらモッブエーは目を合わせないようにして答える。きっと裸のたけしに、目のやり場がないからではないように思った。

 何かを「読んで」いるのだ。ぼくはその視線の先を追った。しかし、そこには何も見えなかった。

「それ欲しいんだけどよ、いま金がねえんだ。どこかで仕事ねえかな」

「いえいえ! お代は不要でございます! そちらの方もどうぞ」

「お? いいのか、わりいな」

 モッブエーはぼくたちに巨大なチョコバナナを一本ずつ差し出すと、何かの使命を果たしたかのように肩を撫で下ろした。

「そんなに萎縮しなくていいんだぜ」

 たけしがそう言ってモッブエーの肩をポンポンと叩くと、彼は一瞬びくっと震えて、それきり口をつぐんでしまった。まるで何かの「筋書き」に従うように。


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