第40話 普段怒らない人が怒るとかなり怖い
「で?」
俺とチィ姉は音楽室から出て、一緒に家に帰る
そして、しばらく歩いて人気も無くなった頃にチィ姉は俺の方を見てきた
「で?とは?」
「なんでふーちゃんは音楽室にいたのかな?」
なんか目が怖い・・・
「ちょっとベートーヴェンに会いたくてね」
「・・・・」
「さっきのは嘘で、急にピアノを弾き・・・」
「ふーちゃん」
嘘を嘘で重ねればいつか本当になると思っていたのだが、チィ姉は今まででトップ10に入るぐらいの怖い目で睨んでくる
「正直に言おうよ、ふーちゃん」
「・・・目が怖い。チィ姉怒ってる?」
「怒ってない」
「でも目が・・・」
「ふーちゃん」
「わ、わかったから言うから、睨まないで・・・」
普段優しい目で見られてる分、こう睨まれると慣れてないから怖い
「えっと・・・とりあえずこれ見て」
ポケットの中から今朝の手紙をチィ姉に見せるとキツイ目のまま、それを受け取り中身を見る
しばらくジーっと手紙の中を見ていて、顔をあげる
「それに書いてたから音楽室で待ってたの。まぁ結局誰も来なかったけどね」
「・・・・」
「わかってくれた?」
「・・・うん」
「でもちょっとは期待してたんだけどなぁ・・・本物のラブレター」
「中学生のとき、入ってたでしょ?」
「入ってたけど、4割チィ姉からで6割嫌がらせだよ・・・」
中学の時、月に5回ラブレターをもらっていたけど2回はチィ姉
3回は嫌がらせ、もしかするともっと多かったかもしれない
今日みたいな放置が一番多くて、あとは殴られたり怒鳴られたり・・・
正直、中学時代のおかげで喧嘩も多少は強くなった。もちろん避けるに関して
「ん~・・・私からのは受け付けないのかぁ」
「受け付ける受け付けない関係無く、家でも一緒だし別に良くない?」
「もしかしてそれは私たちはすでに付き合ってるって・・・」
「違うよ、姉弟って意味で」
「うぅぅ~・・・だよね、うん」
「何?」
最後の方は声が小さくて聞こえなかったがチィ姉は何も言わずに横を歩く
俺ももう聞く気がないので歩こうとするとチィ姉はこっちに振り向いて手紙を見せつけてきた
「それにしてもこの手紙は誰が出したんだろうね」
「たぶんチィ姉のファンだと思うけど・・・シャイな女の子ってことも」
「あはは。シャイな女の子って、それ私のことでしょ」
「はい?」
「だから、シャイな女の子ってのは私」
「・・・シャイな女の子が人の布団の中に入ってこないよ」
チィ姉は“えぇ~っ”と不満そうに言いながら腕に抱きついてこようとしてくる
俺は抱きつかれないように抵抗しながらチィ姉と家に向かって帰る