第51話 ドッヂボール
夏休みが終わると体育祭・文化祭が近づいてくる
高峯学園の体育祭はドッヂボール大会みたいな感じで簡単に済まして、文化祭の方に力を入れているので、体育祭ではなくドッヂボール大会だ
そして、今日がそのドッヂボール大会なのだが、クラス対抗で全学年ランダムで予選4組を決め、1組だけ決勝トーナメントに出場できる
今、俺のクラス1-3は2-3が相手で試合をしているのだが、2人だけあり得ない強さを引き出していて残りは俺、悠斗しか中にいない
「なんで避けちゃうんだろうね」
「そりゃ野生の本能とかじゃないのか?」
「なるほど、納得したよ。楓くん」
外野からは「早く当たれ~」と言われ続けている中、俺と悠斗は敵の組の2強「星井 千夏」「高峯 沙羅」の投げる球を避け続ける
球威こそは男が投げるのに劣るが、回転のかかった玉なので取ろうとすると弾かれてアウトになる
しかし、そんな玉で20人近くいる組の人数を俺と悠斗まで減らすのは難しい
「楓太くん、いい加減当たらないか?」
「それは部長命令ですか?」
「いや、先輩としてだ」
沙羅さんも当てる気が無いのかさっきまでの球威は無い。ただ回転数は恐ろしいが・・・
「当たらないなぁ、ねぇ当たって?」
チィ姉は媚びるようにウィンクを俺たちにしてきたが効果はない
しかし、外野・観客には効果抜群で色んなところから「うぉーー」とか危ない声が聞こえる
そう、俺たちの組がここまで減らされたのはチィ姉のこのウィンクのせいだ
これで、男たちは全滅。
そして、女の子たちは・・・
「楓太くん、悠斗。いい加減当たらないか?」
沙羅さんが少しだけ鋭い目をすると女の子たちが叫ぶ
男子は学年のアイドル チィ姉、女子はクールな所がカッコいいと評判の沙羅さん
この2人でほとんどのクラスは壊滅となる
それも2人とも運動神経もいいので、普通に戦っても勝てるかは微妙なところだ
「あっ!・・・ごめん、楓くん」
沙羅さんが本気で回転をかけたボールはカーブして悠斗の腕に当たった
すると、沙羅さんとチィ姉は獲物が1匹になったので嬉しそうな顔をした
「これで楓太くん1人だけだな」
「でもボールはこっちにありますよ?」
「本気で狙ってきてもいいぞ?」
「それじゃ遠慮なく!」
俺は構えている沙羅さんではなく、ニコニコしてこっちを見てくるチィ姉の方に本気で投げる
「きゃっ!?」
「あぶないっ!!」
俺の投げたボールはチィ姉にまっすぐ飛んでいった
完全に当たっていたコースにも関わらず、チィ姉とボールの間に1人の男性が入ってきて顔面に当たる
その男性は鼻から鼻血を出し、起き上がらない
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
周りの観客はコート上に倒れている男性を見て、唖然としている
そして、俺もまさかチィ姉を顔で庇うとは思っていなかったから唖然としてしまった
しばらく、倒れている男性を見ていると俺の脚にボールが当たる
「あ・・・」
「ふー・・・じゃなくて、楓くん。よそ見はいけないよ」
「いやいや、千夏先輩。その人のこと見てあげましょうよ・・・鼻血出てまで庇ったんだから・・・」
「わっ、だ、大丈夫??」
チィ姉は倒れている人の所に行って、心配そうに見ていたが教師が来て男性は運ばれていった
あれから、何時間か経ってドッヂボール大会も終わった
チィ姉を庇った男性は鼻血を出してちょっと気絶しただけで大丈夫という報告を聞いて安心した
そして、ドッヂボール大会を優勝したのは2-3のチィ姉のクラスだった