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第45話 お父様

 

 チィ姉が部屋から出ていって数時間が経つ

 夏だから日が落ちるの遅いため何時か忘れることがあるがそろそろチィ姉が帰ってきそうな予感がする

 窓から日が落ち始めているのを見ていると勢いよくドアが開いてチィ姉がズシズシとこっちに向かって歩いてきた

 

「お、おかえり」

「ただいま!」

 

 なんとなく怒っているのはわかるけど、一緒に出なかっただけでここまで怒るものなのだろうか・・・

 それとも外で何かあったのだろうか?

 とりあえず、今は俺から聞くのは止めておくことにした

 チィ姉は少し汚れているショルダーバッグを机に置いてからドスンと近くの椅子に座り、TVを付けるとブスッとした感じで見続ける

 

「・・・・」

「・・・・」

 

 日も落ちて辺りが暗くなるとようやくチィ姉はこっちの方をチラチラ見始め、いかにも話を聞いてくれ!といった感じの目線をこっちに寄せてくる

 

「・・・どうかしたの?チィ姉」

「何でも無い」

「そっか。なんでも無いのか」

「・・・・いじわる」

「ん?何か言った?チィ姉」

 

 もちろん何を言ったかはよく聞こえたが、ここはあえて聞き返す

 すると、チィ姉は頬を膨らませてこっちを睨んでくる

 

「・・・はぁ、そんな睨まないでよ。ご飯食べたら話聞いてあげるから行こう」

「・・・うん」

 

 時間も時間なので俺とチィ姉は部屋から出て、バイキング式でご飯が大量に置かれている場所まで歩く

 その間、チィ姉は静かに後ろに付いてきてご飯を食べている間も食べる量こそ変わりなく食べていたがテンションはあまり高くなく、静かにパクパクと食べていた

 ご飯を食べ終わると俺とチィ姉は部屋に戻り、チィ姉は机に置いてあるバッグを手に取りベッドに座った

 俺はその横に座り、ご飯前に話を聞くという約束をしたのでチィ姉が話しやすいように促す

 

「それで?チィ姉はどうして怒ってるの?」

「・・・・ナンパされた」

「ナンパ?」

「うん」

 

 チィ姉は俯きながら頷いた

 俺はもうちょっと深刻な悩みかと思えば、ナンパという答えに少し拍子抜けしてしまったがなんとか表情に出さずにできた

 

「ナンパならいつもされてるでしょ」

「しつこくされた」

「しつこく?」

「一回断ったのに何度も誘ってくるの、だから走って逃げたらこのバッグが落ちて・・・」

「落ちて?」

「・・・踏まれた」

「あ~だからそれ汚れて・・・そういえばチィ姉、昔からそのバッグ大切そうにしてるのは知ってるけど何か特別な思い出とかあるの?」

 

 俺が誕生日プレゼントとしてあげた覚えもない

 母さんがあげたってのはありそうだけど・・・なんとなくそんな感じはしない

 

「・・・・・・」

「まぁ話したくないならいいけど」

「・・・お父様から貰ったの」

「お父様?・・・あ~俺の方のか」

「うん・・・」

 

 チィ姉は俯きながら手に持っているバッグの汚れている所をハンカチで綺麗に拭いていた

 

「チィ姉、俺以上に父さんから結構プレゼントされてたでしょ?」

「・・・・最後にもらったのがこのバッグなの」

「あ~なるほどね、だからそんな大事に」

「・・・うん。ごめんね・・・」

「そんな謝らなくても、別に俺も母さんも気にしてないって」

「・・・・」

「てか、あの人が勝手にしたことなんだからチィ姉は気にしなくてもいいよ。」

 

 俺がそう言うとチィ姉は小さく頷いた

 それから時間が経って、チィ姉はお風呂に入って今、横で眠っているのだが・・・

 

「取れない・・・」

 

 チィ姉は俺の手を掴んでいるのだが、俺が離そうとするとチィ姉はものすごい力で握ってきてお風呂にも行けない状態だった

 

「はぁ・・・寝よ・・・」

 

 俺の腕を解放するのを諦めてチィ姉の横に寝転ぶ

 横では気持ちよさそうにスゥスゥと寝息を立てながら寝ているチィ姉がいるのだが、今思えばチィ姉はどうしてあの事が自分のせいだと思っているんだろう

 あれはあの人が勝手にしたことだ

 

 俺はそんなことを考えているといつの間にか眠ってしまった


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