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第81話

 

「さぁお待たせしました!!!これより表彰式を始めたいと思います!」


 アナウンサーが楽しそうに叫ぶと周りは“うぉー!!!”と盛り上がった


「今回のレース!まさか、まさかの展開がありました!!そして、そのまさかの展開が何度もあったレースですが、そのレースを制した選手は!!!」


 少しの間、さっきまで騒がしかった空気がピタッと止まる

 俺はその空気がとても嬉しくて叫びそうになったが我慢して観客の方を見渡す

 楽しそうに表彰台を見ている者、次こそは自分が立つと心に決めて見ている者、応援していた者が勝って嬉しそうに見ている者、様々な顔があり、その中で俺はある顔を見つめる

 その顔は嬉しそうに涙を流しながらこっちを見ていて、勇気を貰ったのか覚悟が決まった顔をしていた

 そして、俺と目が合うとニコッと最高の笑顔を見せてくれた


「今回のレースの勝者は最後の最後にもっともレースを動かした選手!中山選手です!!!」


 アナウンサーがそう叫ぶと歓声が大きくなり、勝者を称える

 そして、俺は横にいる中山さんに拍手をすると中山さんは嬉しそうにトロフィーを掲げた

 近藤はその横で悔しそうにしていて、優勝した中山さんでは無く俺の方を睨んできていた

 近藤が中山さんに負けた理由は4つ


 レース最後の500mの所で俺は完全に近藤に負けていた

 でも、そんなことはレース前から承知済みだった

 だから俺はレース中に近藤と話をすることで、近藤に俺のことを知らせ、このレースは俺が勝つと言っておく

 そして、中盤辺りで俺が近藤に作戦をバラしたのは、それをされる前に近藤以外のチーム、つまり俺たちの勝利に邪魔なチームが作戦を聞くとそれを潰すために先手を取ると確信していたから

 そのチームが優勝経験のあるチームなら警戒もするし、近藤がいる時点で勝てないと思っている人はもしかすると近藤の助けをするかもしれない。だから近藤を1人にする必要があった

 ここで近藤、というか他のチームのミスが1つ


 2つ目は俺と中山さんのチームしか相手だと思っていなかったこと

 俺はレース前に中山さんの知り合い、山下さんにも近藤率いる実業団チームに勝つために協力をお願いしていた

 だから、近藤の敵は俺と中山さんだけではなく山下さんもいる

 そして、最後の18キロから7キロ近く引いてくれたのも作戦のうちで、近藤を1人にするためだ


 3つ目は最後のスプリントの時に俺の後ろでは無く横に出て勝負に出たこと

 横に出たために、俺が発射台ということに気付かず、後ろにいる中山さんが見えなくなったから


 そして、4つ目はスプリンターの力が発揮される距離、もしくは最高速度を維持できる距離は数百m

 もちろん、近藤は一流のスプリンターだし、自分の最大の力の距離ぐらいは知っている

 でも、残り数十キロの地点で、俺によってリズムを崩され、冷静ではない近藤は俺のアタックにつられて力を、その自分の力が出せる距離を超えた所で踏みこんでしまった

 そして、力を使いきった所で、俺の後ろにいる中山さんを発射させる

 見事にその4つすべての作戦が決まったからこその勝利だ



「まさかアシストに回るとはな」


 無事表彰式も終わり、舞台の裏に行くと近藤が話かけてきた


「誰も俺が優勝するとは言ってないですよ?」

「ッち。昔はそんなキャラじゃなかっただろ、おまえ」

「今回は絶対に負けられなかったですから」

「ふん、今度は絶対負けないからな」

「今度は無いですよ。俺はこのレースだけで疲れました」


 近藤はビックリしたように眼を見開き、怒りだした


「ふざけるなっ!勝ち逃げだと!」

「落ち着いてくださいよ、近藤さん。俺は勝ってないですよ」

「お前の思い通りになったことがムカつくんだ!」

「この作戦はあなたに勝つために皆で考えた作戦です」

「・・・・はぁぁぁぁぁ・・・どうするんだ?お前は」

「俺はもうレースに出ても優勝とかそういうのは目指しません。気軽に走ります」

「それでいいのか?」

「昔の俺ならまた優勝目指したんでしょうけど、今はロードバイクに乗ってることが楽しいのでそれでいいです」

「・・・・」

「走る喜びを再確認させてくれたのはあなたですよ?一旦レースから離れて気が付くこともあるんです。だからお礼言わせてください。ありがとうございました」


 俺は近藤に頭を下げると近藤は照れくさいのか、それともムカついてるのかよくわからないがジーッと俺の方を睨んでいた

 俺が笑顔で見返すと、取材陣が待つ所に歩いていく

 そして、途中に俺の方に振りかえって、顔を赤くしながら小さな声で「・・・すまなかったな、あの時は」と言って取材陣の所へ歩いていった




やっぱりこういうの難しかった・・・

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