第2話 衛生兵!!
「お兄ちゃん、ここは?」
「えーっと・・・これをこうして、こうやれば答えが出るかな」
「なるほど・・・・、それじゃこれは?」
「・・・考えなさい」
「わかんないんだもん・・・」
美羽は数学の宿題を前に頭を抱え、そして俺の方を涙目で見てくる
「美羽、嘘泣きしても騙されないから。ちゃんと考えな」
「ちぇ」
女の子ってのはどうして涙目で訴えれば、願いがかなうと思っているんだろう・・・美羽もそうだし、真美先輩もそうだし・・・チィ姉もそうだった
俺は女ってのが理解できず、パソコンのキーボードを打っていく
そして、美羽が本当に解けそうになかった時には横からアドバイスをして、答えに導いていった
「できた。疲れた~・・・」
「おつかれさま。冷蔵庫にシュークリームあるから食べてきていいよ」
「うん。お兄ちゃんは?」
「もう少しだけやってから食べるから先に食べていいよ」
「わかった」
美羽は頷いて、俺の部屋から出ていく
俺はもう一度パソコンの画面を見ながらキーボードを叩いていく
そして、少し時間が経つとインターホンが鳴り、すぐにドアの開く音がした
すると、さっきまで静かだった家が一気に賑やかになる
「美羽隊長、今日もお仕事頑張ってまいりました!!!」
「うむ!御苦労であった!千夏1等兵!」
「楓衛生兵はどこにいますか!美羽隊長!」
「楓衛生兵は只今パソコンという敵と戦っている!」
「真でありますか!」
「うむ。もうしばらくすると終わると言っていた!千夏1等兵、しばし待たれよ!」
「イエス!マム!」
俺は衛生兵でチィ姉の方が美羽より階級したなのか・・・と思いながらパソコンの電源を落とし、声のする所へ向かう
「うるさい、近所迷惑。あと衛生兵は戦えない」
「おぉ、楓衛生兵が帰還なさった!」
「御苦労、楓衛生兵。今後の活躍を期待する!敬礼!!!」
美羽とチィ姉はビシッっと俺に向かって綺麗な敬礼をする
さすが2人もトップアイドルなだけあって演技は上手い。そんな2人の演技をこんな間近で見れるなんて世間の人は羨ましがるんだろうけど、俺にとってはうるさいだけだ
「もういいから・・・チィ姉、ご飯食べる?」
「うん。いただきます」
「了解、んじゃ少し待ってて。美羽、勉強のあと片付けておきなよ」
「あ、うん」
美羽は食べていたシュークリームのクリームを口の端に付けたまま、俺の部屋へと入っていく
チィ姉はソファにドスッっと倒れ、深いため息を吐いた
「はぁぁぁぁ・・・・」
「おつかれ。今日は何かあったの?」
「うん。ちょっとトラブルがあってね。遅くなっちゃった。ふーちゃんの方は?」
「まぁ順調かな。大学の方も楽しいし」
「そっか~・・・・・・・・すぅぅ・・・ふぅぅ・・・」
「あ、お姉ちゃん寝ちゃった?」
「え?・・・ホントだ」
ハンバーグを持ってチィ姉の所に行くと、ソファに寝転びながら気持ちよさそうに眠っているチィ姉がいる
俺はハンバーグをテーブルに置いて、チィ姉を持ちあげた
「美羽、客間のドア開けて」
「うん」
「・・・よいしょっと」
チィ姉を布団に寝かせると、タイミング良く寝がえりを打ち、布団が乱れた
「なんかお姉ちゃん、子供みたい」
「はぁ・・・みたいじゃなくて子供でしょ。これ」
「あはは、ふぁぁぁ~・・・私も眠くなってきた」
「歯磨きなよ、美羽」
「うん・・・」
「こら、器用に立ったまま寝ない。ほら、行くよ」
俺は美羽の手を繋ぎ、洗面台へと引っ張っていく
美羽は半分寝ていて、半分起きているので歩けているのだが、今にもコケそうで怖い
「ほら、歯ブラシ」
「んん~…」
美羽はほとんど眠った状態で歯を磨く
そして、磨き終わると口を濯いだ
「お兄ちゃぁん…おやすみぃ…」
そう言ってさっきまで履いていたスリッパを履かずにペタペタと音を立てながら部屋に入っていった