第32話 掲示板?
「どう!今日は」
「・・・やっぱりするんだ」
「当り前でしょ、ふーちゃんの好きな髪型は私の好きな髪型なんだから」
今日のチィ姉の髪型は昨日俺が好きと言った後ろ髪を2つに分け、それを前に出して胸辺りまで垂らしている2つ結びとかいう髪型だ
「どう?なんか幼く見えない?」
「自信ないならしなきゃいいでしょ」
「ふーちゃんの感想はどうなの?」
「別にいいと思うよ、可愛い」
昨日みたいに意地悪すると仕返しが来そうなので今回は素直に答えるとチィ姉は嬉しそうに俺の手に抱きついてきた
「も~ダメ!ふーちゃんは良い子すぎるよ!チューしたげる!」
「ちょ!やめてって!単にチィ姉がしたいだけでしょ!」
「ちゅ~」
「いい加減止めないと怒るよ。千夏先輩」
「あぅぅ・・・またそんな呼び方して・・・」
チィ姉は頬を膨らませ俺の腕から離れて横を歩く
そして、しばらくはブーブーと何か言ってきたが無視をして、周りに学園の生徒が見えてくるとチィ姉にも楓と呼ばせるようにした
「それじゃ千夏先輩」
「うん、それじゃ」
階段の辺りでチィ姉と別れて、各自の教室に向かう
俺が自分の教室に入ると教室の中にいた生徒が一斉に俺の方を見てきた
「おはよう」
「おはよう、楓くん」
「なんか俺凄く見られてない?」
「・・・アレ見てないの?」
「アレ?何それ」
「ん~、僕が口で説明するより実際見た方がいいかも、僕についてきて」
悠斗はそう言うと席を立ち、教室を出て靴箱の辺りまで歩く
そして、学園の掲示板の前に止まって俺の方を見てきた
「これだよ」
「掲示板?・・・はぁ!?何これ!!」
掲示板には大きな紙が貼り出されていて写真2枚と、その上に「学園のアイドル“星井 千夏”の彼氏か!?」と大きく書かれている
2枚の写真の1枚目には俺がチィ姉にクレープを渡している写真、2枚目はチィ姉が俺に抱きついている写真でたぶん携帯を買った日のだろう
そして写真の下にはその状況のことが書かれている。
もちろん、あっているところもあれば、思いっきり捏造しているところもある
「楓・・・」
俺はボーっと写真の載った紙を見ている横からチィ姉の声が聞こえて、そっちの方を見るとチィ姉と沙羅さんがいた
「ついにバレてしまったな、楓太くん」
「・・・沙羅さんですか?これ」
「そんなわけ無いだろう、それは新聞部だ。ちなみに私がするならキスしているところを撮る」
沙羅さんの言っていることはたぶん本当だろう、沙羅さんならそういうところも撮ろうと思えば何度かチャンスはあった
「とにかくここでは話すのはやめておいたほうがいいよ、楓くん。ここだと注目を浴びちゃう」
悠斗の助言で俺たち4人は掲示板からは死角になる場所で固まる
俺はこの後どうするかを考えていると、その姿がチィ姉には怒っているように見えたのか、沙羅さんの後ろに隠れ涙目で俺に謝ってきた
「ふーちゃん、ごめんね・・・私が外で・・・」
「別に怒ってないから大丈夫だよ。それにいつかはバレると思ってたし・・・まぁまさか彼氏って書かれるとは思ってなかったけど」
「いや、誰がどう見ても彼氏彼女関係に見えるだろう、君らの関係を知らない限り」
「僕もそう思うよ、あの“朝、2人が一緒に家から出てきた”ってところなんて、まさか楓くんと星井先輩が一緒に住んでるとは思わないし」
「ん~まぁ、そっか・・・」
「それはそうと楓太くん、学園のアイドルを公式的に独り占めできている気分はどうだ?」
沙羅さんは楽しいのかニヤニヤしながら俺の方を見てくる
「別にいつもと変わりませんよ、中学のときもこんなことあったんで」
「ほぅ。それじゃこれからどうするんだ?」
「無視します。信じる人は信じるし、信じない人は信じない。それだけのことですよ」
「なんだかあっさりしているな、もっと慌ててほしかったのだが」
「内心は結構焦ってるんですけどね」
「おっ、そろそろ1時間目が始まるな。千夏、私たちは行こう」
「うん・・・」
あと数分で授業が始まるぐらいの時間で沙羅さんとチィ姉はギリギリと言うのにゆっくりと歩きながら2年生の教室に向かった
「僕たちも行こうか、楓くん」
「だね」
俺たちが教室に帰るとクラスメイトに掲示板のことを聞かれるかと思ったが、誰も聞いて来なかった