第80話 ロードレース後半
レース残り30キロ地点
ようやく前との差が埋まり、逃げていた人を捕まえた
そして、俺がいる集団の中も人数が減り、俺と中山さん、中山さんの知り合いの山下さん、そして近藤。後ろのメイン集団とは10分以上も離れているので実質、この5人の中からレースの勝者が生まれる
「・・・おい、九十九。疲れてるのか?」
横を見てみるとニヤニヤ笑いながら近藤が並んできた
俺はそれを無視して、ボトルケージからボトルを取って水分を補給する
「ふん、所詮そんなものか」
「・・・・」
俺が相手をしないとわかったのか近藤はスーッと前の方に進んでいく
近藤が前に行くとちょうど中山さんが後ろに下がってきて、俺は小さな声で話かける
「・・・中山さん、残り何キロぐらいですか?」
「はぁ、はぁ、・・・ふぅ・・・たぶん残り20~23キロかな」
「それじゃ」
「うん」
俺は要件を言うと、前にいる山下さんと位置を変わるために背中をポンッと叩いて位置を変わる
今の先頭集団の状態は一番前に近藤、俺、山下さん、中山さんの順になり、その中でクルクルと先頭を交代していく
集団の中でクルクルと先頭をローテーションするのが暗黙のルールなので、しばらくはクルクルと先頭交代をして、残り18キロ地点まで走った
残り18キロを超えた時、急に俺の後ろにいた山下さんがペースを上げて逃げ始めた
急にペースが上がったため、少し近藤が遅れたがそこは実業団エースの力でしっかりついてくる
「チッ・・・ふざけんなよ」
小さな声で近藤がつぶやいたので、俺は心の中で笑い、ペースを上げる中山さんの知り合いの後ろを走っていく
そして、7キロぐらい先頭を譲らずペースを上げ続けた、山下さんは大きく息を吐いて手を上にあげて横に避ける
「おつかれさまです」
俺はその空いた道を立ち漕ぎで更にペースを上げて抜いていく
周りの観客は山下さんの頑張りを称えて、拍手が送られた
その中を俺、中山さん、近藤の3人で進んでいく
さっきまで余裕をかましていた近藤も山下さんの全力、そして今の40キロを超えるスピードになると余裕をかますほど楽ではない
そして、そのスピードの中でも3人で先頭を変わっていくが、近藤が先頭に出てもすぐに俺が抜く
そのたびに近藤は舌打ちをしているみたいだった
俺は近藤の表情を見る度に、昔と変わらず、リズムを簡単に潰せる人だなぁと思いながら走る
レース残り距離5キロになると、俺は疲れた体にムチを入れる
もちろん近藤もついてきて、中山さんも付いてくる
俺の予想では近藤はゴール前数百mぐらいのスプリントと言う、6~70キロ近くまで出す短距離勝負に出てくるだろう。このスプリント勝負になると俺どころか日本の中では勝てる人はほとんどいない
もちろん、1対1での勝負だけど。
「近藤ぉ、負けるなぁ」
「近藤さん、負けるなぁ」
「中山さん、頑張れー」
「小僧、頑張れー」
ゴールに近づくに連れて、周りからの歓声も大きくなっていき、残り2キロになると俺は一旦中山さんの後ろに付く
そして、残り900m近くになると俺は残りの力を振り出して、一気にギアを落としてペースを上げる
しかし、近藤は俺のアタックをすぐに察知していたのか、バッチリ横に付いて、俺のスピードを超えるスピードで横に並ぶ
周りの観客のすべての人がこれで、近藤の勝利を確信したとき、俺の後ろから突風が吹いた