0:1-1:虚無を背に
先ず価値等と言う概念を破壊。
次いで、感情と言うらしい付属品も切除。
更には粗悪な身体から脱却。
漸く我々は解放される。
これは偉大な功績である。
我々は小躍りして喜んだ。
◇
3時。
夜と朝の境界を包み隠す関門。
今日ばかりは、閉ざされた瞼達の骸を踏み越えなければ。
PC上の文字列に目を向ける。
向けるのみで何ら情報の入りはしないが、向ける。
帰端仮説.docx――
幼少の駄文。
先ず以って、原則として、死人は生き返らない。
事を否定する。
今尚この説に違和を覚えるが、それは人間性を抱える証左だ。
都合の悪い事実に猜疑を生み、後、欲深い論理を象る。
さて、この論説に従えば死への恐怖も何も無い。
惜しむらくは痛覚を誤魔化す方法を持ち合わせていない点。
喉元過ぎれば熱りも冷めると、間に合わせの信条とする。
自殺は諦めに非ず、来世に充足を望む行動だ。
自己肯定を終える。
「……」
無作為に仰のいた。
光を取り零すカーテン、未明の天と滅紫に佇む暁。
気丈に時を晒すべき短針は、疲労で垂れていた。
4時。
又候時流を認識出来ずにいた。
「そろそろ頃合いだ」
長生きな太陽は急かす。
pcを机上に。
散り敷かれた塵を片付ける。
ブレーカーを落とす。
一通り身支度を終えて外に出た。
隙間風が背中を押す様に、吹き曝した。
◇
ビルの屋上。
解放感が如何ともし難い勇猛を湛えさせる。
飛び降りる。
今、そうする。
衰える太陽を背負い、存在を昇華する。
マスメディアは如何に報道を流すか。
それとも、何ら沙汰無く歴史の間隙に溶け込むだろうか。
目下、1m数十cmが斑にスクランブルを流れる。
四肢を振り、衣服に籠もり、情動を恥ずかしげも無く――
聳え込む摩天楼に身を投げる。
閑静。
押し寄せる慣性。
一拍、喚声。
硬き地、翳る空、等しく赫々を滲ませる。
この死が蒙昧な社会に取って害を為せと。
喘ぎ悶え果て断腸に窮し、塗炭の苦しみが骨身に応える様を。
願うばかりだ。
墜死。
◇
突如、白光が弾ける。
「……」
気が付けば目の前に見知らぬ、神々しさを纏った若者がいた。
ニヤニヤと、したり顔で粋がっている。
想定解だった。
冷ややかに、且つ憐れみを込めて見下す。
相手は憤慨を露にした。
酷く滑稽に映った。




