第74話 お正月。
チィ姉の本音を聞いてから数日
あれからチィ姉はいつもと変わらない感じで俺にくっ付いてきたり、勉強を邪魔してきたりする
でも、時々寂しそうな悲しそうな顔をしたり、何かに怯えてる感じの表情が一瞬だけ出たりしていた
それは、まだチィ姉の中で芸能界に行く勇気が出ないっていうことだと思う
「ふーちゃ~ん」
「うるさい」
「ふ~~~ちゃ~~~~ん」
「・・・・」
「ふ~~~~~~~~ち~~~~~ゃ~~~ん」
「うるさい、何?」
「えへへ~」
冬休みの宿題をやっているのに後ろから何度も呼ばれる
俺がその声の方を振り向くとニコニコ笑っているだけで何も言わない
そんな状況が1時間近く続いていた
後ろのチィ姉は俺が前を向くとまた名前を言いだすのだが、時々シーンと静かになって気になって振りむくとチィ姉は何か思い悩んでいるような顔をしていた
そして、俺の視線に気が付くとまた嬉しそうな顔になる、という感じだ
「お年玉欲しいなぁって」
「俺の方が年下なんだけど?」
「おばちゃんじゃない!」
「何も言ってないでしょ・・・それじゃお年玉をくれるおばさんの所に・・・」
「殺すわよ?楓」
「うぉっ!?」
ドアの方を見ると母さんがどこから持ってきたのか、ぬいぐるみの首をギュっと握りしめていて顔は笑っていたが目が笑っていなかった
「はい、千夏ちゃん。お年玉」
「わぁ、ありがとうございます~」
「楓、玄関が汚れてる」
「あ、ごめん。後でしとく・・・じゃなくて、俺のは?」
「あ~・・・持ってくるの忘れた。私の部屋に来なさい」
母さんはそれだけ言うと部屋から出ていく
そして、横にいるチィ姉が驚きの声をあげた
「ふ、ふーちゃん!どうしよう!こんなに貰えないよ」
「ん?そんなに入ってたの?」
「諭吉さんが10枚も入ってる!」
「ん~いいんじゃない?普段からご飯とか家事とか毎日色々してるんだし、母さんの手伝いもしてるんだから貰っても」
「ん~いいのかなぁ・・・」
「俺が貰ってもいいよ?」
「ダメ!お母さまから貰ったものだもん!」
「それじゃ大切に使いなよ。俺は母さんの部屋に行くから」
「うん!!」
俺は部屋から出ていって母さんの部屋に向かう
そして、ドアの前で少し気合を入れてドアを開ける
「入るよ~」
「ようこそ。それで楓のお年玉は・・・これ」
母さんから白い封筒を渡される
俺はそれを開けると中には俺名義の通帳が入っていた
そして、通帳の中身を見ると300万入っている
「え?・・・これは?」
「楓のお年玉」
「えー・・・っと。これ全部?」
「そう。これを出せばの話だけど」
そう言って母さんは紙の束を渡してきた
それを受け取って紙を見るとこの前、俺がパソコンで打った小説だった
「小学生ぐらいだったかしら?楓が一回だけ書いた小説。まぁちょっとだけ訂正とか私がしてるけど」
「あ~・・・無くなったと思ってたら母さんが・・・てか、こんな小説だったかな」
「で、これを世の中に出す?出さない?」
「母さんの名前で出すのは?」
「無理、嫌」
母さんは手を横に振って、嫌な顔をする
そして、早く決めてくれと言う感じで紙とペンを渡してきた
「・・・・・もう少しだけ待ってくれない?考えさせて」
「了解。それじゃ決めたときにお年玉をあげるわ」
「わかった。それじゃ玄関、掃除してくる」
俺は部屋から出て玄関に向かう
そして、外に出ていた靴を棚に入れて箒で掃いたあと、お昼の準備を始めた
「才色兼備な姉と普通な俺」を読んでくださってありがとうございます。
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これも皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。
こんなに読んでもらうなんて・・・感謝感激。
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