七話 任務説明
勝手にどこかに行っちゃだめだよ─そう言われながら、俺は美玖について行く。
スマホがあってよかった。
「それで、どこに行くの?」
「私達二人の初任務を受けに行くんだよ」
俺たちは暫く歩くと、大きなエントランスのような広い部屋につく。
「ここは情報管理室。皆は任務室って読んでるけど」
情報管理室─ここは今までの任務の報告書が保管されている場所。
なので、ここの部屋に来るためには数回の検査を通り抜けなければならなく、出入りを徹底的に管理している。
ちなみにだが、この部屋の隣に管制室兼司令室があり、ルーラーで最も重要な場所なのだ。
そんな場所に俺はいるわけだが、視線が凄い。
これは人の視線ではなく、監視カメラの視線だ。
多すぎだろとは思うが、これくらいは必要なのだろう。
ここにある情報が洩れでもしたら、日本は終わるだろうな。
何なら、経済や日本崩壊の影響で世界全体もヤバいことになるだろうな。
そんなことを考えながら任務室の中には入ると、部屋の壮大さに息を呑む。
円形の部屋で天井は数十mあり、壁は一面彫刻が彫られていて、床はカーペットが敷かれている。
3階建てで階段が壁に沿ってらせん状にのびている。
もっと機械的な部屋を想像していたが、真逆の内装をしていた。
「ルーラーも歴史は長いからね。昔は全部紙だったから、こんなにデカいんだよ。今は完全にいらないんだけどね」
そんなことを言いながらも、部屋の奥へ美玖は進んでいく。
「どこにいくの?」
「任務を受けにだよ」
俺が“?”を浮かべると、美玖が説明してくれる。
美玖の説明をまとめると、最近改築して紙の報告書を全部データ化して、打ち込んだデータの保管場所をここに作ったのだ。
当然といえば当然だが、紙をデータにしたのでこの部屋に空きスペースができたのだ。
なので、余った場所を任務を受ける場所にしたのだとか。
説明を聞いても良く分からなかったが、実物を見て理解する。
美玖はある扉の前に止まると、横にある機械にスマホを近づけると、扉が開く。
美玖が部屋の中に入っていったので、俺も部屋に入る。
部屋の中はとても薄暗く、壁や床、天上が薄っすらと光っている。
どうやら、全面がモニターになっているようだ。
扉が閉まる。
すると、どこからともなく声が聞こえてくる。
『初めまして、日暮維貔叉様。私はルーラーの人工知能、メーティスと申します。以後、よろしくお願いいたします』
正面の壁に幾何学模様が現れ、声に合われて光っている。
その声は人にして冷たいが、機械にしては温かい声だった。
俺は思わず人工知能─メーティスに挨拶をする。
「よろしく」
『よろしくお願いいたします』
丁寧に返してくれた。
自分で考えて、会話ができているのか。
『今回の任務を説明します。壁際にお寄りください』
俺と美玖は壁際に寄ると、部屋の中央に立体ホログラムが現れる。
凄すぎる。
俺が唖然していると、メーティスが説明を始める。
『今回の任務を説明します。今回は都内の廃工場で行われる武器取引の阻止及び取引物の回収です』
立体ホログラムに取引の行われる場所が映る。
ザ定番というかなんというか。
廃工場は港の近くにあるようだ。
『敵人数は23名と予測。買い手側が8名。売り手側が15名。全員が拳銃を所持している模様。そのうち、ピストルが20名。ライフルが3名となっています。取引開始時間は明後日の1時からです』
そう言うと、ホログラムに銃の詳細が出るがでるが、何一つわからない。
わかるとしたら、装弾数ぐらい。
美玖の方を向くと、真剣にホログラムを見ていた。
「これはそこそこ難しいね」
「そ、そうだね」
取り敢えず頷いたが、どこが、どう難しいかがわからない。
俺が訳が分からずにいると、美玖が作戦を立て始める。
「今回は入口が3箇所。正面の観音開きの大きな扉にその横と裏側の引き戸か。それ以外には窓一つない。当然だけど3箇所ともに敵がいるんだろうね」
俺は頷いておいた。
結局、どうするつもりなんだろう。
「窓がないおかげで、照明がないと室内は暗いからここは強行突破で行くのがいいかもね。裏側のドアから入ってそこを守っているやつを静かに倒して、ブレーカーを落とす。その後は全員を倒すだけだね」
なにか自分の中で納得している。
俺は何一つ納得出来ていないけど。
「維貔叉って暗闇の中で視える?」
「魔法でなんとでも」
「なら、オッケー」
そう言うと、美玖は部屋の中央へ歩く。
ホログラムは消え、正面に白い画面が現れる。
「現地到着は明後日の0時45分。裏側のドアから入り、ブレーカーを落とす。その後に暗闇の中で、全員を倒す」
白い画面に、美玖がいった言葉が書かれていく。
音声認識か。
これで立てた作戦の成功率や必要な物を計算するのだとか。
『確認しました。成功率─高。必要物品は拳銃、通信機、
ピッキングアイテム。サーマル眼鏡が適切だと思われます。
他に必要なものがあれば仰ってください』
「特になし」
『かしこまりました。これにて、任務説明を終わります』
メーティスがそう言うと、部屋のが明るくなり扉が開く。
「終わりだよ。それじゃあ、明日の0時に君の家にて最終確認をするから、お菓子とお茶の用意をよろしく」
美玖は部屋から出ていく。
俺もあとを追いかけてるが、部屋から出た頃には美玖の姿はなかった。
今日はこれでお終いみたいだ。
俺は家へと帰るのであった。
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