第68話 座ったまま寝られますか?
「ねぇ、おいしい?」
「ん?うん」
23回目の同じ会話
俺が料理を口に入れるたびにチィ姉は同じ質問を何度もしてくる
料理の方は本当にうまくて、母が作った破壊兵器を忘れさせてくれるぐらいだ。というか、本当にさっきまで身体中がおかしかったのが、どんどん治っていく感じがする
「ふーちゃん、おいしい?」
「・・・うん」
「ほんとに?」
「これで24回目だよ?何回聞いたら気がすむのさ」
「何回聞いても嬉しいんだもん」
チィ姉は本当に嬉しそうな顔で俺の方を見てきて、人の皿に次々と料理を入れていく
そして、箸で料理の一つを掴んで俺の方に出してきた
「はい、あ~ん」
「そんなことしなくていいから・・・自分で食べなよ」
「ふーちゃん、あ~ん」
チィ姉の箸を無視してご飯を食べるとチィ姉は頬を膨らませて、自分で食べた
そんな感じで晩御飯を食べて、俺はお風呂に入って、いつも通りの勉強をする
勉強を始めてから20分ぐらい経つと、チィ姉が風呂上がりの頭にタオルを巻いて部屋に入ってきた
「ふぃ~・・・お風呂上がりは気持ちいいね~」
「湯冷めしないうちに寝なよ」
「わかってるよぉ~、それじゃふーちゃん。おやすみぃ~・・・」
「はい、おやすみ。・・・・って人のベッドで寝るな」
ベッドの方を見ると寝ている
俺のベッドで、それも掛け布団の上に
「チィ姉、ここで寝ちゃダメだって。自分の部屋で寝なよ」
俺はチィ姉を起こそうと揺らすが「うぃ~」とか「わぁかぁてるよ~」とかしか言わない
「起きて。って髪乾かしてないじゃん。枕少し湿ってるし・・・ほら、頭ぐらい乾かしなよ。はい、座って!」
「うぅぅ~・・・」
無理やりチィ姉を座らせて、俺が使っているドライヤーでチィ姉の頭を乾かしていく
チィ姉の髪の毛はこの前より少しだけ伸びていて、相変わらず綺麗な髪だ
それも、違うシャンプーを使ってるのか俺とは違う匂いがする
「あぁぁぁ~・・・ちゃ~んと・・・乾かしてねぇ、ふぅ~ちゃ~ん」
「なんで俺がこんなことしなきゃいけないのさ・・・」
「あぁぁ~・・・・」
「そういえば、この前なんで急に泣いたの?」
「んん~?何がぁ?」
「この前、急に泣いたでしょ?大声で」
「泣いてないよぉ~」
「いや、泣いてたから。理由は?俺が苛めたとかだけじゃないでしょ?」
「んん~・・・すぅ・・・すぅ・・・」
「座ったまま寝てる・・・」
俺はため息を吐きながらドライヤーのスイッチを切って、チィ姉をベッドに寝かせ、布団を掛ける
そして、押し入れの中から敷布団を出して、床に敷いてから電気を消した