表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/19

お読みいただきありがとうございます!よろしくお願いします。

 転生前はそれなりに乙女ゲーム、悪役令嬢系物語、異世界転生ものを嗜んできたけれど、舞踏会で婚約破棄って、完全にあるある『悪役令嬢系物語』じゃない。


 この系列は山ほど一次創作、二次創作があったけど、大概は、

「貴女との婚約はここに破棄する事を宣言する!」

というアホみたいなセリフから始まるのよ。


 究極のアホみたいな婚約者と、略奪する事に成功した異母妹(または異母姉)は、最終的にはザマアをされて、爵位剥奪、平民落ち、国外追放、なんて結末を迎えるのよね。


 大概、婚約破棄を宣言された後には、隣国の王子様が苦境から助け出してくれる事になるのだけれど、私の目の前に現れた男はダーフィトさんと言って、商会の会頭をしているのだという。

 

 ベンは昔、ダーフィトさんのお父さんのところで働いていたらしくって、その関係でちょっと顔を出したところ、伯爵令嬢である私が苦境に立たされているという事を知り、援助を申し出てくれたわけだ。


 というのも、

「僕はブザンヴァル王国に本店を置くミグロス商会を経営しているわけだけど、シュタイア辺境伯家との販路を開拓したいわけ。そこで、辺境伯のお孫さんがいるウェルナー家に勤めるベンの所に顔を出して、お孫さんとはどういった感じの方なのか、辺境伯と顔繋ぎをしてくれないものかと相談に乗ってもらうために来たんだけど、まさか、そのお孫さんが、井戸で水をザバザバ浴びているとは思いもしないから」


 馬車に私を招き入れたダーフィトさんは、アクアマリンの瞳を細めてクスクスと笑いながら言い出した。


「君の話を聞く限り、今は王都を離れて辺境伯の所へ身を寄せた方がいいと思うよ。僕もシュタイア家との縁ができるわけだし、君を安全に送り届けることもやぶさかではないんだよ?」


「あーー〜〜――」


 辺境伯家はないかなぁ。


「先ほど舞踏会で起こった事を説明した通り、今、現在、エルンスト公太子に目をつけられちゃっている感じなんですよね。婚約破棄した上に、私は妹から宝飾品を奪い取った盗人扱いとなっているので、いつ、どこで捕縛されるか分からないような状況なんです」


 ダーフィトさんは笑いを引っ込めると、先を話すように私を促した。


「証拠云々は別として、エルンスト公太子自身に罪人認定されているような状況なので、この状態で辺境伯家に行っても迷惑をかけるだけですし、行った途端に公家に差し出される可能性は非常に大きいです」


 何せ、母が死んでからというもの辺境伯家とは没交渉なのだ。

 あてにしない方がいいだろう。


「ダーフィトさんは販路を築きたいと言っていましたが、今の私を利用するのは到底お勧めできません。利するような事がないどころか、ダーフィトさん自身が私という罪人を匿った罪で捕縛される可能性も高いです」


「だがしかし、君は、義理母や異母妹から奪われることはあっても、君が彼女たちのものを奪う事などなかったのだろう?」


 私は誰が着ていたのかもわからないような大きめのメイド服を着ているだけの無一文、庭師に借金を申し出るくらいの貧困具合ですからね。


「誰が見ても私が冤罪をかけられているように見えるのは間違いのない事実。ですが、祖父の代で決めた侯爵家と私の婚約を破棄してスムーズに異母妹へとすげかえるには、私を罪人にしないと都合が悪い」


 ああー〜、これぞまさにテンプレ展開、ありがとうございまーー〜す。


「セオドア侯爵令息とエルンスト公太子は仲が良い友人同士ですからね、罪の捏造なんていくらでも簡単に出来ますよ」


「君の父上は抵抗しないのかい?」


「抵抗!まさか!」


 淑女らしからぬ、と言われたって知った事じゃないですよ。

 あははっはっと笑うと、私は小さく肩をすくめてみせた。


「ウェルナー伯爵家の当主である父と辺境伯の娘である私の母は、結婚当初は貴族には珍しい恋愛結婚などと言われてはいましたが、蓋を開けてみれば、母の持参金目当ての結婚で、父は母との結婚前から交際を続けていた子爵家出身の義母との関係を続けていました。母が亡くなってすぐに義母と異母妹を伯爵家に迎え入れている事からわかるでしょう?私は、金の為に娶った女の娘というだけの事で、邪魔以外の何物でもないのです」


 義母と異母妹が屋敷にやってきてからというもの、昔から働いていた使用人も一掃されて、私の生活は非常に苦しいものとなりました。


 私の事を気にかけてくれた唯一の人は、一人だけ解雇を免れた庭師のベンでした。


ここまでお読み頂きありがとうございます!

もし宜しければ、☆☆☆☆☆ いいね ブックマーク登録

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ