第49話 東京、それは日本の首都です。
「気持ち悪かった・・・」
「ごめんね。お兄ちゃん」
「いや、慣れてるからいいけど」
チィ姉、俺、小雪(美羽)と座りたいところなのだが、座席が2つしかないので俺は横の列の席に座る
横の席ではキャッキャッと楽しそうに2人は昔話をしている
時々、俺に振ってきては俺をネタにキャッキャッ盛り上がる
横目で小雪を見ると、この美羽があの小雪とは思えない
小さい時はいつも俺とチィ姉の後、というか・・・チィ姉の玩具だったあの小さい美羽が今では日本で知らない人はいない女優兼歌手の小雪だとは本当に思えない
「美羽、じゃなくて小雪さん」
「美羽でいいよ。お兄ちゃんにはそう呼ばれたい」
「んじゃ美羽。なんで美羽じゃなくて小雪って名前?」
美羽は少し苦笑いをしながら答えてくれた
「美羽って名前で最初は活動してたんだけど・・・。どうしても恥ずかしくて、社長さんが別の名前を付けたらどうか?って言ってくれたの。それで、名前付けることになったときに、ちょうど外で雪が降ってて、まだ・・・その・・・小さかったから“小雪”ってなったの」
「へぇ~」
「美羽ちゃんはそのままがいいけどね~」
チィ姉は美羽に抱きつく
チィ姉は普通の身長だが、美羽は小さいので覆う形になってしまっている
「お、お姉ちゃん、苦しいよ」
「あはは、ごめんごめん」
「そういえば、美羽は今どこに住んでるんだ?」
「東京だよ」
「都会だな」
「都会だね~」
特に意味は無いのだが、都会って聞くだけで何故か美羽が少しだけ大人に見えた・・・気がした
俺は美羽をボーっと見ていると、美羽と目が合ってニコっと笑うと美羽はパッと頬を赤くして目を背けた
それから、しばらく俺とチィ姉と美羽とで話していると前のドアから人が通ってくる
「小雪ちゃん、そろそろ」
「あ、もうそんな時間なんだ」
「美羽ちゃんのマネージャーさん?」
「うん、私がデビューした時からしてくれてる小牧さん」
小牧さんは俺とチィ姉を見ていて、俺と目が合うと頭を下げてきた
俺もチィ姉もそれにつられて頭を下げる
美羽は席から立って帽子を深く被った
「お兄ちゃん、お姉ちゃん。私行くね」
「うん、美羽ちゃんまたね」
「ああ、それじゃ頑張って。美羽」
「うん、ばいばい」
手を振りながら小牧さんのあとに付いていき、見えなくなった
そして、俺はさっきまで美羽が座っていた席に戻る
「懐かしかったね、美羽ちゃん」
「だね。でもまさか小雪が美羽だとはねぇ・・・」
「私は気が付いてたよ?」
「嘘は良くないよ、チィ姉」
「嘘じゃないもん。美羽ちゃんにサイン貰った時に向こうも私に気が付いてくれてたよ」
「はいはい、そういうことにしといてあげる」
「あ~、ふーちゃん、信じてないでしょ。ほんとなんだから」
チィ姉の言っていたことが本当だろうと嘘だろうと正直どうでもよかったが、チィ姉は意地になって言い続けて終いにはいじけてしまった
イジけたチィ姉は下りる駅で何故か俺に反抗して下りないなどと言ったが、無理やり下し最寄駅までの電車に乗るとチィ姉は眠ってしまった
「起きろ、こら」
「ん~・・・すぅすぅ・・・」
「チィ姉、起きてって」
「んん~・・・もうちょっと・・」
あと一つで到着なのに横で爆睡してしまっているチィ姉がいる
俺は必死に起こしにかかるが起きる気配がない
そして、駅に着くと俺は自分の荷物、チィ姉の荷物を両手で持って、チィ姉を背中に乗せて電車を下りる
もちろん、そんな奇妙な姿は周りの人の注目の的になってしまい、またややこしいことがあるのかと思うとだるくなっていく
「ん~・・・うどん・・・」
「うどん?」
「むにゃむにゃ・・・」
背中では、うどんが関係している夢の世界に入っているチィ姉が居て、ここにいてもしょうがないので俺は気合を入れ直し駅から出て家を目指した