第33話 やっぱり間違えられる・・・
「ちょっと来てくれるかな?」
「・・・はい」
放課後、家に帰ろうとするとメガネをかけた上級生であろう人に呼び止められた
俺は上級生の後に付いていくと、体育館裏へと連れて行かれる
「あの~・・・なんでしょう?」
呼び止められた理由はわかりきってるのだが、一応こういうのは礼儀として言ってみる
「掲示板のこと知っているかな?」
「・・・まぁ」
「あれはどういうことかな?」
「どういうことって・・・言われても・・・」
なんて答えたらいいのか分からない、それに本当のことを言っても信じてもらえる気がしない
「それじゃ質問を変えようか。星井千夏さんとはどんな関係?」
「部活で普通におしゃべりする関係ですよ」
「それじゃあの写真は?」
「プライベートで遊んだときのですね」
「・・・彼女なのかい?」
上級生の顔は会った時よりも少し眉間にしわが寄っている
というか、なんかこの感じは中学と同じだ
「どうなのかな?九十九 楓くん」
「・・・“ふう”です。俺と千夏先輩とは彼氏彼女関係じゃないですよ、安心してください」
「・・・」
上級生の顔がどんどん怖くなっていく気がする
やっぱり、同じ展開だ・・・
頭の奥に隠れていた中学時代の嫌な記憶が蘇ってくる
あれも確か掲示板に張り出されてファンの人に殴られ、蹴られとボコボコにされた
「・・・」
「何黙ってるの?」
「いや・・・なんとなく昔のことを思い出して・・・」
「何言ってるんだ?君は」
「とにかく、俺とチィ姉はそんな深い仲ではないので安心してください」
「チィ姉?」
「あ・・・」
つい、昔のことを思い出しながら喋ったせいで禁句ワードを言ってしまった
すると、上級生は更に眉間にしわが寄って、もう俺に殴りかかりそうな勢いというか、もう右手がこっちに向かってくる
「った!?」
襲いかかってきた右手は見事に左頬ヒットして、ものすごく痛い上に口の中が切れた
それも殴った張本人は何故かうろたえている
「っ!し、知らないからな!?」
上級生はそう言い残して体育館裏から走ってどこかに行った
俺は殴られた頬を押さえながら上級生の後ろ姿を見ていた
これはあとから知ったのだが、メガネをかけた上級生はチィ姉のファンクラブの会長らしく、優等生で喧嘩をしたことがなかったらしい
「ふ、ふーちゃん!?」
上級生が走り去ってから何分ぐらいボーっとしていたのか分からないが、チィ姉がこっちに向かって走ってきていた
「何!?どうしたの?大丈夫?あ、口から血出てるよ!」
「抱きつくのと一気に話すの止めて・・・」
「ご、ごめん・・・それよりも誰がやったの?私の・・・せい?」
俺のせいか、チィ姉のせいかよく分からないけど、とりあえずチィ姉が涙目になるとよく分からないがムカムカした物が湧いてくる
「ただの喧嘩だよ、チィ姉のせいじゃない」
「嘘、ふーちゃん喧嘩とかする子じゃないでしょ」
「ん~・・・肩がぶつかって、いきなり殴られたんだよ」
「・・・・」
「大丈夫、さっきも言ったけどチィ姉のせいじゃないから。気にしないで」
「でも・・・」
チィ姉は納得できないのか、微妙な目で俺の方を見てくるがじーっと見つめ返しているといつも通りのチィ姉の顔に戻った
「ここでこんなことしてたらまた何書かれるか分からないから、帰ろうよ」
「わかった。・・・でも、私ちょっと晩御飯の材料買ってこないといけないから、先に帰っててね」
「あ・・・うん、それじゃ」
チィ姉は校門を出た辺りで帰り道とは違う道の方へ歩いていった
俺はその後ろ姿を見ながらため息をつく
「はぁ・・・耳たぶ触る癖治ってないな・・・」
チィ姉は何か無理をしているときはよく耳たぶを触る
昔、俺がそれを言ってみたところ本人はビックリしていたので無意識なのだろう
たぶん、これを知っているのは俺、母さん、あとチィ姉本人ぐらいだ
俺はチィ姉の後ろ姿が見えなくなると家の方へ歩いた