第4話 お金持ちなあの人は社長さん
「お久しぶりです。沙羅さん」
「ああ。元気そうだな、楓太くんは」
俺は千夏に夢中の真美先輩からは見えない所で沙羅さんに挨拶をする
「大変ですね、社長自ら撮影現場に来るなんて」
「少し休憩ついでに来てみたんだ。それより、楓太くんはこんなところに?」
「ちょっと先輩に・・・」
「あぁ、あそこにいる綺麗な人か」
「千夏の大ファンだそうです」
「ほぅ」
俺は周りをキョロキョロ見渡すと、監督さんと目が合った
俺はペコっと頭を下げる
あの監督さんは星井 鈴の作品を映画化してくれている母の知り合いなので俺のことも知っている
「楓太くん」
「はい?」
「今から暇かい?」
「いえ、そろそろ講義がありますけど?」
「まぁ一回ぐらいサボってもいいだろう。ちょっとこの後付き合ってくれ」
「・・・はい。わかりました」
どうせ断っても無駄だから受け入れる
真美先輩にはメールで用事ができたとでも言っておけば良いだろう
俺はメールを打ちながら撮影しているチィ姉を見ると、楽しそうに演技をしている
「・・・」
「楽しそうにしているだろ?」
「ですね。このあとは何かあるんですか?チィ姉」
「確か・・・音楽番組に出るんだったかな」
「そうですか。あ、俺あそこの喫茶店で待ってますから」
「ああ。ちょっとしたら行くよ」
俺は沙羅さんに頭を下げ、監督の方にも頭を下げてから近くの喫茶店の中に入った
その喫茶店は少し古い感じの喫茶店で、小さな音で昔の曲が流れていた
俺はコーヒーを頼んで時間を潰していると、10分ぐらい経って沙羅さんが来る
「それで?どうかしたんですか?」
「いや、特に何もない。ただ楓太くんに久しぶりに会ったからね」
「そんなキャラでしたっけ?沙羅さん」
「いろいろあるんだよ。そういえば千夏、昨日も君の所に行ったんだって?」
「沙羅さんからも言ってください。自分の家に帰れって」
「私はそこまで制限する気はないよ。千夏のしたいようにさせる」
「マスコミにバレたらどうするんですか?」
「別に君たちはいやらしい関係でも無いだろう?それに小雪だっている」
「美羽は・・・まぁ2人で決めたことなので何も言わないですけど・・・」
沙羅さんは本当に何もやる気が無いのかコーヒーを飲みながら携帯を開く
俺はこれ以上言っても無駄だと悟り、ため息を吐きながらコーヒーを飲んだ
「そうそう、言い忘れていたんだが悠斗が日本に帰ってくる」
悠斗は高峯学園を卒業と同時に海外の会社に就職した
本人曰く、勉強ということらしく、その邪魔をしたくないのであまり連絡していない
「へぇ、元気ですか?」
「ああ、2~3ヶ月後ぐらいに帰ってくるって言っていたよ」
「そうですか。んじゃ暇なときにでもメールしてみます」
「そうしてやってくれ。それじゃ私はこの後仕事があるから行くよ」
「はい」
「本の方頑張って」
「はい、お互い」
「じゃ」
沙羅さんはお店から伝票を持って出ていく
俺もしばらくしてからお店を出て、今から授業に出るのもなんなので家に帰ることにした