第77話 黒いロードバイク
家に着くと私服に着替えて、母さんの部屋のドアをノックした
「どうぞ」
中から眠たそうな声がして、俺はドアを開けると寝癖MAXの母さんが椅子に座っていた
「俺、レースに出ることにしたから」
「ふぁぁ~・・・ふ~ん、それだけでここに来たわけじゃないでしょ」
「この前の件、サインさせてもらおうかと思って」
「この前の件?・・・あ~小説か・・・本当にサインする気?」
「うん。覚悟は決めた」
「それじゃもう一度、確認。え~っと・・・」
母さんは机に乗っている紙の中から契約書を探し出して、俺の前に見せつける
「これにサインすれば、前払いで300万あなたの口座に入るわ。そんで、これ1作品だけ出して姿を消すこともできる。もちろん2つ目を書いてもいいけど」
「うん」
「まぁ出版社の方はこれが売れれば次書けって言ってくるけどね。これでもサインする?」
「うん、もう決めたから」
「そっ、ここにあんたの名前書いて、あとペンネームはどうする?ばれるの嫌でしょ?」
「ペンネームか・・・考えてなかったなぁ」
「私が適当にバレないように考えてあげるわ。それじゃ千夏ちゃんのためにレース頑張んなさい」
「うん」
俺は悩みながら、母さんが書いた契約書に自分の名前を書く
それを見た母さんは携帯を開いてどこかに電話をした
俺は部屋から出てロードバイクが置いてあるガレージに向かう
ガレージの中に入ると白いロードバイクの更に奥に置いてある黒いロードバイクを持ってくる
黒いロードバイクは傷だらけで白いロードバイクより小さい
この黒いロードバイクこそ、俺があのとき乗っていた奴だ
これを見ると俺が転倒した時の衝撃を思い出して辛そうな顔をするらしく、チィ姉が見えないように奥にしまったのだ
「・・・ふぅぅ・・・よしっ」
黒いロードバイクを見て気合を入れる
そうすることで、あの顔も事故のことも超えられるような気がしたから
俺は今まで奥でほったらかしたことを謝りながら、黒い自転車を洗った
そして、綺麗にし終わると中山さんの所に電話をした
読んでいただきありがとうございます。
現実の方がテスト期間に入ったので更新が遅れています、すみません。
次からは79話から連続投稿していきたいと思いますので、お許しいただきたいと・・・(笑)
それでは、これからもよろしくお願いします。