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Akashic Rulers  作者: Filsmical
1:1-果て後紮ぐは轗軻と傀俄
4/5

1:1-2:枯木死灰


 

 ……羽音が耳に張り付く。

 百は下らない大群。


 余程嗅覚が鋭い様で、熊の血の滲出を目掛け迫り来る。

 服にも熊の血が這い、巻き添えは必至であろう。


 熊の首に靴を挿し込み、裂創を入れる。

 これで血臭は更新され、寄生蜂は追えない筈。



 暫くして、振り返る。


 ブブ、ブ――――


 熊は産卵管を破裂せんばかりに突き入れられ、今となっては過大な図体を震わせる。

 余りに集る寄生蜂が多いらしく、羽音が連なり長音として収束していた。




 ……さて、何方へ向かうか。

 熊の爪を剥いだ為、木に目印を付けられる。

 よって迷う心配はない。


 寄生蜂のいる方向は論外として、落下地点も除外。

 正面と背面以外、左右の二択。


 特に判断材料が見当たらない。

 木に登ってみる。


「……」


 連星だった。

 灼熱は二球、その他三つ。

 案の定地球と構造を同じくする訳では無いらしい。


 腑に落として。

 情報を収……右は控える。


 植物は明らかに背が高く、絡み糾い、枝葉で一切幹が見えない。

 毒々しい花弁が散見される。

 却下。


 木を降り、対の方向へ歩き行く。




 ◇




 5時間が経過。

 10kmは歩いたか。

 森である為距離を測り難い。


 既に熊、狼、蜂に限らず多種多様な生物を追い払い、時に傷つけ、殺している。

 蜂はテリトリーを外れた様で、既に見掛けなくなった

 熊と狼は森林全域に生息している模様。


 ここ等は専らリスの様な小動物が多く、撃退し易い為助かる。

 尚、外縁は未だ一端もその痕跡を映さない。



 小休憩。


 荷物を置く。

 襲来する生物を追い払う末に得た物だ。

 シカの様な動物で作った角製の槍や、軽く薄い盾用の石等。

 外套で包んである。



 ……もう一度木にでも登ろうか。

 そう思い立った。

 他にする事も無い。


「……」


 木に登ると何か、不自然な空白が見えた。

 そこを目指す事にする。




 ◇




 もう直に着く―― 矢先、視界が開いた。



 惨状。


 木々は無残にも焼け崩れ、踏み締める毎に屑が散じる。

 放火でもされたか。

 その割には察せられる火力が強い。 


 もう一度木に登って見る。


 ……同様の空白地帯が数多く、色濃く跡を刻んでいる。

 自然発火、摩擦や落雷では無い。


 故意犯を憂えば通過は避けたい、よって迂回する。



 電気を放つナマズの様に火を放つ動物が存在するのだろうか。

 それとも自身の様な或程度知性を持つ個体が放火したか。

 消失地点が点在、と言う性質を見るに動物的ではある。





 ◇




 逃亡中。

 中々如何して逃げてばかりいる。


 ――カタタ……


 迂回して5分は幾ら足りとも反応は無かったのだが。


 敵は宙に浮く逆さ髑髏。

 七体。

 いよいよ健全な生態系の面影を損なっている。


 此方が地に足を付け走るのを尻目に、中空にて悠々と追尾して来る。

 ジャックオランタンの様に妖光を抱え、衰退の素振りも見せず燃え盛っていた。

 その光が火種らしく、如何とも手を出し難い。


 木々を焼き尽くした生物は恐らく此奴だ。

 それ程火力を有する様には見えないが。



 ――ガッ……


「……?」


 髑髏が枝に顎を打ち付けた。

 引っ掛かったらしい。


 髑髏は白磁を紅潮させ、赤熱を撒いた。

 膨張する。


 ――カタ、タ、タタタタ……!


 発火の兆しだろうか。


 木々が焼けていた範囲は凡そ半径15m、熱波を考え20mは離れたい。

 が、髑髏を巻き込み一掃もしたい。


 渦巻き型に逃げ、なるべく髑髏を留まらせる。

 ……三体は巻き込めるか?


「……」


 ――静寂。


 後一拍。

 火柱が上がった。

 骨格が勝ち誇った様に歯を鳴らしては火に沈む。


 三体と言わず四体、五体、巻き込み――


 連鎖してその勢いを跳ね上げた。


 ――ドォ、ォォォッ!


 他の髑髏を食い潰して消し去るものと思っていたが。


 火柱は劫火を体現し、20mと言わず目測50mは伝播。

 我が身可愛さに大きく距離は取った、ものの。


 敢え無く、咄嗟に縮む背は爛れ躙られた。


 修復する。

 溜め込んだエネルギーが抜け出る。


 この体は前世で製造されたものだ。

 エネルギーさえあれば融通が利くが、配分を間違えれば枯渇し、永遠に活動を停止してしまう。

 前世は永久機関を生ずる様な法則を有していなかった為、斯様な欠陥の多い身体を使用しなければならない。


 兎にも角にも。

 次は巻き込む等と考えず、一体一体確実に処理する事にする。




 ◇




 処理に慣れた。


 と言うのも、歯を鳴らす事で爆発する事が判り。

 石を投げ込めば遠隔で起動できる。


 百発百中で無い為外す事もあるが、その折は赤熱させた後に能う限り逃げれば良い。

 連鎖も無く、猶予が約5秒ある為、発見次第の処理を怠らなければ然しも脅威では無い。



 ――ヴォオオオ!


 熊が出てきた。

 蜂が居ない故か、何処と無く体躯が肥えている気がしない事も無い。


 前回同様に飛んでくる拳を避ける。

 顔に槍を叩き込んだ。

 現状刺せるほど尖っていない為、押し込むのみに終わる。


 ――グゥ……


 反撃に繰り出された爪を平たい石で防御。

 襲い掛かる尻尾は槍で払う。


 武具擬きを作った以後、負傷率は格段に下がった。

 熊程度であれば難なく倒せる。


 負傷した所で、向こう5年生存出来る程度のエネルギーは貯蔵されている為、直ぐ様修復すれば良い話ではあるが。

 有事の為節約を心掛ける必要はある。


 ――ガアアァァァ!


 回避、防御、随に攻撃。

 そんな攻防を数十秒、特に苦戦も無く勝利した。



 さて。

 木に凭れ腰を据える。


 髑髏も大分数が落ち着いて来た事だ。

 ここ等で座っていよう。


 もう直に夜が来る。




 ◇



 連星所以か数時間で夜が退いた頃。


 右奥の草叢が騒いだ。

 又候熊だろうか。


 目を向ける。


 暗所で見え辛いが、小奇麗な男が立っていた。

 険しい顔。


 ……人間?


 同じくこの森に落ちて来たという事だろうか。

 不明。


「――ッ、誰だ!」


 開口一番、そう叫ばれた。


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