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第38話 千夏の自転車攻略作戦

 

「ふーちゃん!ふーちゃん!」

 

 日曜日の朝、チィ姉は俺の部屋に飛び込んできた

 

「ん・・・うるさい・・・」

「ふーちゃん~、起きて~」

「んん・・・ふぁぁぁ・・・何?」

 

 さすがに体を思いっきり揺らされると起きないわけにはいかない

 体を起こすとチィ姉は嬉しそうに俺の横に座ってきた

 

「あのね、私自転車に乗りたいの!」

「・・・ふ~ん、頑張ってね。おやすみ・・・」

「あ、寝ちゃダメ!」

 

 布団の中に入るとチィ姉も入ってきて密着してくる

 

「暑い・・・冬なら歓迎するから今は出て」

「ホント?冬ならこうしていいの?」

「・・・・・そんなこと言ってない」

「言ったよ~」

「どうでもいいから出て・・・自転車乗るんでしょ、頑張ってね・・・ふぁぁぁ」

「あ、寝ちゃダメだってば。教えてよ、ふーちゃん」

「教えてって・・・今、眠たいから嫌」

「今じゃないとだめ、人に見られたくないんだもん」

「・・・」

 

 チィ姉は真剣な顔をして俺にお願いしてくる。布団の中で

 それも今にも抱きつこうとしてる

 

「・・・・・・わかった。それじゃ用意終わったら行くから先に行ってて」

「うん!」

 

 俺はチィ姉を部屋から出してジャージに着替え、外に出る

 すると、チィ姉はガレージの中から白い自転車を取り出している途中だった

 

「チィ姉、それ違う。それは俺専用」

 

 白い自転車はロード用の自転車で、もはや自転車の域を超える

 チィ姉は自転車を元の位置に戻す

 

「じゃこれ?」

 

 次、取り出してきたのは赤い自転車

 

「それは・・・」

「あ、小さいね。でもなんでこんなの置いてるんだろ?」

「・・・捨てるのもったいないから置いてるんじゃないかな。ちなみにチィ姉が乗るのはカゴ付いてるのだよ」

「うん」

 

 チィ姉はすぐに赤い自転車を置いてあったところに置いて、カゴの付いた自転車を取り出してくる

 そして、さっそくサドルに乗って自転車を漕ごうとし出す

 

「ちょ、ちょっとまだ早いって。落ち着いて」

「乗るの!」

「とりあえず待って」

 

 俺はチィ姉を自転車に乗せて後ろの部分を持ち、少し押していく

 

「わわわ、わわ・・・」

「足付くの早っ!?」

 

 俺が3歩分押しただけでチィ姉は足を付いた

 こうなるのは予想はある程度していたが、まさかこんあ早くなるとは思ってなかった

 

「うぅ~・・・怖い・・・」

「・・・やっぱり乗るの止める?」

「止めない、でも怖い・・・」

「・・・・・」

 

 チィ姉は運動神経がいいから、悪い人よりは早く乗れるはずなんだけど・・・

 やっぱり恐怖心があるとできることもできなくなるのだろう

 何度かチャレンジをしているとチィ姉のテンションが落ちていく

 

「やっぱりやめようよ、チィ姉。無理して乗るものじゃないよ」

「でも・・・ふーちゃんと一緒にどこか行きたいし・・・」

「それなら、俺の後ろに乗せてあげるからさ」

「でも・・・」

「とにかく怖い思いしてまでチィ姉は自転車乗ること無いよ」

「んー・・・」

「中入ろうよ、チィ姉」

「うん」

 

 チィ姉を家の中に入れて、少しだけチィ姉は汗をかいていたので着替えさせる

 そして、その間に俺は朝ごはんを作っていく

 そろそろ朝ごはんができそうなくらいに母が起きてきた

 

「珍しい、楓がこんな時間に」

「ちょっとね、はい朝ごはん」

「ありがとう、それで?千夏ちゃんは自転車乗れた?」

「乗れるわけ無い」

「そうよね~。そういえば楓はどのぐらい乗れなかったっけ?」

「1か月」

「そのぐらいか」

 

 母は昔の事を思い出したのか少し笑っている

 

「千夏ちゃんは覚えてるんだっけ?」

「電信柱にぶつかったことは知ってるけど、どのぐらいの衝撃なのかは覚えてないと思うよ」

「そう。あら?おはよう、千夏ちゃん」

「え、あ・・・おはようございます、お母さま」

 

 ドアの向こうからヒョコっと顔だけ出して俺たちの方を見ていたチィ姉は気まずそうにテーブルに座る

 なんだか微妙な雰囲気の中、俺はチィ姉に朝ごはんを出して自分も食べる

 ご飯を食べている間も微妙な雰囲気が流れていて誰も話さない

 

「ごちそうさま。楓、ちょっと仕事やり残しあるから部屋に来て」

「え・・・わかったよ」

 

 俺は朝ごはんの皿を流しに持っていき、皿洗いはチィ姉にまかせて母さんの部屋に行く

 

「やり残しの仕事って?」

「千夏ちゃんのことよ、たぶんさっきの話聞かれたわよ」

「だろうね」

「楓は話した方がいいと思う?」」

「かなり激しいぶつかり方だったしなぁ・・・」

「で、どっち?」

「別にいいんじゃない?話さなくても」

「まぁそこらへんは任せておくわ。それじゃ仕事やるから」

「うん、じゃ」

 

 母のオーラが変わったので急いで部屋から出て、自分の部屋に戻る

 そして、チィ姉が昔 自転車でぶつかった時のことを思い出した

 確かチィ姉が小3ぐらいで後ろに俺が乗っていた

 坂を一気に下っていて、ものすごいスピードが出ていたと思う。ちょっとチィ姉が俺に話しかけるために後ろを向いたときに電信柱に激突した

 俺とチィ姉は赤い自転車から飛ばされ、チィ姉はゴミ置き場に俺は坂をゴロゴロと転がり落ちていった

 自転車は大破し、チィ姉は奇跡的にゴミ袋がクッションとなって擦り傷程度で済んだのだが坂をゴロゴロと転がり落ちていった俺はろっ骨を数本、左腕、頭から出血と俺の体も大破した

 そのあと、俺は近所の人に助けられチィ姉はあの部分だけ記憶が忘れ、以降自転車が乗れなくなり、俺は頭から血を出しているにも関わらず記憶は鮮明で再び自転車に乗るまでに1か月かかり、今ではあの経験のおかげで2人乗りの時は、坂の途中に後ろを向くということはしたくてもできない状態になってしまった


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