53、弟二人と昼食にて③
ここは、素知らぬフリで出方を見る。
「改めてなど、律儀ですわね。サタンナンダ商会には、家族で世話になっているのだから、こちらが礼を言う方よ」
「いえ、それは窓口の者にお伝え下さい。私にはまだ関わりのないことですので」
「そうね。分かったわ。……申し訳ないのだけど、スタフィシュ店に聞き覚えがないの、そこは主に何を取り扱っているのかしら?」
サタンナンダ商会は、支店ごとに扱う商品が違いすぎて、商会の店だと一見に分からないほど、手広く展開しているやり手の商会だ。
「残念ながら、スタフィシュ支店は、冒険者向けの商品を重点に扱っておりますので、お姉様に大手を振ってオススメする商品がないのです。代わりにステショナリ支店で扱っている文具など何点か持ち寄ってますが、ご覧になられますか?」
説明も淀みなく、そんなシキュに尚早かもしれないと、一旦脇に罠案は追いやった。
懐から敷物をヒラリと出したシキュは、その上に万年筆などの文具を三点並べ始めた。
「お……」
すると、今まで見守っていた弟ズが一緒に口から音を出したが、すぐに口を閉ざした。
その不自然さに気付きつつ、気付かぬふりで三点を眺める。
「お気に召す物はありますか?」
一見、高級品、中級品、一般品と見て取れる三品。
だが、その一般品に目を引かれた。
「試してもよろしいかしら?」
高級品、中級品のような装飾などない代わりに、全体的に細い。
「紙はここに」
また懐から紙とインクを取り出すと、どうぞと試し書きの用意。
キャップを外すと、万年筆とは違う形状であり、先端に球体のついた見たことある形状。
シキュにインクを出されたが、これはインクが必要ないあのペンであることは確か。
それをこの世界でも開発出来たのかと嬉しい気持ちを持ちつつ、それを紙に乗せスラスラと文字を書いた。
『これを頂くわ。商品の名前を教えて頂ける?』
万年筆の擦れる振動をほぼ感じない書きやすさで、コレコレと思いつつ顔を上げた。
目の前には、少し目を開いたシキュと満面の笑みを浮かべる双子の姿。
「ご存じでしたか」
シキュの言動で察すると、まだ開発段階か、試供段階の新商品と見て取れた。
「ご想像にお任せするわ。こちらの商品の名前を教えて頂ける?」
「少々お待ちを」
くるりと振り向いたシキュは双子に向き双子を指さすと首振る双子。
すると、シキュは頭に手をやり、少し上向いてから、双子に謝った。
「まだ二人には見せてないやつだった!疑ってごめん」
「「許そう」」
その言葉に、こちらに向き直ったシキュは、こちらに向き直った。
「大変、失礼致しました」
二人を疑ったこと、待たせたことを謝るシキュだった。
「こちらの商品は、まだ販売未定の新商品でして、まだ名前は決まってないのです、何か良い案はございますでしょうか?」
「でしたら、先に球体が付いているので……ボールで書くペン、ボールペンはどうかしら?安易かもしれないけど、覚えやすい名前が良いわね」
「なるほど、開発メンバーに伝えておきます」
後に、その商品はボールペンとなったことは言うまでもない。




