59、死活問題 1
「……シキュ、覚えてる限りでいいから、この魔力の格上げは幾つくらいかしら?」
日を改め、短めの依頼をこなした後、またギルドの個室を借りての対面である。
「えーっと、かなり前のことで」
紙をペラペラと捲っていくようなら、数えやすかった。
だがこれは魔力の層、触ることは不可能で、絶えず揺らいでもいる。
身体に近い層の密度が高すぎて、何度数えても合わない。
「……シキュ、請け負ったから遂行したいのだけど、無理だわ」
息をする肺の上下でも層は動く。
前はダメだと後ろに回っても、肺が動くと全身が微弱に層が動く。
息を止めてもらっても、心臓の鼓動がどこかしらから伝わって、層が動く。
「どうしてもですか?」
「分かりやすく言えば、ペラペラの薄い紙が密着している上に、どうやっても動いてしまうの。しかも、触れないの。紙みたいに捲ることはできない。近づき過ぎると私の魔力が干渉してしまって更に動く。降参ね」
「うー、ようやく歳が判明すると思ったのに」
「そういった鑑定士に鑑定してもらうことは出来ないの?」
この世界にも鑑定士はいる。
よくあるステータス画面的な鑑定士は、この世界にはいないという情報だけは知っている。
様々な鑑定士がいるのだから、どこかに年齢判定できる鑑定士などいそうなもの。
現に自分が数えるしかできないが鑑定のような真似事ができるのだから。
「あのですね。お姉様なので白状しますが、その層の枚数多いですよね?」
「ええ、はっきり言って、数えるのは地獄ね」
「あの、その層でこの見た目は不可解ですよね?」
「神話に出てくるハイエルフの変化版かと思っていたわ」
この世界にエルフはいるにはいるらしいが見たことないし、ハイエルフとなると本の登場人物になってくる。
「昔、エルフの里にも行きましたが、エルフ族ではないと言われました」
「あらっ、ならシキュって人認識でいいのかしら?」
「そうなんです!自分で人認識していいか分からないんですよ! この商会を立ち上げたのも、情報を集めるためと、ツテを作るため。そこで見つけた方法で色々試しましたが、どれも不発ばかり」
「方法のみ?」
「はい、鑑定士に年齢を聞くには、通報されるリスクもありまして、商会を大きくさせた弊害とも言えますが」
シキュが言うには、鑑定士は国所属で、異端などの発見時には報告義務があるとのこと。
「商会関係と知られると商会も危うくなると。よほど楽しかったのね」
「ええ、楽しくて」
「なら、私の他にも年齢の分かる方は居るのね」
「いたですね、逝去してますから」
「何年前?」
「子供が大人になるほどの期間だったと。自分の年齢が分からないので、何年前と覚えることも難しく」
占い云々よりもそっちの方が死活問題だろっと心の中でツッコんでおいた。




