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第57話 まさかいるとは思わないよね?

 

「ま、・・・・まって・・・」

「あれ?・・・あ、いた」


 廊下の中は人ごみで小さな美羽は隠れてしまう

 というか、あんな小さい高校生がいることに皆は疑問を持たないのだろうか・・・

 なんとか人ごみの中から美羽を引き寄せる


「あ、ありがとう・・・」

「もう少しでたぶんチィ姉の場所だと思うから」

「うん」


 俺と美羽は人の隙間を進んでいき、ようやくチィ姉の所についた

 後ろでは少し息を切らした美羽が息を整えようとしている


「はぁはぁ・・・ふぅぅ・・・お兄ちゃん、お姉ちゃんは何してるの?」

「そういえば聞いてなかったなぁ。それにしても・・・この列はすごいな・・・」


 チィ姉のいる教室の前には20~30人ぐらいの列があり、7割ぐらいが男の人だった

 予想通りって言えば予想通りだが、やっぱりチィ姉は人気者だ


「並んでたら時間ヤバいと思うけど・・・どうする?美羽」

「・・・」


 美羽は少し考えて、悔しそうな悲しそうな、どっちかわからないが首を横に振って俺の方を見てきた


「・・・よし、外に出よう。やきそば奢ってやるから」

「うん」


 俺は美羽の頭を撫で、外に出るために歩いていく

 後ろではやっぱり人ごみの中に消えたり、“うぅ~”“あぅ~”と変な唸り声が聞こえたりした

 そのたびに俺は振りかえり、探し出す


「うぅぅ・・・」

「ほら、美羽」


 俺ははぐれない為に手を差し出すと、美羽は少しだけじーっと俺の差し出した手を見て、結局制服の端を掴んだ


「こ、ここでいい・・・」

「そっか?んじゃ、離すなよ。美羽」

「うん」


 俺は人の間をスイスイと進んでいき、時々ちゃんと美羽がくっ付いているかを確認しながら外に向かった

 いつもなら5分もかからずに外に出れるのだが、人の多さと美羽の歩くペースに合わせていると10分近く経っていた

 それも、外も廊下と変わらないぐらい人がいて、どこかの祭りのレベルだった


「美羽、ちょっとここで待ってて。やきそば買ってくるから」

「あ、うん」


 俺は美羽を人ごみから離し、運よく開いていたベンチに座らせる

 そして、俺はやきそば屋をしているところまで走った


「すみません、やきそば2つ」

「はいはい~。って九十九くんだ」

「はい?」


 やきそばを売っている女の人の顔を見たが、覚えのない顔だった

 それに、確かこの屋台は3年生がしていた気がするからチィ姉関係でもない


「あの、どこかで?」

「あはは、君有名だよ?いつも星井さんとラジオしてるでしょ?」

「あ~・・・それで・・・」

「もちろん恋人騒動のときもあるけどね。はい、やきそば2つ。ん~おまけで100円でいいや」

「いいんですか?」

「いいよいいよ、どうせ私たち3年生は受験前の息抜きみたいなものだしね。あといつもラジオ楽しませてもらってるから、そのお礼」

「ありがとうございます」

「まいどあり~」


 俺は100円を渡して、お礼を言ってから小走りに美羽の所へ向かう

 ベンチに座っている美羽を見つけると、その周りに人がいる

 服装は私服なので、生徒では無くたぶん小雪のコンサートでも見に来たんだろう

 そんな冷静な判断をしていると、ふと沙羅さんが制服を渡すときに小さい声で言った言葉を思い出した

 “もし、小雪だと一般人にバレた時は千夏にこう言ってもらう“チィ姉、世界で一番好きだよ・・・”と言っていた

 もしチィ姉にそんなことを言ったら・・・恐ろしい生活が待ち受けるのは確実だ。考えたくもない

 俺は走って美羽の所に向かった


「美羽」

「あ、お兄ちゃん」

「誰?」

「すみません、この子の兄みたいな者です。行こうか、美羽」

「あ、うん」


 俺は美羽の手を引きながら歩く、後ろでは何か言っているが無視して離れる

 ある程度離れたところまで来ると止まる


「ごめんな、急に引っ張ったりして」

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・ううん」

「もしかして・・・バレた?」

「俯いてたから大丈夫だと思う・・・」

「そっか、よかった」

「・・・手」

「手?」


 手に何か付いているのかと思って見てみると俺の手にも美羽の手にも何も付いておらず、ただ繋いでいるだけだ


「手・・・」

「あ、ごめん」


 強く握っていたのかと思って急いで離す

 すると美羽は何故か俺の手をじーっと見てきた


「俺の手に何か付いてるのか?」

「え?あ、ううん。それよりやきそばが・・・」


 さっき走ったからやきそばを1つ落としてしまったのか、2つ持っていたのに1つだけになっていた

 俺は別に今やきそばを食べたいと思ってないので美羽に残りのやきそばを渡す


「え、いいの?」

「いいよ。はい、割りばし」


 俺と美羽は近くに立っている木の下に座る

 美羽はゆっくりながらもやきそばを食べていたが、チラチラこっちを見てくる


「ん?何」

「い、い・・・しょ・・・」

「遺書?」

「一緒に食べる」


 美羽は顔を赤くしながら、やきそばを割りばしで挟みながら俺の方に向けてくる

 俺はそのまま食べるのは気が引けたが、美羽の目を見ると必死さが伝わってきて少し悩んだがそのまま食べる


「ちょっと冷めてるけど、うまい」

「・・・・」

「美羽?」

「え?」

「どうかした?ぼーっと箸なんか見て」

「う、ううん!なんでもない!!」


 美羽は慌ててやきそばを口の中に入れていく

 そして、喉に引っかかったのかむせた

 俺は美羽の背中を擦りながら、あと何分ぐらい美羽と遊べるか考えながら擦っていた



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