表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/125

第8話 鈴ちゃんの嫌いなものはピーマンです

今日は俺が今まで3年間通ってきた中学校の卒業式だ

もちろん去年、チィ姉もここを卒業した


俺の中でやっと卒業できるという気持ちと名残惜しい気持ちが交差している



俺たち卒業生は体育館に集まり、無駄に長い卒業式が始まる

卒業式中は友達とコソコソ話したり、泣いている生徒を見たり、校長のズレたカツラを見たりと時間をつぶす

そして最後の最後で、校長が前に立っている時、ズレたカツラを見るのが最後だと思うと少し悲しくなった


卒業式が終わり、外に出るとクラブの後輩たちが先輩達を待っていて、たくさんの生徒がいた

まぁ俺は部活に入ってなかったら関係ないけど・・・

学校から出た後は友達とボーリングなどをして楽しんだ




(ふう)


帰り道、信号が赤になったので止まって待っていると後ろから聞き覚えのある声がした

後ろを向くと、笑いながら俺の後ろにチィ姉がいる

そして、その隣にはチィ姉と同じぐらいの美人な女性がいた


「今帰りなの?」

「うん」

「あれ?この子がさっき千夏の言ってた子?」

「そうだよ」

「ふ〜ん」


チィ姉の友達は俺をじろじろ見て、そして目が合うと笑った

顔はチィ姉並みに綺麗だが、なんでも見透かすような目をしている


「なるほど。なんとなく千夏が好きになった理由がわかる」

「はい!?」


俺はすぐにチィ姉の方を睨む

すると、チィ姉は手をブンブンと手を振って否定していた


「あ、やっぱりそうか」

「ほら〜ふーちゃんがそんな態度出すから」

「・・・外でふーちゃん言うの止めて」

「それにしても、学校一の美少女がまさかブラコンか」


チィ姉の友達は、どこか面白そうにニヤケていると思うと、俺に指を指してニコっと笑いながら注意してきた


「えーっと・・・楓太君だっけ?今年学園入るらしいけど、色々大変だから勉強しておいたほうがいいぞ」

「それは大丈夫だよ〜ふーちゃん私より頭良いもん」

「それは本当か?」

「嘘です。あり得ないですから」


チィ姉より頭がいいわけがない

そもそも、漢検・英検1級 TOEIC900点以上etc...を高校入るまでにすでに持っていた人は俺の知っている人でもこの人しかいない


「千夏は化け物レベルだもんな」

「そうですよ。この人の知能は化け物なんですよ」

「あ〜ひどい・・・ふーちゃんも沙羅(さら)も2人して私いじめる〜」


チィ姉は笑いながら言っていたがいつもと違い少し顔に曇ったように感じた


「それじゃ私はこっちだから。千夏、楓太君。じゃ」


チィ姉の友達の沙羅と言う人は違う道に入っていき帰っていく

そのあと、さっきまで無駄に明るかったチィ姉は家に着くまで何も話しかけてこないで、家に着くと自分の部屋に走っていった


しばらく経って、母さんが家に帰ってきたと思うと俺のところに走ってきて怒った顔で俺の胸倉を掴んできた


「楓!千夏ちゃんに何言ったの!」

「は?何も言ってないよ」

「嘘言わない!今すぐ仲直りしてらっしゃい!凄く落ち込んでたんだから!今すぐ行かないと夕食、私の食べさせるわよ!」

「わっ、わかったから離して・・・苦しい・・・」


やっと解放された俺はチィ姉が落ち込んでいる理由を思い出しながら、チィ姉の部屋へ向かう


「俺だけどチィ姉、入るよ?」

「・・・・」


ノックをしたが反応がないので勝手に開ける

すると、チィ姉はベッドの上で布団に丸く包まっていた


「何してんの?」

「・・・・・」

「あ〜もしかして、さっきの友達にブラコンってバレたこと気にしてんの?それならもういいから」

「・・・・・」

「はぁ・・・なんか言ってよ・・・」


何を言っても無反応のチィ姉にちょっと心配になってきた

俺はチィ姉のベッドの端っこに座って久々に入ったチィ姉の部屋を見ると色んなところに俺とチィ姉が写った写真が飾られていて、それ以外は何にもない部屋だった



「ふーちゃんは・・・私のこと化け物だと思ってるの?」

「は?」

「私のこと化け物でウザい奴に好かれたなぁとか思ってる?」


急に布団の中からチィ姉の声が聞こえてきた

俺が思っていた原因とは違い、チィ姉は俺と友達に冗談で言ったことを真に受けて落ち込んでいた


「それはさ・・・」

「正直に言って!嫌なら私やめるから!」

「・・・・チィ姉は確かに勉強も運動もなんでもできる化け物だよ。だけどさ、チィ姉はチィ姉だし、ウザいとも思わない。

それに俺のこと好きならそれでいいじゃん、今に始まったことじゃないし、それに・・・俺の中では最高の姉だと思ってるよ」

「・・・・・」

「ほらっ早く一緒に夕食作ろうよ。そうじゃないと母さんの食べることになっちゃう」

「・・・・ふーちゃん!」


チィ姉は布団から飛び出るように俺に抱きついた

あまりにも急すぎてビックリしたが何とか倒れずに済んだ


「私のこと・・・嫌いになったと思って・・・」

「大丈夫。チィ姉のこと嫌いにならないって。好きなままだよ。ほら、涙拭いて。夕食作ろうよ」

「うんうん・・・」


俺はチィ姉の涙を拭き取ってから、一緒に部屋を出ると、ドアの前に母さんが立っていた


「何してんの?母さん」

「盗み聞き」

「そんな正直に答えられても・・・」

「いやぁそれにしても、やっと楓も千夏ちゃんと真剣に付き合う気になったか〜鈴ちゃんは嬉しいぞ!」

「いい歳して自分のこと鈴ちゃんとか言うの止めなよ」

「いいじゃない。それに付き合うことは否定しないのね」

「別に付き合うとかそういうのじゃないよ」

「えっ!そうなの!ふーちゃん・・・」


後ろで小さくなって泣きそうな顔になったチィ姉がいた


「あ〜また楓が泣かした〜。知〜らない」

「なっ!ち、違うよ!」

「それじゃ付き合うんだ」


後ろでニヤニヤした母さんが立っている


「付き合うとかそういうのじゃなくて」

「違うんだ・・・私・・・」

「ち、違うって!あーもういい!俺一人でご飯作る!!」


結局、俺はそこから逃げるように走ってキッチンに向かい、鈴ちゃんこと母の苦手な食べ物をたくさん作って復讐し、チィ姉のほうは夜一緒に寝ることで決着がついた






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ