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Akashic Rulers  作者: Filsmical
1:1-果て後紮ぐは轗軻と傀俄
5/5

1:1-3:管を以て窺い蠡を以て測る


「ッ誰だ!」


 彼の言葉は、聞く限りは日本語である。

 確率で言えば有り得ない現象。

 大方、又もや記憶の再現だろう。


 管理者は何がしたい?

 重度の愉快犯である可能性もあるにはあるが。

 友人の一人に似た奴がいる。


「名を名乗りなさい!」

「……」


 生憎名は無い。

 そもそも答える義理も無い。


 偽名でも名乗るか。


「……ジョンだ」


 本名と言うか個体名はノーヴである。

 発音し難い点が欠点。


「噓ですね、貴方の名前はノーヴでしょう」


 何故分かった。

 そもそも、知っているならば聞く必要は無かった筈では。


 ……違うか。

 何か探っている。


「それは名前ではない、個体名だ」

「……何が違うのです」

「何故ノーヴだと思ったか、其処を考えてみれば分かる」


 鎌を掛けてみる。


「……ランスウにそう記載されていた。ランスウは絶対の筈……」


 乱数?

 全く脈絡の無い単語だ。


 兎も角、此奴は自分の個人情報をある程度知る能力があると。

 管理者がリークでもしたか。


「そこに乗っている文字列は識別番号の様なものだ」

「……」

「対外的に名乗る名称とは用途が異なる」

「……成程」


 取り敢えず出任せを発する。

 誤魔化せた……筈だ。


「っと、そうじゃない! 貴方、此処が何処か知っての狼藉ですか!」

「森林では?」

「もっと狭い範囲での名称です!」


 一々煩い奴だ、静かに話せ。

 髑髏が反応するだろう。


「……」

「帝国と聖王国、共に此処が不可侵と常識です」


 不可侵……?

 あの蜂や毒々しい植生が原因か。


 そして帝国に聖王国……

 複数国家が存在し、対話を図れる程に文明は発展していると。


 そして彼は恐らく警邏的存在。


 しかし彼は服のみ、胸部鎧すら着込んでいない。

 アンバランスだ。

 銃でも持っている可能性……無いな。

 服に膨らみは見当たらない、と言うかポケットの類が無い。


 益々不可解だ。


「貴方が誰だろうと、知らないのは不自然……」

「……そうか」

「そうです。故に不法侵入として貴方を処罰します」

「……如何にして」

「無論、規定に則り無期懲役又は死刑です」


 存外重い。


「……それはどの様な規定に基づいて?」

「エオノス国際不可侵協約……何時までとぼける心算ですか?」


 エオノス。

 締結場所か森の名称か。

 何方でも良いか。


「自分は無国籍であり当該協約にて自分は対象外の筈だ」

「っ!」


 この様にでも言い放てば良いだろう。


「……」


 何か思案する様子を見せた後、彼は口を開いた。


「確か、無国籍の場合は周辺国の国籍が与えられ――」

「遡及性無し」

「……」


 彼は完全に黙り込んだ。


「では……いやしかし……証拠は?」

「周辺国に聞いて回れ」

「ですが――」

「それ以外に如何証明しろと」

「せめて何処に住んでいたか――」

「何処でもない」

「……貴方一体何処に居たんです?」


 上を指す。


「えっと……空しかありませんが」

「落ちて来た」

「はい?」

「空より墜落した」

「……それこそ嘘では?」

「落下した際陥没した地面が証拠だ」

「……そうですか」


 浮かない顔をしている。


「落下して何故生きていられるのです?」

「一度死んで生き返った」

「……?」


 自分も知らない事だ、説明の仕様が無い。


「えー……その件は一旦置いておくとして……落下地点へ連れて行って下さい」

「歩きで早くとも五時間は掛かるが、良いか?」

「……流石に、勤務時間外ですね。それにきっと管轄外です」


 ふむ。

 連星故不安はあったが、時間と言う単位は通じると。

 但し、かなりの齟齬があるだろう点は否めない。


 そして此奴は何らかの組織に居る事が判った。

 それも確りと体制のある。

 恐らく他にも警邏的な人間が辺りを巡回しているだろう。

 此奴を撒いた所で他の奴に見つかる可能性が高い。


「うーん……」


 悩んでいる様子。

 その間に別の事を考える。



 此奴は身形こそ整っているが、何ら武器を所持していない。

 それでこの森林の熊や狼に対抗出来るとは到底思えない。


 が、先の髑髏の様な前例がある。


 思えばあれが起こす火柱が、自分を発見する際の目印となったのだろう。

 此奴の所属する組織的な何かが使役しているとすれば。

 髑髏の持つあの消える気配の無い火。

 あれを流用して無からエネルギーを生み出せるやもしれない。


 然様であれば脅威度は跳ね上がる。

 髑髏は積まれた知能が低品質の為に対処出来たが、連携されれば話は別だ。

 組織が此奴の動向を把握していない訳も無い為、倒した所で増援が来る、と。


 反抗は止そう。

 危険だ。


「一度、付いて来て貰えますか」


 如何やら結論が出たらしい。


「何処へだ」

「一旦、エオノス大森林の外へ」


 エオノスはこの森の名前らしい。

 協約の締結場所では無かったか。


「その後は?」

「帝国へ」


 帝国……だとすると反対は聖王国か。


 大森林と言う事は間は隔絶しているだろう。

 警邏は両国が出し合っていたりすると……?

 聖王国の方が刑が軽かったり……しないか。

 国際条約だ、国で差は余り出ないだろう。


「有無を言わさず捕縛、等と言う事が無いなら従おう」

「そんな事は……無い筈です」


 歯切れが悪い。

 帝国と言う位だ、武力的な圧制状態か。


「では、他人に危害を加えられた際は庇う、と言う条件で」

「……分かりました、では早速」


 立ち上がる。

 攻撃意思が無いと示す為に木に凭れた侭だった。

 故、臀部が軋む。

 荷物を背負うと更に痛い。

 これも修復する。



 接地面の泥や木屑を払い、彼の後を追った。




 ◇




 狼が二匹出て来た。


「条件は他人……人では無いので任せます」

「承知で言った為問題は無いが」


 回避する程面倒な相手だろうか?


 耐え兼ねて前に突出した狼の顎を蹴り上げる。

 口内に槍を挿す。


 これで一匹。

 もう一匹も同様に殺した。


「……慣れてますね」

「墜落後、通算34匹目だ」


 九匹同時に出て来た事もあった。

 流石に随所を噛まれたものだが、それに比べれば如何と言う事は無い。


「そう言えば、空から落ちる以前は何をしていたんですか?」

「……」

「見た所年齢は18程でしょうか、それで無国籍と言うのは……」


 18……確かに外見はその程度か。

 転生を繰り返している所為で時偶年齢設定を忘れる。


「親が居ない、何処か国の中で成長した訳でも無い」

「……それは」

「気にする程でも無い」


 親が居ないとは自分が機械である故だ。

 一応人体に寄せて作ったが、主に生殖器等無いものは無い。

 無論性別も無い、外見は男よりの為男で通しはするが。

 修復やエネルギーの貯蔵も機械的である一端だ。


 感情に関しては知識として発露するのみ。


「ちょっと、この近くに同僚が居るので離脱を告げてきますね」

「……自分の事は何と説明を?」

「そうですね……連行中で手出し無用だと扱いましょう」

「了解」


 信用ならない。

 幾らか罠を設置し、草木の奥底で様子を窺う事にする。




 ◇




「……」


 人影が二人。

 新たに女性を連れている。

 離脱の許可を得られなかったか?


 今にも斬り掛かる様な形相では無い。

 円滑な進行の為姿を表す。


「……」

「貴様がノーヴか」


 随分と偉そうな。


 然し、予想通りと言うか、彼と似た格好だ。

 組織の制服か何かか。


 恐らくこの女性も警邏だろう。

 女性でも務まると言う事は髑髏的な力を……


 信憑性が増した気がする。


「その……」


 彼は何か言おうとしては口籠っている。


「貴様がどの様な身分だろうと、協約を違反した事に変わりはない!」


 般若も斯くやと思える調子だ。


「よって貴様は此処で私が処す!」


 処す……この場で出来るのは死刑か。


 幾ら何でも唐突では。

 余程短絡的な思考回路の様で。


 ヒステリック。


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