第78話 ロードレース
レース当日
春も近づいてきて暖かい日差しが射す
空は雲一つ無い最高のレース日和だ
「九十九くん、どう?調子は」
「絶好調ですよ」
「そっか、それはよかった」
俺と中山さんはレース前のアップをしながらレース前の雰囲気を楽しむ
レース会場には最近のロードバイクブームのせいもあってか、人が多く、祭りのような感じだ
そして、ある一部のテントの中ではサイン会みたいなこともやっている
「凄いですね、あの人の列」
「あ~、あれは近藤くんがいるテントだね」
「やっぱり人気なんですね」
「そりゃ日本ではトップクラスの実力者だからね」
「でも、レースは何が起こるか分からないから面白いんですよね?」
「もちろん」
中山さんは嬉しそうに頷き、飲み物を買ってくると言ってテントから出ていった
俺はイヤホンを耳に入れ、音楽を聞きながらアップをする
俺がアップをしていると肩を叩かれたので、振り向くと悠斗がいた
「おはよう、楓くん。邪魔しちゃったかな?」
「おはよう。邪魔どころか歓迎」
「あはは。どう?調子の方は」
「上々かな。あ、部品の手配ありがとう」
「いいよ。僕も楓くんに勝ってほしいしね」
「どうだろ?まぁあの列を作っているの人には勝ちたいな。ってスポンサーさんの前で言うのもダメか」
「ん~、今は悠斗として来てるしいいよ」
「あはは。それじゃ悠斗だから言うよ。このレースは俺のチームが貰う」
本気で言うと悠斗はニコッと笑って「頑張って応援してる」と言ってからスーツを着ている人たちとどこかに行ってしまった
そして、俺は音楽を聴くためにイヤホンを付けようとすると人のことをレッサーパンダをわざと間違える人の声がした
「千夏のためにこのレースを貰うか。カッコいいことを言うな、楓太くんは」
「言ってませんよ、そんなこと・・・というか、いつの間に・・・」
「さっきね。それにしても千夏のためにレースに出る、作家としてデビューする」
「そのことについては触れないでください・・・」
「おや?結構面白かったよ。初々しさがあったし、ストーリーも中々だったし、ものすごい売上じゃないか」
「それは宣伝のおかげだと思いますよ」
「まぁそれもあるだろうな。でも、本自体も価値はあると思うよ。読者としては」
「ありがとうございます。ってそれを言いに来たんですか?」
沙羅さんは前髪をくるくる回しながら、普通の男なら一発で惚れさせるような笑顔を見せてきた
「な、なんですか・・・怖いですよ・・・」
「酷いな、楓太くんは」
「あ、いや。すみません」
「まぁいい。それじゃこれ以上邪魔しても悪いから帰らせてもらうよ」
そう言って沙羅さんは外に出ようとした時、俺はあることを思い出して呼び止めた
「沙羅さん、ちょっといいですか?」
「なんだい?」
「これは俺の勝手な願いなんですけど・・・」
沙羅さんは俺の願いを聞くと「このレース、君のチームが勝てたら考えてあげる」と言ってどこかに行ってしまった