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第11話 代理マネージャー

 

「・・・・・」


 こんなに憂鬱な状態でスキー場に来たのは初めてかもしれない

 少し離れた所には撮影をしているため、スタッフの人がたくさんいる


「・・・はぁぁ」


 寒いスキー場に来ているのにじっとしておかないということと、時々テレビに出ている人がチラチラこっちを見てくること。この2つが主に憂鬱にしている原因だろう

 寒い冬空の中を温かいココアを飲んでいると撮影が休憩に入ったのか、憂鬱の原因がこっちに走ってきた


「ふーちゃん、ただいま~」

「・・・」

「目が怖いよ。せっかく目の前に真っ白な雪があるのに」

「寒すぎるし、チラチラ見すぎ」

「だって、ふーちゃんどっか行きそうなんだもん」

「行けないからここにいるんだよ・・・ほら、スタッフの人呼んでるよ」

「あ、ほんとだ。行ってくるね」

「はいはい~」


 チィ姉は足早にスタッフの所に行って一言二言話すと現場の方へ走っていった


「こんにちわ、九十九さん」

「あ、小牧さん。ごくろうさまです」


 声のする方向を向くと、美羽のマネージャーの小牧さんが立っていた

 小牧さんは缶コーヒーを持っていて、渡してくれる


「ありがとうございます」

「いえいえ。美羽ちゃんとはどうですか?あの子と一緒に暮らすの大変でしょう?」

「まぁチィ姉の時よりは楽ですね。ただ、美羽はあまり言いたいこと言えてない感じはしますね。遠慮してるというか、なんというか・・・」

「私と暮らしていた時もそんな感じでした。ただ・・・」

「ただ?」

「あの子、九十九さんと暮らしてから明るくなりましたよ」

「明るく・・・ですか?」

「ええ。やっぱり昔の自分を知ってくれる人がいると安心するんでしょうね」

「そうだと嬉しいんですけどね。・・・あ、小牧さん知ってますか?」

「はい?」

「美羽、最近よくメールしているみたいなんですけど好きな人できたらしいんですよ。本人は否定してますけど」

「あの子に好きな人ですか?ん~」


 小牧さんは少し考えたあと、俺の方を見てニコッと笑った


「そうかもしれないですね。あの子も高校生ですから」

「やっぱり」

「悲しいですか?」

「ん~・・・いえ、やっと美羽にもそういう感情が生まれたんだなぁって」

「うふふ、近くにお二人が居れば自然とそういう感情も生まれますよ」

「近くの2人って俺とチィ姉ですか?」

「ええ」

「ん~・・・あんまり実感無いんですよね。俺自身は」

「千夏ちゃんは嬉しそう毎日私に自慢してきますよ?」

「・・・あとで言っとかないと」

「ダメですよ?きつく言っては。千夏ちゃんは弱いんですから」

「チィ姉が弱い?ある部分を抜いたらほぼ完ぺきな人ですよ?」

「うふふ、千夏ちゃんも女の子ですからね。それでは、私はこれで」


 小牧さんはそういうとチィ姉の方へ歩いて行って、再び俺は1人で撮影が終わるのを寒い冬空の中、ココアを飲みながらボーっと過ごした



「あの~千夏さんの代理マネージャーの方ですか?」

「え?あ、はい」

「あの、千夏さんが呼んでますよ?」

「すみません、ありがとうございます」


 俺はスタッフの人に頭を下げてチィ姉の方へ走っていくと嬉しそうにこっちを見てくる


「俺は何時からチィ姉の代理マネージャーになったの?」

「彼氏って言ってもよかったんだよ?」

「俺の人生を壊す気?」

「だからマネージャーにしたんでしょ~」

「それでも十分嫌なんけど・・・」

「何よ~人が気使ってあげたのに」

「わかったわかったから。そんな怒らないでよ。で?なんか用?」

「むぅ~・・・」


 チィ姉は納得できてないのか、まだ怒っていて何も用を言ってこない

 それに何事かと周りの人も見てくる


「マネージャーにしてもらって感謝してます。それで、千夏さんは私に何の用でしょう?」

「・・・・」

「も~そんな怒らないでよ。そんなキツイ顔よりいつもの緩い顔の方がチィ姉は似合うよ」

「・・・にへ~」

「緩みすぎ・・・」


 皮肉で言ったつもりがチィ姉には通用せず、本当に顔が緩みきっていてさっきまで撮影をされていた人には見えない


「あのさ、そんな緩い顔見せるために俺呼んだの?」

「ううん。今日の仕事が終わったから遊ぼうかなぁって」

「今から?」

「うん」

「もしかして・・・明日の仕事も付き合うことになってんの?」

「そうだよ。ふーちゃん、明日はお休みでしょ」

「俺、美羽に日帰りって言ってるんだけど・・・」

「えぇ~・・・最近のふーちゃん、美羽、美羽・・・美羽ちゃんばっかりだよ・・・」

「しょうがないでしょ。1人なんだから」

「・・・・・」

「ね?だからさ」

「・・・・わかった。もういい!!!」


 チィ姉は持っていたカバンを俺に投げつけてホテルの方へ走っていく

 周りは何事かと思いながら俺の方を見てくるが、すぐに自分の仕事へと戻っていく

 俺はそんな視線を感じながら散らばったカバンの中身を拾う


「はぁ・・・」

「大丈夫ですか?九十九さん」

「あ、小牧さん」

「ずいぶん千夏ちゃん怒ってましたね」

「ですね」

「いいんですか?」

「ええ、今はいいです。どうせ、またすぐに仲直りしますから」

「・・・そうですか。何か悩み事があるなら聞きますよ?」

「ふぅ・・・いえ、大丈夫です。それじゃこれ、お願いします」

「はい。でわ、また」


 俺は小牧さんにカバンを渡してから、駅の方へ向かって歩いていった



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