第8話 スパイスの効いた・・・
「ふ~ちゃ~ん」
大学から歩いて帰る途中にあるカフェの椅子に座って、流れる雲を見ていると目の前にチィ姉の顔が現れた
チィ姉は帽子を被っていて、一応パッと見は千夏に見えないような変装をしている
「どうしたの?」
「移動中にふーちゃん見つけたから。1人で雲見ながら黄昏てるふーちゃんも中々だよ」
「そりゃどうも。で?もう帰り?」
「ううん、これから番組の撮影」
「ふ~ん、そっか」
「あ、ふーちゃんも来る?」
「いや、今日は美羽がいるし、夕食も作らないといけないからやめとく」
「それじゃ美羽ちゃんも連れて行こう」
「はぁ・・・今から行ったって間に合わないよ」
「あ、そっか。ん~しょうがない・・・それじゃ今度ついていきてね」
「いつか今度ね」
「絶対だよ!それじゃお仕事頑張ってくる」
「うん、頑張って」
そういうとチィ姉は車の方へ行き、走り去っていった
俺はそれを見ながらコーヒーを飲んで時間を潰してから家に向かって歩いていった
「お兄ちゃん!今日は私が夕食を作るよ!」
家に帰って、珍しく美羽が玄関まで来たと思うといきなり叫んだ
「それは別にいいけど・・・急になんで?」
「べ、別に用は無いの。私がただ作りたいと思っただけ」
「ふ~ん・・・それじゃお願いしようかな」
「うん!」
美羽は嬉しそうにキッチンに走っていって、さっそくエプロンと付けてニンジンの皮を剥きはじめる
置かれている材料を見る限りでは、たぶんカレーだろう
俺はそれだけ見て自分の部屋に入り、パソコンの電源を付ける
しばらく、ネットサーフィンなどをしながら時間を潰していると携帯が鳴った
「久しぶり、楓くん」
「本当に久しぶり、悠斗。仕事の方はどう?」
「父さんの手伝いしてたからあまり苦痛じゃないかなぁ。それよりも楓くんの活躍は聞いてるよ。本がすごい売れ行きだって」
「そうでもないよ」
「あはは、もしかしたら僕よりお金持ちかも」
「1時間で数億動かす人が何言ってるのさ。あ、そういえば、そろそろこっちに帰ってくるって聞いたよ」
「うん、こっちでの仕事が終わるとしばらく時間が空くから姉さんの手伝いでもしようかなぁって」
「そっか」
「楓くんも俳優デビューする?そしたら僕がマネージャーさせてもらうよ」
「勘弁してくれ」
「あはは、それじゃ日本に帰ったら楓くんの家に行くよ」
「ああ、待ってるよ。仕事頑張って」
「うん、それじゃ」
俺は携帯を閉じて、パソコンの画面に目を戻そうとするとキッチンの方から大きな声で「できたー!!!」と叫ぶ声がする
俺はパソコンの電源を切って、キッチンの方に行くと美羽がエプロンを付けながら俺の方へ走ってきた
「できたよ。お兄ちゃん」
「おつかれ。良い匂いだな」
「良い出来だよ。ささ、椅子に座って」
美羽に言われるように椅子に座ると、カレーを盛った皿を俺の前に置かれる
そして、美羽は前に座ってじーっとこっちを見てきた
俺は特に気にせずにスプーンで口の中に入れる
「・・・どう?」
「・・・・」
「・・・?」
なんと言うべきなのだろう?
正直、スパイスが効きすぎて辛い感じもある
辛い物が好きな人ならこれはおいしいと思えるぐらいな感じだけど・・・
「美味しい・・・・けど」
「けど?」
「これ、俺が色んな香辛料を混ぜてるヤツ使ってるだろ?」
「うん。だってお兄ちゃんいつもカレー作る時に使ってるから」
「どのぐらい入れた?」
「ん~そのスプーンで4杯ぐらいかなぁ」
「4杯って・・・・あれ1~2杯で十分だよ」
「えぇ!?・・・うわ、辛い」
水の入ったコップを一気に飲み干しては水を入れて飲み干すの繰り返しをする
そこまで辛くないのだが、辛いモノが苦手な美羽にはこの辛さは辛いのだろう
「うぅぅ~・・・食べさせれないよぉ・・・」
「ん?誰かに食べてもらうのか?」
「あ!?・・・えっと・・・お、お兄ちゃんに食べてほしかったの!」
「食べてほしい人を実験体にするなんて聞いたことないよ・・・」
「うっ・・・い、いいでしょ!プライバシーだよ!」
「ふ~ん・・・まぁ別に良いけどさ。美羽が作ったモノならどんな男の子も喜んで食べると思うよ」
「違うって言ってるでしょ!!!もういい!もう作らない!」
美羽はそういうと自分の分の皿を俺の方へ置いてから、自分の部屋へ入っていく
俺はその後ろ姿を見ながら、誰に食べさすのかと考えながら食器を片づけに入った
コメントいただいてありがとうございます。
今のところちょっと時間が無いため返せてないですが時間ができ次第、返して行かせてもらいます。
それではこれからもよろしくお願いします。