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第53話 星井 鈴

 

 文化祭2日前になると授業は一旦中断し、文化祭に向けて色んな準備をする時間が設けられる

 廊下は看板や屋台のための準備などで足の踏み場もない状態にまでなっている

 そして、俺は昼ごろに学校に着いた

 

「おはよう。楓くん」

「おはよう。廊下すごいな」

「そうだね、足の踏み場もないって感じだね」

 

 俺たちのクラスはこの教室を使う

 机を並べて、そこに各自持ってきた漫画などを置いて、あとはお茶などを売るだけなので準備は前日で終わる

 だから、皆は適当な時間に来て勉強する者、友達と話す者、出席したことだけを担任に知らせてすぐに帰る者と色々だ

 そんな俺も昼ごろに来て出席だけ久美ちゃんに言って帰るつもりだ

 

「楓くんはもう帰るの?」

「そのつもり。どうせここにいても意味無いし。悠斗は?」

「僕はここにいるつもりかな、あとで姉さんが知らせたいことがあるって言ってたから」

「そっか、んじゃまた明日」

「うん、また明日」

 

 そう言って俺は教室から足の踏み場もない廊下を進んでいき、靴箱で靴を履き替えてさっき来た道を引き返す

 昼時で学生服を着た人は俺以外いない、と思っていたが結構同じ制服を着た生徒たちが帰っているみたいだった

 家に着いてドアを開けると母さんが勢いよくリビングから顔を出した

 

「はぁぁ・・・楓か・・・」

「息子にため息つくの止めてよ」

「千夏ちゃんは?」

「さぁ?文化祭の準備で忙しいんじゃないの?」

「お昼どうしよう・・・今日作ってくれてないの・・・」

 

 母さんは悲しそうな顔をしながらソファに座りTVに目を向ける

 自分では作る気がないらしい、まぁ作ったところで食えるもんじゃないのだが・・・

 

「お腹減ったわ・・・」

「何か食べに行けばいいでしょ」

「そうね、ファミレスにでも行こうか、楓」

「賛成」

 

 俺は自分の部屋に入って着替え、リビングに行くと無化粧だが一応ペンペンに跳ねた髪の毛は直した母さんが玄関で待っていた

 俺と母さんは近くのファミレスに入り、適当に注文する

 注文した物が届くまで壁にくっついているTVを見ていると番組で星井 鈴の本が紹介されている

 内容は大絶賛だ

 

「相変わらず大絶賛の爆発的な売り上げだなぁ・・・」

「まぁね」

「またドラマとか来てんの?」

「1つ前の本にドラマの話来てたわね」

「へぇ」

「そろそろやると思うわ」

 

 母さんは特に特別なことじゃないって感じで頼んだものを食べ出す

 そして、何かを思い出したのか食べるのを止めた

 

「そういえば、小雪知ってる?」

「アイドルの?」

「そう、それじゃあの子が昔、近所だった琴吹さんとこの子って知ってた?」

「夏休みに会ったから知ってる」

 

 母さんは俺が知っていることにつまらなそうな顔をして、再びご飯を食べ始めた

 

「次のドラマのヒロイン、あの子なのよ」

「へぇ~。でも、1つ前の本って確か高校生じゃなかったっけ?設定」

「別にもう中学2年なんだからできるでしょ、高校生ぐらいの役ぐらい」

「結構見た目に差あると思うんだけど・・・」

「そこはプロの仕事よ、なんとかするわ。それに本人がやりたいって言ったらしいし」

「美羽が?」

「あの子、あの年であれだけ有名でしょ?まったくと言っていいほど学校行けてないのよ。だからドラマの中だけでもってことらしいわ」

「ふ~ん、有名人も大変だ」

「ほんとほんと」

 

 母さんは人事みたいにしているが、自分もものすごい人だとわかっているのだろうか・・・

 母さん曰く、本を書くこと自体は趣味の一環でやっているので周りの声なんて関係ないらしい

 ただ、作品が有名になりすぎて自分のことがバレると自由に旅ができなくなることだけが唯一の心配事らしい

 

「千夏ちゃんも有名人になれるのかしらね~」

「なれるでしょ、あれさえ無ければ」

「ブラコンねぇ・・・外では隠せてるんでしょ?」

「まぁなんとか」

「それじゃイケルわよ。まっ機会が無いと芸能界デビューなんてできないと思うけど。すみません、コーヒー1つお願いします」

 

 そんな感じで母さんと2人で久々の外食をした

 そして、食べ終わり会計も済むと母さんは出版社の方に用事があるとかなんとかでタクシーに乗って向かった

 

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