第82話 夢の先に・・・
「・・・・」
レース場から家に帰るために自転車を車に乗せていた
俺も手伝いたいのだが、久々のレースで頑張りすぎて足が限界を超えていた
だから、中山さんに休憩してくれと言われて椅子に座っていた
「・・・俺、情けな」
「そんなこと無いよ」
後ろで声がして、振り向くとそこにはチィ姉がジュースを2つ持って立っていた
俺は少し横にずれて、チィ姉が座れるようにするとチィ姉がそこに座る
「おつかれさま、ふーちゃん」
「うん。どうだった?俺」
「すんごっくカッコ良かった。惚れ直しちゃった」
「それはどうも。で、チィ姉はどうするの?」
俺がこのレースに出たのはチィ姉に勇気を出させるため
自分では3位になって、チームメイトを優勝にさせたから十分勇気は出せたと思う
でも、ちゃんと勇気を与えられたかは心配だった
「今日ね、本当にここに来てよかったよ。ふーちゃんはものすごく頑張ってたし、その姿を見て色んなものを学んだ気がする
だからね、私も頑張ってみるよ。頑張って今度は私がふーちゃんに勇気を与える」
チィ姉は心に決めたように、笑った
俺もその笑顔につられて笑う
「それじゃこれから頑張るチィ姉にご褒美」
俺はチィ姉の唇にキスをするとチィ姉はビックリしたような顔をして、口に手を置く
俺はなんで今、チィ姉にキスをしたのか理解できなくて、それも一瞬だがチィ姉のことを違う見方をしていたことに対して恥ずかしくなって顔を反らす
「ふ、ふーちゃん・・・」
「・・・こ、これはご褒美。これから頑張る人への」
「・・・・うん!!」
横では嬉しそうに抱きついてこようとしてきたが、俺はチィ姉の頭を押さえながら、頭の中で色々と整理をしていく
「・・・ふぅぅ・・・よし。整理終了。チィ姉、これ以上しつこいと怒るよ」
「あぅ。・・・だって2カ月近くこんな風に遊んでくれなかったでしょ」
「関係ない」
「も~ふーちゃん、怖いよ。あ、わかった!大好きな私が芸能界に行くのが寂しいんだ」
「違う、疲れてんの。・・・あ、そうそう。その芸能界の話だけど、沙羅さんに頼んでおいたから」
「え?」
「よく分からない所でやるより、知ってる所の方がいいでしょ。それに沙羅さんの所なら美羽もいるし、沙羅さんの所だから信頼できる」
「?」
「だから、芸能界に出るんだったら沙羅さんの所。それ以外は俺は認めないって言ってんの。沙羅さんにはもうOKもらってるから」
「・・・わかった。それじゃ沙羅に言ったらいいんだよね?」
「うん。それじゃ俺は中山さんの所行ってくる」
今の雰囲気に耐えられなくなったので、俺は自転車を積んでいる中山さんのところに行く
そして、俺の姿を見た中山さんはからかう相手が来たという感じの顔をしていた
「ダメだよ、九十九くん。姉弟であれは」
「なっ!?あ、あれは違うんです」
「大丈夫、大丈夫。おじさんは口硬いから。あはははは」
「だから、違うって」
「さてっと、千夏ちゃんもおいで~」
中山さんはチィ姉を呼んで車の中に入れる
俺は後ろの席に座ると、今までの疲れがドッと拭き出たように身体の底から睡魔が襲い始めてきた
その睡魔には勝てそうにないので少しだけ眠ろうと目をつぶる
すると、すぐに深い眠りまで行き、懐かしい夢を見た
その夢は俺がまだ小さい時で、チィ姉と美羽と俺がまだ普通に遊んでいた時の夢
いつもチィ姉が先に走っていって、俺と美羽がその後を追う
でも、今回の夢はいつもと違って美羽が俺より早く走っていく
そして、チィ姉の所に付くと2人で走っていく
チィ姉と美羽の方は手を振りながら、どんどん離れていく感じだ
そんな姿を俺は見ながら、悔しいとも悲しいとも思わず、ただひたすら2人が無事に進んでいくことだけを祈りながら見続けた
次で最終話になります。
最終話+あとがきですので、お楽しみに。
・・・サプライズは・・・ん~・・・