第75話 楓の覚悟
冬休みも終わり、学校が始まる
チィ姉はいつも通りの生活に戻るはず・・・だった。
だけど、情報はどこから漏れたのか知らない
ただ、分かるのはこれからはいつも通りの学園生活ができなくなると言うことだった
「ど、どうしよう・・・ふーちゃん・・・」
「どうするかはチィ姉が決めることだよ」
「・・・うん」
俺とチィ姉はもう2時間近く放送部の部室で話しあっている
時間的には2時間目の途中だ
今朝、いつも通り学校に向かい、校門を通り抜けるといつも以上の視線を感じた
その視線は俺ではなく、チィ姉の方を見ていてコソコソと話し声が聞こえた
なんとなく気になっていたが、俺とチィ姉は各教室に向かう
俺が教室に入ると悠斗がすぐに俺のところに来てコソコソ話していた理由が分かり、俺は授業をサボって放送室にいる
「何故かチィ姉のスカウトの件が何故か学園中に漏れている。これが問題だよね」
「うん・・・」
チィ姉はずーっと俯いていて、今朝の元気なんてどこかに飛んでいったみたいだった
俺はその姿を見て、一つため息をついてから大きいTVを付ける
画面には小雪が映っていて、近日に始まるドラマの宣伝をしていた
「チィ姉。また聞くけど、やりたい?やりたくない?」
「・・・」
「・・・」
「・・・やってみたい」
チィ姉は小さな声だったが、俺の目をしっかり見ながら言ってきた
その眼は本当にやりたいって気持ちがあったけど、どこか不安げな一歩踏み出せない感じ
「やってみたい・・・けど・・・」
「けど?」
「・・・・」
「・・・・・言ったよね?俺が背中を押してあげるって」
俺はチィ姉の前にしゃがみ、チィ姉の目を見る
そして、少し言うのは辛いような恥ずかしいような変な気持が湧いてきたけど、チィ姉に勇気を与えれるなら・・と思いながら言う
「2ヶ月後、俺は近くで行われるロードレースに出る。そのレースで上位に入る」
「え・・・でも、ふーちゃん」
「そうだよ、これは俺にとってすごい勇気のいることだよ。でも、俺はやるよ」
「でも・・・」
「大丈夫。心配しないで。これは俺が決めたことだから、自分でしたいと思ったことをするだけだから」
俺はできるだけ笑いながら言うとチィ姉もほんの少しだけニコッと心配してそうな顔で笑った
そして、俺は立ち上がって帰る準備をする
「それじゃ俺は早退するから。あ、そうそう、沙羅さんがここに来るとか言ってたから。よろしく言っておいて」
俺は放送室から出て外に出る
そして、悠斗にメールで早退することを先生に言ってもらうことをお願いしてある場所に向かった